サプライズ



照明を点けず暗いままで会話が始まる。

A    ……でさー、言ったんだよ
B    うんうん。
A   HBの鉛筆ばっか使ってんじゃないよ!、ってな
B   えー!まじっすか!最高じゃないですか!

明転。
2人が地べたに座りしゃべっている。

A   まあな。それより、アレ、どうなったの?
B   アレ? アレってなんでしたっけ?
A   アレだよ。ほら、お前が一目惚れしたっていう、あの……
B   ああ。エンゼルマートの橘ちゃんですか?
A   そうそう。その子。どうよ?進展あった?
B   いや~……。もういいかなって
A   えー?なんでよ。あんなにかわいいっつってたのに  
B   あ~。俺、見ちゃったんですよね
A   なにをよ?
B   それ

BがAの着ているTシャツを指さす。
Aが自分のTシャツをつまむ。

A   え?これがなに?
B   同じやつ着てたんですよ
A   え?は?いや、なんでそれで冷めちゃうの?
B   いや、キツイですよ
A   そうかなあ……。割と気に入ってるやつなんだけど
B   尚更ですよ

B、うんうんとうなずく。

B   ところで、最近、何かハマってるものとかあります?
A   あ~。最近は料理とかね
B   へー。なにつくるんすか?
A   ベタに肉じゃがとか作ってるよ
B   へー。俺、もう肉じゃが食わないっす
A   は?なに?
B   俺、もう一生、肉じゃが食わないっす
A   なに?お前マジで言ってんの?
B   肉もにんじんもじゃがも食わないっす
A   なんでよ
B   あと、玉ねぎと糸こんにゃくも食わないっす
A   あ、俺、それは材料につかってないわ
B   じゃあ、食うっす
A   なんなんだよ

A、だんだんと、表情が険しくなる。

B   この前、フットサル行ったじゃないっすか?
A   おお
B   もう来ないでください
A   ああ?
B   なんか、先輩がくるとフィールドのグリーンがくすんで見えるんですよね
A   ちょっとお前、さっきからなんなんだよ

B、肩を持ち上げて嬉しそうにする

B   アレ?先輩怒ってます
A   そりゃそうだろうが!

B、ズボンの後ろポケットから、クラッカーをだし、鳴らす。
パン、と音が鳴り、紙束がAの頭にかかる。

A   え、なに
B   サプラーイズ!
A   いや、なんだっての
B   サプラーイズ!
A   いやさ、これはその……。
B   サプラーイズ!
A   説明しろよ!説明!もうパニックだよ!
B   えー、と……。これは……。なんと……。誕生日のサプライズでしたー!
A   あー、はいはい

A、腕組みをする。

A   お前は、わざと俺を怒らせて
B   うんうん
A   怒りのボルテージをだんだんだんだん上げていって
B   うんうん!
A   怒りが最高潮に高まったときに
B   うんうん!!!
A   サプライズだと
B   うんうん!!!
A   今までのは嘘だよということで
B   うんうん!!!
A   俺をびっくりさせようとしたわけだな
B   そうです!!!

A、うなだれる。

A   なーんだろうな……。なんか違う

B、きょとんとする。

A   俺のこのもやもやはなんだろうな……

少し間を空けてから、A、手を二回パンパンと叩く

A   あーもう!いいや!ありがとな!じゃあ、ケーキ食おうぜ!

B、きょとんとする。

A   ねーのかよ!ケーキとか準備すんじゃねーの?こういうの!

少し間を空ける。A、すー、と息を吸って、大きく声を出す。

A   あと! 今日は俺の誕生日じゃねーからな!


暗転。


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吉村トチオ
最後まで読んでくれてありがとー