伝えたいときは、相手の「ことば」を使う
以前、シニア向けパソコン教室で講師をしていたことがあります。
その時の事例が『相手に何かを伝えたいとき』の大切なことを教えてくれるので、今回はそのことについてご紹介します。
僕が担当させてもらった方の最高齢は、その当時で88歳。
「メールって、外国にいる孫にも送れるんでしょ?」
「ひ孫の写真をパソコンで見れるようにしたいんだけど」
「この歌手が好きだけど、動画ってどうやって見れるの?」
などなど、積極的に取り組まれる姿に僕の方が刺激をもらっていました。
パソコンよりもおしゃべりの方が多くなることもあり、楽しみながら勉強させてもらったいい思い出です。
◆この「マス」の下に・・・
ある時、エクセルで作った表を操作することになり、こんな会話がありました。
『この「マス」の下に、1行ふやしたいんだけど・・・』
エクセルの入力箇所は、正しくは「セル」と言います。
でも、この方は「マス」と呼ばれている。
厳密な名前は間違われていますね。
だからと言って、ここで強引に正す必要はありません。
相手が「マス」と言われるなら、こちらも「マス」ということばを使う。
そうするとスムーズ会話が進み、やりたいことが実現できます。
この受講生さんとも、
『このマスのところで、こうやって、こうやって、・・』
と話をしながら、行の挿入に成功しました。
表現の違い(この場合の「マス」と「セル」)は、必要があれば正せばいいだけ。
もし、「マス」ということばに「セル」を打ち返していたら、よくわからん!と怒らせてしまったり、イヤミな先生だねと嫌がれていたかもしれません。
◆分かりにくい?噛み合わない?伝わらない?
SEの仕事でまだ経験が浅い頃、僕はよくここで失敗していました。
特にIT業界は専門用語のカタカナことばが多く、お客様の現場で使われている用語と一致しないことも少なくありません。そこをしっかり理解できないまま専門用語を並べて説明をしてしまい、
「お前の話は分かりにくい」
「なんで、わざわざ違う言い方をするんだ」
「あなたとは話が噛み合わないね」
と、お客様や先輩に何度も言われました。
その時は、せっかく準備したものがやり直しになることもあって悔しかったです。。。。今考えると、当然ですけどね。
相手のためを思って何かを伝えたいとき、その想いをしっかり届けるためには相手の「ことば」を使う。
相手の頭の中にある「ことば」を使いながら会話を進めるイメージです。
相手の「ことば」を使うためには、相手の話に耳を傾けてどんなことばを使っているか注意深く聴く必要があります。
そう考えると、パソコン教室のおしゃべりタイムも、とっても重要な時間だったんですね。