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【Caitlin's】オバマ大統領は「スキャンダルを起こしたことがない」という観念についての考察

いまだにオバマを称賛する人たちがいる。「いまだに」という単語は、その一語で「過去」と「現在」の両方の事象を示唆する興味深い単語だ。「かつて」肯定的であったものが、「今は」もうそうではないことを暗示している。

2008年のアメリカ大統領選が行われていた頃、僕はヨーロッパに住んでいた。3ヶ月に一回ニューヨークへ出張し、その間にアジア、中東、アフリカのどこかへ出張していた。一年のうち3分の1から4分の1は”移動中”だった。

僕は戦争が作り出す仕事に疲弊し、慢性的な怒りでさらに消耗していた。そのほとんどは、原因を突き詰めていくとアメリカに至った。ブッシュ体制の8年間に世界はガラッと変わり、自分を含む多くの個人の人生も変わってしまった。

その頃、ヨーロッパでもオバマを応援する人がたくさんいたのをよく覚えている。ブッシュの戦争政権に批判的な人がヨーロッパにたくさんいた。僕もその一人だった。戦場でブッシュを支持する人には会ったことがない。まだ若かったので身体的疲労には戦えても、慢性的な憤りと粘着する徒労感を払いのけるのは不可能だった。

ヨーロッパの同僚たちとオバマの当選を願った。理不尽な戦争が終わることを期待した。そして、本当にオバマが当選した。希望の光が見えたような気がした。

2009年1月、オバマが大統領に就任した。その夏、僕はニューヨークに転勤になった。アメリカに住みたいとは思っていなかったが、オバマのアメリカと思うと感慨深かった。

しかし、この記事でケイトリンさんが書いているように、やがてオバマは、おっちょこちょいでよく笑われたブッシュよりも、ずっと巧妙に嘘を隠し、ずっと残虐なことをやってのけた。

いちゃもんでしかない口実でリビアを破壊し、アルカイダから派生した過激なテロ集団に武器を注ぎ込む汚い戦争でシリアを破壊し(それが今やシリアを完全に乗っ取った過激テロ集団のジャウラニー率いるHTSだ)、穀倉地帯とガス・石油産出地域を占領し、シリア国民を計画的に餓死・凍死させ、イエメンを焼き尽くし、やがてウクライナ戦争に繋がる政権転覆を仕掛け、無人機による殺人プログラムを開始した。それが希望の光、オバマがやったことだった。

「いまだに」というのは、「そういう知識を得ても」ということを指している。上に書いたことは全て今では一般的知識として流通している。しかし、『進撃の巨人』の壁よりも分厚く、高い壁に囲まれた日本では、知らない人がいるのは容易に想像できる。

問題は、知っていても「いまだにオバマを称賛している」人たちのことだ。一度見た希望の光が堕落の闇だったと認めるのが難しい気持ちは分かる。しかし、だからといって、自分自身が闇を支える一部になるわけにはいかない。

ケイトリンさんは、主に欧米のリベラルの「いまだに性」について書いているのだけど、その描写が日本語界隈の「ネトウヨ」とそっくりなのだ。リベラルにとっては、自分たちが気持ちよくなれるかどうかが最も重要な価値基準になる。素敵なキャッチフレーズは気持ちよくさせてくれる。しかし、その中身の検証は不快な気分にさせるかもしれないのでやらない。

それはネトウヨと同じだ。彼らにとって、悪いことする政府は、自分たちが気に入らない政府だけである。だから、例えば、ロシアは絶対に悪いので、悪いことはすべてロシアがしたに決まっているという結論から1ミリも動かない。

リベラルとネトウヨだけが、特別なのではない。我々は皆、強度の違いはあっても、同じ傾向を持っている。それが「バラク・オバマは決して悪いことはしていない 」というような馬鹿げた信念にまで至らないとしても、「まさか、あの人が」的な小さな驚きは日常茶飯事ではないだろうか。それは本当に自由な心を持つことは難しいことを示している。しかし、最初の一歩として、少なくともそれを意識するか否かで心の自由度は大きく変わってくるだろう。

今回の記事で、ケイトリンさんはオバマを例に取り上げているが、オバマの論評に主眼があるのではない。むしろ、それは副産物のようなものに過ぎない。主眼は、我々の心の自由にある。                                                                                                                                                       

[原文情報]
タイトル:
Meditations On The Notion That Obama "Never Had Any Scandals"
著者:Caitlin Johnstone
配信日:FEB 20, 2024
著作権:
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原文の朗読:
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