酒と人と時と。

 ウトウトしていたら目が冴えてしまって。
 寝酒のつもりが入れれば脳は覚醒してしまう。
 悪癖。

 酒は長い目で見れば私の命を奪う事になるのかも知れないなぁって思う反面、それでもこれのお陰で楽しい気持ちになれた事だってたくさんあるし、これがなければとてもじゃないけれど乗り切れなかった晩なんかもあっただろうから、無理のない範囲で長く楽しく付き合えればと最近は考えている。
 私と酒の間には辛い事だって少なくはなかったんだけれど、それでも、楽しかった事の方が多かったと信じているから。
 だったら、酒はきっと私の人生を良い方向に導いてくれたんじゃないかな? って、総合的に見れば思える。


 尊敬する母方の祖父は洋酒を好んでいたのか、ジョニ黒……いわゆるジョニーウォーカーのブラックラベルを嗜んでいた。というのは、恐らくそれなりに色んな人間に話している気がする。このnoteには書いていなかったかも知れないので、もしかしたらこれがこのnote的には初出かも知れない。
 まぁ、良い。
 結局は、それが私のウィスキー好きの原点オリジンなんだろう。
 尊敬する男と同じものを嗜んで……まぁ、母方の祖父は私が中学生の頃に身罷られたので、ついぞ酒を飲む機会には恵まれなかった訳だけれど。
 だからこそウィスキーを好むようになって、そこに「お爺ちゃんと一緒に飲んだら楽しかっただろうな」というIFもしもを空想してしまう。

 甘ったれた私の性根が垣間見える。
 それでも今に至るまで愛飲している酒類と出会わせてくれた訳だから、そういう側面に於いても「母方の祖父の影響が強い」と言えるのかも知れない。


 ジョニーウォーカーに関して言えば、私が特によくスコッチを蒐集していた2015年頃に旧い友人にも勧めて、あれは……レッドラベルだったろうかな。
 入門編と呼んで差し支えない、一番お手頃な価格で手に入る品だ。
 それでも、「吉雅さんが初めてのスコッチにこれを勧めてくれた理由がわかりました」という旨の言葉を友人から貰った時、私は確かに嬉しかった事も記憶している。月並みではあるけれど、自分の好きな品を友が喜んでくれるというのは、これは何も酒に限った話ではないだろう。

 彼は今でもスコッチを嗜んでいるだろうか。
 思い出したタイミングなんかで飲む事があったりするのだろうか。
 まぁ、「スコッチも好きですよ」くらいになってくれていれば、私としてはお勧めした甲斐があったな……程度の軽い気持ちの反芻だ。

 そこから、そこから。
 スコッチばかり飲んでいた私は、また別の友人の勧めでバーボンも少しだけ飲むようになった。彼とは、2017年末頃からの付き合いか。
 その友人はバーに行くとオールドクロウのソーダ割りを「クロウソーダ」と注文してよく飲んでいる(現在進行系)し、また、たまに私の家で飲む際には以前美味しいと言っていたのでジムビームのデビルズカットを彼のために置くようにしている。
 私もたまに飲むので、なくなったらまた買い足しておけば良い。
 バーボン……と言えば、また別の友人が、彼は関東の人間なのだが、一度バーでお会いした際はメーカーズマークを飲んでいた記憶がある。それが2021年の3月。因みに、2020年の末頃に私が最も精神的にどん底に在った際によく助言してくれた人でもあるので、友人というのも少々、おこがましいような気がしなくもないのだけれど……そこに関してはしれっと表記してしまった。

 そのバーでは前述のクロウソーダの友人と演奏を披露する機会があったのだけれど、それに関しては今回は、良いや。
 気が向けば書くだろうし、向かなければそれまででも構わない。
 どうせ死ぬまで何かしら文章は書いているだろうから、対外的には「あたためているネタ」という扱いにしておこうと思う。

 そこから、そこから。
 どういう訳か最近はよくブラックニッカクリアを飲んでいる。
 教えはどうなってんだ教えは……! といっても、最近よく……ほぼ毎週か、会っている相手が好んで飲んでいるものだから、そこで私も釣られて飲むからだ。気付けば4リットルサイズをドン・キホーテさんに買いに向かい、いい感じに今も後ろの本棚の上に鎮座している。
 良いな4リットルの重量感。
 居酒屋の棚とかでしか見た事なかったんだが個人宅にも全然置けるんだな。

 その相手はスコッチを小瓶で色々と飲み、その結果残ったのがジョニ黒、シーバスリーガル12年、バランタインファイネスト辺りだったか。
 前二本は納得感があるが、バランタインファイネストは値段でいえば格が落ちる、安スコッチと呼ばれる部類に入るであろう銘柄なのでやや意外ではあった。
 「ジョニ赤よりはジョニ黒の方が好きかな」
 との事なのだけれど、いやまぁそれはそうだろうよ! と。
 いや、まぁ。物の良さが分かるというのは良い事だと思う。
 
 確かバーボンもメーカーズマークは小瓶で買い、なんなら、「あの封蝋をペリペリ開けるのは楽しかったとも」と言っていたんだが、結局バーボンの風味よりはスコッチの方が好みだったらしい。そのくせジャックダニエルのジャケットをカッコイイと評する。飲みもせんのに。まぁいい──。


 あとは意外なところで、最近はサントリーの翠ジンもよく飲んでいる。
 薬っぽい、という意見も聴くのだけれど、瓶やデザインがお洒落なのもあってか最近は妙によく飲んでいるような気がする。本来、ジンというのはイギリス産業革命期の労働者に好まれた……今の日本でいうビッグマンとかキンミヤとか、ああいう立ち位置だったのかなぁと思っているけれど──そういえば私の好きな映画の中でも、不良少年がジンを飲んでは「孤児院では睡眠薬代わりだったよ」とうそぶくシーンがある──今となってはなんだかお洒落なお酒になってしまっているので、世の中分からない。
 なお前述の私の好きな映画ではヒロインとしてヘレナ・ボナム=カーターがパイ屋の女主人をしており、アラン・リックマンが主人公を陥れた判事として登場するのだけれど、後にハリー・ポッターシリーズで二人が登場した時はちょっとした「おおっ」があったりした。

 


 時代が流れて飲む酒も少しずつ変わっていって、酒は私をどこに連れて行ってくれるんだろう。以前は常飲していたジョニ赤も久しく棚に並べておらず、また買っても良いけれど、それならバランタインでも良いしな、なんて思う瞬間だってある。
 それでも好きなタイミングに飲みたいお酒が部屋にあるというのは幸福な気もするので、そこはこう……やはり、またどこかのタイミングで買い足してしまっても良いような気がする。
 さて次のスコッチはどうしたものだろう?
 

 でも、私の棚には一本だけ、職場で良い事があった時にお祝いとして買ったジョニーウォーカーのグリーンラベルがある。


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