鳥獣戯画ノリ[ショートショート]
このモノクロな殺風景な教室に集まったのは、ペルー出身で菓子袋を脇に抱えた妊婦、ブラジル出身でスラッと背の高い女学生、韓国出身でスーツ姿の中年サラリーマン、インド出身で背中を丸めたおじいちゃん、そして、日本出身で小綺麗な格好をした主婦。
第二言語である『英語』の習得を目的として集まった仲間ではあるが、
それぞれが独特の強い訛りを持ち、単語だって、数えるしか持ち合わせていないのが実際のところ。
急に趣味の話をしろと言われても、困ってしまう。
「それは、どういう意味?」
「え?僕には君が何を言っているのか、わからないよ。」
なんて、滑稽なループが永遠に続く。
眉間にシワを寄せ、理解しようと必死だった仲間たちも次第に、
「うん、うん。」と相槌と愛想笑いだけを振りまく様になっているではないか。
一見すると、言葉の壁も乗り越え、完璧なコミュニケーションが現実になったかのようである。
浮世絵柄のTシャツを着たアメリカ人の先生は、
「まさに、鳥獣戯画ノリだな。」と、突如現れたユーモアな芸術に関心するばかりだった。
*473字
*この作品は、たらはかにさんの企画に参加中です。
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