日本医家伝
父の作品「日本医家伝」新装版が届く。8月22日発売。
父がなぜこの作品を書くに至ったか、その経緯を綴った「巻末エッセイ」も収められている。そのエッセイには父を突き動かした文芸雑誌・早稲田文学の編集長、岩本常雄氏について書かれている。
「力のこもった作品を書いてください。良ければのせます」。
名編集者にそう言われ父は3ヶ月かけて競馬の騎手を主人公にした60枚の短編を書き、岩本氏に持参した。その場で読みはじめた岩本氏。
「いけませんねえ、こんなものを書いちゃ」
父は羞恥、悔しく、悲しくなり、日本橋の上から60枚の原稿を捨てたとある。私はエッセイを読み、日本橋に立つ父の姿が見えた。しかし岩本氏の出会いによって「日本医家伝」を書くことに至るとは。
ここに中公文庫のご担当のご創意と経営判断に敬意を評します。
他出版社で絶版となっている文庫本を取り上げ、さらに作品の背景を伝えるエッセイを新たに収録。この時代、紙の本を出すというのは大変な決断だし、それだけこの作品に注目されたというのはまさに編集者の面目躍如ではないだろうか。
父はよく言っていた「編集者がいなければ私は書けない」と。
届いたサンプル10冊の重みを感じます。
「日本医家伝」目次
山脇東洋 日本で初めて腑分を実見した医家
前野良沢 「解体新書」の翻訳を進めた中津藩の藩医
伊東玄朴 江戸屈指のオランダ医家
土生玄碩 新しい手術を積極的に推し進めた眼科医
楠本いね シーボルトの娘で日本初の女性産科医
中川五郎治 日本における種痘法の祖
笠原良策 種痘の普及につとめた福井の医家
松本良順 初代陸軍軍医総監
相良知安 日本にドイツ医学を定着させた医家
荻野ぎん 日本最初の女医
高木兼寛 脚気病の治療法を実証的に開発した功績者
秦佐八郎 梅毒の特効薬を開発した細菌学者
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