歴史と経済19〜情報の移動〜
覇権国家が提供してきたものとして、「国際公共財」というものがある。
これは、平たく言えばただ乗りできる国際インフラであり、その行為が他の人にも影響を与えないというものである。
たとえば、英語がそうである。
英語は世界中で使える可能性が高い。
しかし、なぜ数ある言語の中から英語が選ばれているのか?
これは18世紀以降にヘゲモニー(覇権)国家となったイギリスの影響である。
ヘゲモニー国家は国際インフラや通貨を提供する役割を果たす。
海底電信網を張り巡らせ、地上には融資によって鉄道網を敷き、基軸通貨としてのポンドを循環させる。
安全な航路も軍事力による保証のをもとに提供される。
もちろん、提供を受ける側のメリットは大きい。
世界中のヒト・モノ・カネ・情報の動きを知り、自分が参入することで利潤を獲得できるのだから。
提供している側もそれに付随した情報や儲けが入ってくる。
これがヘゲモニー国家にもたらされるメリットであり、その他の国々への恩恵でもある。
イギリスというグラウンドの上に世界が乗っかる構図になるということだ。
この歴史的な視点から考えると、ゼロから勉強をしようと思う人でも、目指すべき目標が見えてくるというものだ。
すなわち、「英語・IT・金融」である。
これらはそれぞれ、人・情報・カネに対応するだろう。
国際公共財を提供して、その俎上に乗せるほどのものだから、余程旨味があるものに違いない。
細かいことは知らないが、とりあえずは優先的に押さえておきたいという発想に行き着く。
しかし、ここで但し書きがつく。
まずは、ロンドン(シティ)の強さはまだ残っているにしても、通貨としてのポンドは今や先進国の一通貨といった程度に収まっているのではないか。
しかし、英語の強さは現在でもまだ持続している。
これは、イギリスの次のヘゲモニー国家であるアメリカの言語でもあるからだろう。
とは言うものの、私はこれからは中国語が登り上がってくると考えている。
それが、ヘゲモニー国家の役割でもあるからだ。
ここ数年の中国の動きはヘゲモニーを意識していると言えるだろう。
「一帯一路構想」やアジアインフラ投資銀行の提唱、アフリカへの投資などの動きは、まさにそれである。
しかし、中国の軍事面におけるヘゲモニー国家としての振る舞いは周辺国と軋轢を抱えがちだ。
ただし、経済力や市場規模は確かに大きい。
これだけでも、中国語がビジネスに有用なことは期待できる。
そして、「英語・IT・金融」に強くなると、その分野の質の高い情報の獲得につながり、自分の行動を決定する指針ともなる。
この意味で、すぐに動くわけではないにしろ、世界情勢を注視してい価値は高いと言えるだろう。
もっとも次の世界の展開はヘゲモニーを超えた何らかの世界の一体性が求められることになるかもしれない。
参考文献:「イギリス帝国の歴史〜アジアから考える〜」(秋田茂)
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