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「蒼天航路」って面白い漫画だったよなーって話。
私が初めて「蒼天航路」を認知したのは、中学生の頃に家庭教師してくれてた兄ちゃんちに並んでたコミックスだったかな。
実家の近所に住んでる、税理士先生の家の大学生のお兄ちゃんちの。
それが……私が中学生の頃だろ? だからたぶん今から25年くらい前、ホント1998年とか、1999年とかの頃だったと思う。
劉備に二人羽織するみたいに浮世離れした諸葛亮がカハッって感じの表情で書かれてて、コピーは「大河、逆巻く」だったかな? そんな感じ。
だからたぶん賛否両論ある赤壁編がリアルタイムで描かれてた頃とかなんじゃないかな。諸葛亮の髪がまだ白かったから。地に足の着いてない頃の、浮世離れした諸葛亮だった頃だから。
夏侯淵に一斉掃射とか指示する前の頃の。
で、……なんかのタイミングで読んだんだったかな。
私が触れたのはほぼ完結直前か、直後の、04年とかだったかな……「蒼天航路クロニクル」っていう、コミックス数冊分の内容が入ってて、ほぼ辞典みたいなサイズの……今でいう合本版、って言えば良いのかな? そういうやつ。
今でも実家にあると思うんだけど、石像からガラガラッと出てきた馬上の曹操がドヤ顔してる表紙。最終回まで載ってて……でも漢中戦くらいから載ってたんじゃなかったかな。
───思い出した。
山に潜んで劉備と諸葛亮が曹操を倒すぞ! って意気込んでて、劉備は「やべーやつだな」って思ってるんだけど諸葛亮は「え。しょぼい……」みたいな感想を漏らしてたら、許褚がブンッって投げた石で諸葛亮が気絶する回。
万余の夜を経てどうこう、みたいな回。
……からの収録だったろうから、だから……劉備と曹操が直接対決するのは漢中戦がラストだから、そこから曹操と相対する法正のプレッシャーが描かれたりして(ここも凄い印象深いシーン)、最後は黄忠が夏侯淵を奇襲するんだ。
「わしがもろたぜよ!」って何故か土佐弁の魏延さんも居たな。
まぁいい。
でもギリギリのところまで劉備に肉薄した夏侯淵の振り下ろした刃が曹操のそれに見えるくらいの風格を伴っていて……! 届いてやがった……! 王の器に……! みたいな戦いね。
私の蒼天航路、結構集め方がイビツで。
まぁ、当時は今以上にお金がなかったから「どんな形であれ読めれば良いや」みたいな姿勢で買ってたんで、漢中戦以降はそのクロニクル版で読めるし……って事で、後は文庫版で集めてた。
でも当時は地に足の着いていない諸葛亮がなんか好きになれなくって、郭嘉と一緒に烏桓征伐の頃……じゃないな、長坂坡の戦いくらいまでを買って、そこから急に劉備の入蜀の頃まで話が飛ぶんだよ。
郭嘉。良いよね。
「蒼天航路」に於いては極めつけの死地はやはりお前だ賈ク! って事で、やっぱり賈クが印象的な参謀ではあるんだけれど、郭嘉のあのアウトローなところが良かった。
最初は「首だけになっても喋り続けるぞ!」みたいな、線こそ細いが気骨のある男……って感じだったんだけれど、官渡の戦い以降は急にやさぐれたというか、アウトロー感が出てきて
「あんたらからは戦の匂いがしないんだよ」
とか髪をブヂッとちぎりながら言い始めるのが良い。
で、張遼とコンビを組んで冷えっ冷えの高地で烏桓族と戦うところなんかが良い。目がギョロギョロって刃牙の散眼みたいに動いては相手のスキを伺って……期を伺って……って、あの辺りの蒼天航路は結構バトル漫画の文脈で読めたような気がせんでもない。
何せ題材が魅力的な人物だらけの三国志だもんで、「蒼天航路」の登場人物にも魅力的なキャラクター(キャラ、と略すると怒られるらしい)が多かった。
今パッと挙げたのは郭嘉だったけれど、こんな風に曹操陣営の人間にスポットライトが当たること自体が当時の三国志モノとしては珍しい事で、方方でさんざっぱら言われている「正史ムーブメントの火付け役」というのはまさにその通りだと思うんだ。
「ブレイド三国志」という漫画でも「いいかい! 三国志には物語としての演義と正史の二つがあるんだ!」って言ってたもんな。
あんまりちゃんと読めてないけど「ブレイド三国志」。
なんやかんや孫呉を主軸にした三国志メディアで一番成功しちゃったのは「一騎当千」だったんじゃないのか。良いことなのかそうでないのかはちょっと、こう、判断は控えるが───。
しょうがないね。
あと「一騎当千」で一番好きなのは関羽だよごめんね。
いや、だってさ。
「蒼天航路」が日本の三国志観にどのくらい影響を与えたかなんて、もうこの20年? 25年くらいで言い尽くされてるじゃない。
たぶん「悪玉とされていた曹操の再評価」「正史ブームの火付け役」。
この二つくらいじゃない?
その二つが物凄くドデカ過ぎる功績だと思うけれど。
「ちくま三国志から読め」みたいなの、あったもんね。00年代は。
今日は手が疲れてきちゃったのでこのくらいにしておこう。
劉璋の手を取る簡雍とか
「これを持って突っ走れ!」って劉備に竹簡を渡す法正とか
「六韜を知っているのか!」って張飛に驚嘆する曹操とか
「我はその王の姿を垣間見たに過ぎぬ!」と絶命する董卓とか
股で首を折る青州黄巾党の女傑とか
「いかなる貴人も触れざるところ」と阿斗を抱く趙雲とか
ベロベロに酔っ払った曹植に肩を貸す曹彰とか
「垂れ流すな天下人」の龐統とか
「どうということもなく!」の楽進とか
「玄徳髭」を一度だけ指に巻いて放つ孫夫人とか
ニイ メン ハオ とか。
たくさん、たくさん。
書きたいところなんて幾らでもある。
どこを切り取っても名シーンだらけになるような、ブロードウェイみたいな三国志エンターテイメントだったと思う。「蒼天航路」って。
色んなものを受け取らせてくれた、かけがえのない漫画、名作だった。
私の人生に「蒼天航路」が在ってくれて本当にラッキーだったなって思ってるもの。