たまごの日記

ふりかけはたまご派。

それはともかく、スーパーにいったときに変わった卵を見つけた。いつも見かけるプラスティックのパックに入っている卵に紛れて、包装されていない素のままの卵が1つだけ置かれていたのだ。

え?これ売り物?

近年、レジ袋の有料化とか、日本は無駄な包装が多すぎるとか、なんかそういう傾向あるけど、ちょっとこれは急だな。なにかの間違いかな。
通りかかった店員さんに聞いてみる。

「これ、売り物ですか?」

「はあ、まあ、売り場にあるんで」

すたすたと去っていく店員。
売り場にあるものは売り物ということか。それはそうだ。

僕はちょうど卵が1つだけほしかったので、かごの中にその卵1つをいれてレジに向かう。
レジのお姉さんはかごの中の卵を見て、少し戸惑っていたが、僕がさっきこれは売り物であることは確認済みだと告げると、戸惑いをさらに強くしつつも通常6個入りパックの1/6の値段ということで手を打ってくれた。

ささいな達成感を噛みしめながら自宅につくと、さっそく卵を調理してやろうとキッチンで卵を割ろうとするが、すごく硬い。
流し台の角に何度もぶつけて、やっとこさ1mm径くらいの穴を明ける。
しかし、なんだか中身が入っている感じがしない。これほんとに卵か?
穴を下に向けても中からなにも出てこない。なんだなんだと穴をのぞき込む。スーっと風が吹き出してきたかと思うと、体が浮くような感覚があり、穴の中に吸い込まれてしまった。

それからずっと卵の中に閉じ込められている。さっき、スーパーのお姉さんがあわてた様子で家に入ってきて、僕が入っている卵を回収したようだ。たぶん、僕は卵の売り場に置かれることになるのだろう。

僕のようなもの好きが素のまま置かれた卵を手に取ることを祈る。そうでなきゃ僕はずっとこのままだろう。


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吉村トチオ
最後まで読んでくれてありがとー