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高齢者の痒み -エステティシャンの視点から-
今回は、多くの高齢者の方々が抱える「痒み」について、エステティシャンとして、また介護の視点からも詳しくお話ししていきたいと思います。
■なぜ高齢者は痒みを感じやすいの?
年齢を重ねるにつれて、私たちの肌には様々な変化が起こります。特に気になるのがこの3点です。
1. 肌の乾燥
皮脂の分泌量が減少しています
細胞間脂質も減少して、角質がはがれやすくなっています
天然保湿因子(NMF)が作りにくくて、角質細胞の中が乾燥します
2. バリア機能の低下
ターンオーバーが遅れて、抵抗力の弱いお肌に
コラーゲン、エラスチンの減少によって、真皮が弱くなります
全体的に細胞の生まれ変わりが遅くなっています
3. 血行不良
血管の弾力性が低下して、血流が悪くなります
末梢の毛細血管が減っていきます
新陳代謝の低下にもつながります
これらの要因が重なり合って、痒みを引き起こしやすい状態になってしまうんです。
■痒みが及ぼす影響
痒みは単なる不快な症状ではありません。実は、以下のような深刻な問題につながることも。
睡眠障害
精神的ストレス
掻きむしりによる皮膚トラブル
QOL(生活の質)の低下
社会活動の制限
などが起こります。
特に夜中の痒みは、睡眠の質をかなり低下させてしまうので、日中の活動にも影響を及ぼしてしまいます。
■エステティシャンが提案する痒みケア
私たちエステティシャンの立場から、以下のようなケアをおすすめしています。
1. 優しいタッチング
血行促進によって、お肌に栄養が与えられる
リンパ液の流れを整って老廃物が排泄される
心地よい刺激による痒みの軽減
2. しっかりと保湿ケア
細胞間脂質を補う保湿(セラミドなど)
水分と脂質を補ったうえで、足りなければ油性クリームで保護
香料や色素が使われていない製品を選択
3. 環境の調整
室温は20-25度、湿度は50-60%程度に保つ
寝具や衣類の素材選びに気を付ける
■介護現場での実践的アプローチ
上記の方法を活用して、介護の現場でも次のようなことができます。
1. やさしいタッチによる清潔保持
洗浄剤はしっかり泡立てて、摩擦無く洗います
2. 早期発見、予防のためのスキンチェック
保湿ケアを行うと、同時に肌状態を確認できるので、早期発見や悪化の予防になります
3. 生活リズムや食生活の調整
規則正しい生活や適度な運動は、血行促進につながります
■ご自宅でできる痒みケア
ご家族でも実践できる簡単なケア方法をご紹介します。
1. 入浴方法の見直し
湯温は40度以下、入浴時間は10-15分程度にして、洗う時は手で優しく
2. スキンケアの基本を徹底
清潔な手で保湿化粧水とクリームを、朝晩やさしく塗布します
3. 衣類の選び方に工夫を
綿素材中心で、摩擦無くゆったりした着心地のものを選びましょう
■痒みと心の関係
痒みには心理的な要因も大きく関係しています。
ストレス、不安、孤独感、うつ状態、、、これらの心理状態が痒みを悪化させることがあります。
■総合的なアプローチの重要性
痒みのケアには、以下の要素を組み合わせた総合的なアプローチが効果的です。
スキンケア
環境調整
心のケア
生活習慣の改善
専門家との連携 などです
■最後に
高齢者の痒みは、単なる身体的な症状ではありません。心理的な影響も大きく、QOL(生活の質)に直接関わる重要な問題です。
私たちソシオエステティシャンは、美容の専門家として、また介護の視点も持ち合わせた立場から、総合的なケアを提案していきたいと考えています。
皆さまも、ご家族や身近な高齢者の方の痒みについて、今一度考えてみてはいかがでしょうか?些細な変化に気づき、早めの対応をすることで、快適な生活を取り戻すことができるはずです。
次回は、季節別の痒みケア方法について詳しくご紹介します!