業を背負わされた三男坊──「サガ3完結編~時空の覇者~」
「サガ・コレクション」に収録されているGB版サガ3作の記事もこれで三本目。
「サガ3完結編~時空の覇者~」だね。
これはもう20年以上前から方方で言われている評価だと思うんだけれど、
「手堅くまとまった良作RPGではあるが、
『サガ』らしいかと聞かれればそうではない」
この評価に尽きるんじゃあないかなって。
正直私もそう思うんだよな。
ただ、じゃあ面白くなかったかって聞かれれば「いや普通に面白かったしクリアもしたよ」って、そう、この”普通に面白い”んだけれど”普通”であるが故にサガシリーズの異端児となってしまったのがこの3なんだと思う。
業を背負わされた三男坊とでも言うべきなんだろうかね。
3作目ともなれば作法もわかってきたね。
ざっくり、あらすじから書いていこう。
突如として現れた「天の水瓶」。
そこから無限に溢れ出す水のせいで、世界は次第に水没していってしまうという危機的状況にあった。そこで未来人の一人・ボラージュは主人公のデューン、ポルナレフ、ミルフィーの三人を過去(プレーヤー視点では現代)の世界に送り込み、この世界の滅びの未来を覆さんと画策する。
三人は次第に水かさが増してくる現代の世界においてスクスクと成長し、現代の仲間であるシりューと四人のパーティを結成。未来の世界を救うために過去、現代、未来、更には異次元を股にかけた大冒険に旅立つのだった。
……と、バラエティに富んだゴチャ混ぜの世界観を押し出してきたシリーズにしては、のっけからSF感満載の始まり方をするのが3だ。
この時点で今までとは毛色が違うな? ってのは誰が見てもそうで、それもそのはず、歴史的(歴史的!)背景で言えば3に関してのみ、それまでの初代、2の制作を手掛けていたチームとは別のチームによる制作だったりするからだ。
スクウェア大阪なんて呼ばれてるところね。
ごめんなさい詳しくはないです。
「ファイナルファンタジーUSA」とかを手掛けていたチームなんだったかな確か。
なので、つまり、いわば実質的「外注作品」とも呼べる。
じゃあ今までのシリーズを手掛けていたスタッフたちはその間は何をしていたの? って話なんだけれど、時は1991年とかなのでスーファミ版ロマサガ……初代「ロマンシング・サガ」を作っていた頃だ。
河津秋敏(神)が文字通りマルディアスの世界を創造していた頃、彼方、西方の地で生み出された”異端なる「サガ」”……と書くと、なんだか時代と宿命が生んだ数奇な存在に思えてくるから面白い。
因みにゲーム内でも「ロマンシングサ(ー)ガ」が開発されている事を示唆するメッセージが組み込まれていたりと、大阪開発だからなのかちょっとした遊びが見え隠れするのも特徴的。
気になるゲームシステムとしてはシリーズ異例のレベル制の導入。
どうも調べた限りだとレベル制を導入したのは(「3」のリメイクまで含めて)この一作品だけらしい。
それに武器も振り放題! 回数なんて気にしない!
魔法はいわゆる「○○の書」形式で購入して習得する(取り外し可)&MP消費制。
……この時点でだいぶと「当時の普通のJRPG」に寄せてきてくれている事が察して貰えると思うんだけれど、極めつけは前作までで登場した「食肉」の概念の変更……いや、メカの概念も組み込んだ”拡張”とも呼ぶべき形式。
今作ではパーティメンバーが人間男女・エスパー男女の計4人で構成されており、戦闘後にドロップするモンスターや獣人の「肉」、それにサイボーグやメカの「パーツ」で種族をカスタムしていく仕組みらしい。
「らしい」って表記はつまり私があまりそこに手を出さなかったからだよ。
最終的にはバトルは聖剣無双されるので、モンスターやメカに頼る、弄る気が沸かなかったんだよな。バトルバランスで言えば正直だいぶとヌルいゲームです。全滅すればそのバトルをコンティニューできたらしいんだけど、一度も全滅せずにクリアしたからどうなるのか知らんくらいにはヌルいゲームです。
元は人間orエスパーが肉を食べたり、パーツを取り付ける事で獣人、モンスター、サイボーグ、メカに種族を変えていき、でも後述する戦闘機・ステスロスの設備でいつでも人間orエスパーに戻れるようになっている。
モンスター ← 獣人 ← 人間orエスパー → サイボーグ → メカ
↑図を用意する気があんまり沸かなかったんだけれど、ザックリとこんな感じだ。
肉を食べ続けれればモンスターになるし、パーツを取り付け続ければメカになる。でも獣人はコブラツイストやブレンバスターなどの体術に適正があって……みたいな。
今までの記事でいえば各種族に関して特徴を書いてキャッキャしていたところなんだけれど、マジでたまに主人公のデューンを獣人にして……というかAボタン連打で間違って肉を食べさせてしまって……遊んでいた程度なので、この辺の種族に関しては本当に疎い。しっかり調べてじっくり腰を据えて遊べば思わぬオモシロ攻略法が見つかったりするのかな~? と思わなくもないけれど、このゲームはレベル制なのでレベルを上げれば大体の敵は人間とエスパーで普通に倒せてしまう仕組みなのだ。
だからこそ最終的にはバトルは「雑魚戦ならエスパーの全体魔法で一掃」「ボス戦なら人間による聖剣無双」のバランスになってしまっているのが実に惜しい。
このあまりの「サガ」シリーズっぽくなさに、リメイク版では「サガ」らしさをふんだんに盛り込まれた……なんて話を聞いた事があるけれどそれはちょっと遊んでいないから知らない。
「2」のDS版リメイク「ゴッデスオブディスティニー」は一度は遊んでみたいんだけども。
さりとて、物語運びは秀逸。
ここは手放しに評価したいし、読んでいてワクワクしたから。
何度も書く通り、良くも悪くもこれまでの「サガ」らしくない……というか、今までの「サガ」が様々な世界観を旅するという、いわば”横軸”を楽しむゲームだったと定義すれば、3は時代や次元を隔てど「自分たちの未来を守る」という一貫した目的、いわば”縦軸”が前面に出た物語だ。
例えば。
「天の水瓶」とはなんなのか?
何故、主人公たちの住む世界は水没による滅びが運命づけられているのか?
それを仕組んでいる存在とは? その意図とは?
であらば、その存在に抗する手段はあるのか?
あるのだとしたらそれはどうすれば……?
……そうした事が、キチンと、「サガ」とは思えないくらい丁寧に紐解かれていく、読んでいて「なるほど!」と思える物語が展開される。
2を「スタンドバイミー」的な冒険活劇を評したけれど、今作には「ターミネーター」や「バックトゥザフューチャー」シリーズのように、時代を隔てる事によるギミック、見せ方もあってそれが実に良い。
例えば過去の世界で撒いた種が現代の世界では大きな樹に成長してくれてヒントをくれたりだとか、現代の世界では主人公たちの弟分、妹分にあたるキャラクターが、未来の世界では立派に成長して戦うみんなのリーダー格になってくれてたり……他にも「次第に水没していく世界」という世界観なので、過去→現代→未来に時系列が進んでいくにつれて陸地の面積がドンドン狭くなっていくのも見ていて没入感が感じられる。
そこで登場してくるのが時代を超える戦闘機「ステスロス」の存在だ。
要するに「クロノ・トリガー」でいうシルバード的な存在と言えば伝わる人には伝わると思うんだけれど。
ゲーム開始時点では神殿の奥深くにあってせいぜい「過去にワープできるタイムマシン」程度の存在なんだけれど、時代を超えて冒険を進める内にユニット(パーツ)を集めていけば未来にも行けるようになるし、フィールドを自由自在に飛べるようにもなるし、敵と遭遇したら先制攻撃で砲撃してくれたり、異次元にも突入できるようになるし、最終的にはステルスバリアを会得してエンカウント無効になったりする、まさに今作を代表する移動拠点のような存在に成長していく。
今作の物語は、ステスロスの機能の拡張と足並みを揃えて進んでいくといっても過言ではない。
設備は前述の通りモンスターやメカの種族をデフォルトの人間orエスパーに戻してくれる浄化装置をはじめ、もうお金を払って宿屋に泊まる必要性がなくなるカプセルホテルや、後にステスロスの乗務員が充実してくる事で武器や道具、魔法屋さんなんかも開設される事になる。
物語終盤で実はこのステスロスに隠された秘密だったり、燃える展開だったりが用意されても居るので、ステスロスは最初から最後まで主人公たちと共に冒険する「第5の仲間」と呼んでも、私個人は良いと思うなぁ。
敵もユニーク。
特に中盤以降に戦っていく事になる「異次元の神々」らはクトゥルフ神話をベースにしているらしく……この着想が90年代前半にされていたの、今考えてもムチャクチャ先進的な気はする……パッと見の不気味さがスゴい。
クトゥルフ神話のフレーバーとしては過去世界から少しずつ人口を増やしていく「謎の奇病により半魚人になっていく住人」たちが存在していたりして、これなんかはモロに「インスマウスの影」のオマージュなんだろうなと。
他にも大阪開発だからかどうあがいてもチンドン屋にしか見えない敵が存在していたり、詰めて頑張って1画面に表示するために妙に窮屈そうな描かれ方をしている敵だったり、その辺りの苦心や遊び心は見ていて楽しい。
総括すれば、いや、記事冒頭でもしたんだけれど
「手堅くまとまった良作RPGではあるが、
『サガ』らしいかと聞かれればそうではない」
に尽きる。
いや、面白くなくはなかったんだよ。
実際、なんなら「サガ」シリーズファンを自称してる割に3は遊んだ事なかった……正確には従兄弟のゲームボーイに入ってるのをちょっと遊ばせて貰った程度……の私がとりあえず遊んでみたら全然楽しめる程度には。
そして確かにまぁあんまりサガっぽくないのも事実なんだ。
「当時の普通の良作JRPG」として名を残す可能性もあったんだろうなとか、でもそれを許すには「サガ」の名前は既にしてビッグネームだったんだろうなとか、そんな、そんな、やっぱり異端児。そんな3だった。