サヨナラは言わないよ
R.Kってやつがいるんだ。(名前をイニシャルにしてみた。)
大人になってから出来た友達って言葉を使える数少ないやつ。
こいつとの出会いは8年前とかになるのかな?
細かい年数は定かではないけど、僕が近所のBilly's Bar GOLD STARってお店を友達に紹介してもらって初めてライブやらせてもらう事が決まった時に、実はまだお店に行った事なくて、飲みに行ってみようって時に出会ったんだ。
知り合いのライブ告知のフライヤーを見てたら「下井草Billy's Bar GOLD STAR」って書いてあって。
当時、僕は下井草の近所に住んでいたから
「下井草にライブやれるお店あるんだ。行ってみたいな。」
みたいな話をしたら「出演者募集してるから、Billyさん(店主)に聞いてみるよ。」って言ってもらえて、そしたらすぐに「○月○日に出演しませんか?」って連絡もらえて。
スケジュール的にも空いてたから出演させてもらう事にしたんだけど近所だし一度挨拶に行ってみようって思ってね。
恐る恐るお店のドアを開けた。
常連さんが集まってるかな?どんなお店なのかな?
とかドキドキした。
お店に入るとその日はライブじゃなくバー営業の日でカウンターにお客さん一人しかいなくて初めて会ったBillyさんは「誰?」って感じだったと思うんだけど「今度ここでライブやらせてもらう吉野もぐらです。(当時は違う名前で活動してたけど、ここでは吉野もぐらって書かせてもらいます)家も近いしライブやる前に飲みに来ました。」って言ったらBillyさんが「初めて出演する人でそうやって身銭を使って飲みに来てくれるとか嬉しいよ。」って言ってくれてね。
それでしばらくカウンターの端っこで飲んでた。
その僕の真逆の端っこで飲んでたのがR.Kだった。
僕は常連さんかな?とか思ってたんだけどBillyさんが「いやぁ。今日は初めてお店にきてくれたお客さんが2人もいてくれて嬉しいよ。」って。
えっ?君も初めてなの?って事でカウンターの端と端だった僕らは隣同士に座って話した。
バンドやりたくて九州から出て来たって話をしてくれた。
でもメンバーがまだ見つかってないって話をしてくれた。
僕はその時はバンド解散して弾き語りで活動してたから「それならギター1本でもライブやってみたらどうだろう?自分の音楽を聴いてもらえるし、人と出会えるし、メンバー見つかるかも知れないよ。」みたいな話をしたんだったかな?
それからR.Kは弾き語りでもライブやるようになった。
お互いにお互いのライブに遊びに行ったりお酒を奢ったり奢られたり。
ラーメン奢ったり奢られたり。
なんでもない日に居酒屋に飲みに行ったり。
家に遊びに来たり。(R.Kの家には行った事なかった!)
僕の引っ越しの手伝いをしてもらって、盛大に二人で焼肉食いまくったり。
(引っ越しが完了したら焼肉奢るって約束だったのにR.Kは遅刻してくるし引っ越しの途中で挫けやがって、だから引っ越しの途中で焼肉食って酒飲んじゃったから、翌日僕は一人でレンタカー借りて一人で二日酔いで引っ越しの続きをした…)
何だか、こんな関係になれるやつと35歳過ぎてから出会えると思ってなかったからすごく嬉しかった。
身内に不幸があったって聞いた時は少ないけど交通費に使ってくれって無理矢理お金を渡したりもした。
「受け取れないっす」って言われたけど無理矢理渡したら、お返しとか買ってくるんだもん。そう言うの無くて良かったのに。
35歳とか超えてから出会った音楽仲間とか相手にそんな関係になったのはR.Kだけだな。
僕が色々あってライブが決まってたけどライブが出来ない状況になってしまった時は僕の代わりにギター1本持ってライブをやってくれたりもした。
僕がUZU'z(ウズウズ)ってバンドを結成した時は「俺をギターで入れてくれ」って言って来たりもした。
正直びっくりしたし嬉しかった。
でもUZU'zは活動的にも数ヶ月に1回とかのバンドだったしR.Kはもっとたくさんライブやりたいって事だったから、それなら二人でバンド作ろうって話になって二人で高円寺の路上で歌ったりしながら曲を作ってドラマーも見つかった。
ベースがいないって事で僕はベースボーカルをやる事にした。
早くR.Kとのバンドを動かしたかったから。
僕はベース持ってたし僕がベースボーカルやればすぐにでもバンドが動く。
やりながらベーシストが見つかるかも知れないし、見つからなかったら3人でやればいいしって思って。
R.Kはとにかく遅刻癖のあるやつだった。
リハーサルとかスタジオにはいつも遅れてくる。
ライブの日も待ち合わせに来ない。
連絡したら「ライブで着る衣装で悩んでて少し遅れる。」って。
だったらもっと早く連絡しろよ!
って思ったけど、こいつはこういうやつだから別に気にしないんだ。
そして遅れて来たR.K、悩んで選んだ衣装は?
いつもと同じTシャツじゃねーか!!!!!
「ごめん、本当は寝坊しました。」って。
でも、憎めないやつだった。大好きなやつ。
こいつに好きな女がいて明日の朝、羽田空港から飛行機でその子が遠くに(九州)に帰っちゃうんだけど「起きれる自信ないから行かない。」って言ってた時は
「お前本当にそれでいいの?後悔しない?」って聞いたら「いや、本当は行きたいんですよ。でも、起きれないと思う。」とか言いやがって。
その時は早朝に叩き起こして始発で一緒に羽田まで行ったっけな。
「今、空港にいるよって連絡したら喜んでくれました。見送ってきます。」って時に僕は「こいつが惚れた女、どんな子なんだろう?遠くから顔みたい!」とか思ったけど見に行くのも違うなって思ったから羽田空港のベンチで待ってた。
なかなか戻ってこないから僕は眠くてウトウトしてた。
しばらくして戻ってきて「ありがとう。やっぱり会って良かった。」って言って笑ってるR.Kを見て嬉しかった。
色々な事が会って、僕らのバンドは活動をやめた。
それでも僕に娘が生まれたって行ったら遊びに来てくれたり、疎遠にはならなかった。
R.Kが店長を務めてた店にも買い物に行っていっぱいTシャツを買ったりもした。
それからしばらくして、コロナ禍。
それでも休みの日に「あいつの店に買い物に行こう。Tシャツ買うならあいつの店で買おう。」って思って行ったらお店が閉まってて「コロナ禍のため、土日しか営業していません。」って書いてあって。
僕は老人ホームで働いてるから土日休みとは限らないんだけど、日曜日の休みがあったからお店に行ったら、時すでに遅しでお店が閉店してた。
お店自体が無くなってた。
心配だった。
生活できてるのかな?
仕事はあるのかな?
ガキの頃からの友達と違って大人になってから出会った人は友達って言うより知り合いって感じの人しかいなかった。
「友達ってなに?」みたいなそういう話をしようって事ではなくて。
でも紛れもなくR.Kは僕にとって大切な友達。
僕は人に対して距離とか壁とか作ってしまう節がある。
だけどR.Kと僕は距離とか壁とかなかったな。
お互いに「腹減った。」「ラーメンでも食って行きます?俺、お金ないですけど」「なんだよ!いいよ。俺が奢るよ。」
とか
ライブが終わったら勝手にビールが出て来たり、ビールをお店に注文したら「R.Kから1杯分もらってるから、そこから出すよ。」とかその逆で僕がビールを注文しておいたりもした。
先月、4月末辺りの僕のライブにR.Kが来てくれた。
実はR.Kはもう東京にいないんだ。
地元に帰ってしまった。
また会えたらいいね。
でもなかなか難しいかもね?
本気で会おうと思ったら九州に行けばいいだけなんだけど、そうは言ってもね。
寂しいな。
いつでも会えるって思ってたから。
最後のビールをお互いに注文した。
「おい!財布出さなくていいよ。最後…いや、最後じゃないけど、一区切りになるこの一杯は俺に出させろ。」
二人でぐびっと飲み干して、蔓延防止の時だったから時短営業のお店を後にして店を出た。
特に大袈裟な別れの会話もしなかったし普通に「またね、気をつけて帰れよ。」
みたいな感じで別れた。
あいつのギターが今でも流れてる。
また高円寺の路上で一緒に歌いたいな。
そしてまた一緒にビール飲もうぜ。
サヨナラは言わないよ。