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「問題のあるレストラン」という最高のドラマを見てほしい

「問題のあるレストラン」というドラマを見たことありますか?

2015年にフジテレビで放送された真木よう子主演の連続ドラマ。
脚本は、「最高の離婚」「mother」の坂本裕二。
視聴率的にはふるわなかったが、僕はこのドラマほど
苦しくも、温かく、「生きること」を強く感じるドラマを知らない。

2020年とは一体なんだったんだろう。
個人に立ち返っても「止まっていた1年」のように感じる。
その要因を「せいにする」ことができる対象があるから
すべてがぼんやりしているし、年が開けた今もその霧は濃くなるばかりだ。
マスクで隠せているから平気なように見えるけどけっこう僕らの人生先は暗い。

帰省もできない年末、散らかった引っ越したばかりの新居で
寝転がりながらTVerを開いた。
もう5年前になるがそのドラマのことを鮮明に覚えていた。
結局2日で全話を一気に見てしまった。そして、1年が終わった。

主人公が務める飲食系の大企業で、友人が壮絶なパワハラを受けたことから、
その企業に復讐するためレストランを開く物語。

主人公が開くレストランにはそれぞれ傷や闇を抱えた女性たちが集まり、
全編を通じて男社会へのアンチテーゼが描かれていく。

主人公・田中たま子のもとに集まったのは

・現在就活中 プライド高めな東大生(パワハラ企業の元社員)
・常に男性受けを気にする恋愛依存症女子(パワハラ企業の元社員)
・極度の対人恐怖症で常にフードを被った少女(パワハラ企業の社長の娘)
・特技がなく家事も満足にできない天然ボケな専業主婦(主人公の高校の友人)
・女装好きなゲイ(主人公の誘いで加入)
・弁護士だがろくに働かないソムリエ(主人公の昔の同僚)

十人十色なメンバーが一つ屋根の下、同居しレストランを開業。
住人となるそれぞれの葛藤に焦点をあて「一人一人の女性」の戦いと
パワハラ企業への復習が大きなテーマとなる。

上にあげたメンバーの中でも、
・現在就活中 プライド高めな東大生(パワハラ企業の元社員)
・常に男性受けを気にする恋愛依存症女子(パワハラ企業の元社員)
の2人のエピソードは自分の中で特に印象に残っている。
書き留めておきたいセリフがいくつもある。

たとえば、、、こんな感じに。


素直に赤とかピンクを選べる人が不思議でした。
「あなた人生何回目?」って思いました。
わたしまだ一回目だから、赤が欲しいって言えない。

東大生の言葉。
就職面接のシーンで一人つらつらと自分を語るあのシーンは圧巻である。
役を演じる二階堂ふみの演技がとにかく素晴らしいのだ。

「素直に赤とかピンクを選べる」というのは
小さい頃のセーラームーンごっこの話。
赤やピンクを堂々と欲しがる子たちをよそに
自分はセーラージュピター(緑)を選んでいた…という話だ。

男に置き換えたら、ヒーローもののレッドか、背番号10番か。

言うまでもなく、「セーラームーンごっこ」が成り立つのは、
赤やピンクだけでなく緑の役がいるからだ。黄色も黒も。

だけれどそういうことに気づけない、気づかれない状況は
生きている中でたくさんある。
人生1回目からうまく立ち回れる人もいれば
人生1回目だからまわりの動きを気にしてしまう人もいる。

人生1回目、なんとなく自分の役を
選んだフリをして、演じている人。
それに気づけるやさしい人が何人いるだろう。

あなたは何色を着ていましたか?

「その服男受け悪いよ」とか言われても、
「ああ、すいません気をつけまーす」って返せる教習所も卒業したんで。
「痩せろ」とか「ヤらせろ」とか言われても、
笑ってごまかせる教習所も出ました。免許証、お財布にパンッパン入ってます。

痴漢されたら、スカートはいてる方が悪いんです。
好きじゃない男の人に食事に誘われて断るのは、
偉そうな勘違い女なので駄目です。
セクハラされたら先方は温もりがほしかっただけなので許しましょう。
悪気はないので、こっちはスルーして受け入れるのが正解です。

どうしてしずかちゃんはいつも駄目な男と偉そうな金持ちの男と
暴力ふるう男とばかり仲良くしてるか分りますか?
どうしていつもお風呂場覗かれてもすぐに機嫌直すか分りますか?
どうして女友達がいないか分りますか?
彼女も免許証いっぱい持ってるんだと思います。

恋愛依存症女子の言葉。演じる高畑充希の演技は言わずもがな最高だ。

一見、「女子」として完璧な立ち回りを見せる彼女が心の内を明かしたシーン。
赤やピンクを選んでいたと思っていた彼女も本当は緑だった。

女は男に勝てないから、たくさんの免許証を持ち歩いている。
本当はそんな免許証なんの価値のないことわかってるのに。
こうしてまた本当の自分ではない役を演じている人、
世の中にもきっとたくさんいるだろう。

うまく世の中が回るために誰かの我慢が必要なのか。
その我慢に気づけている人はどれだけいるのか。
きっとあの道を堂々ドライブしているあの人は無免許だ。

____

弱ってる人、苦しんでる人に寄り添う物語こそ
テレビドラマの真骨頂かつ価値のような気がする。

女子じゃない自分がこのドラマでこんなに助けられたので。
きっとこのドラマで救われる人はもっとたくさんいる。

見えない誰かの犠牲で成り立つ世の中はもうやめたい。

誰かの犠牲を見えないフリするのももうやめたい。

男女とか先輩後輩とか上司部下とか。。。
そういう決められた「役柄」がふいに気づつけている心を大切にしたい。

主人公・田中たま子は言います。

人生ってきっと、地位や名誉やお金じゃない。
人生は、どれだけ心が震えたかで、決まると思います。



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