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スタン神 「アゾリウスアグロ」デッキ解説
noteでははじめまして。先日、第29期スタンダード神に舞い戻りました岡井(X/Toshiki Okai)です。
今回使用した「アゾリウスアグロ」は、神タイトルのパワーのおかげもあって、そこそこ反響もあり、実際に組んでみている方もいるようです。中々、珍しいデッキで勝つ機会というのも無いものですし、慣れないデッキ解説を書いてみました。
今回は全文無料です。今後の参考になりますので、ご意見・ご感想お待ちしております。
アゾリウスアグロとは
デッキリスト
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ジェスカイ招集でもおなじみの《ひよっこ捜査員》、《遠眼鏡のセイレーン》による、1マナでのアーティファクト・トークンを含めた複数パーマネント展開により真価を発揮するカードが多数採用された友好2色のアグロデッキ。
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上記デッキ基盤の2種は『カルロフ邸殺人事件』期に揃っているが、注目したのは『ブルームバロウ』期のローテーションによる、ボロス招集のジェスカイカラーへのシフトによるマナベース弱体化と《マネドリ》の登場。
当時の環境初期に行われたジャパンオープンに向け調整したものがベースだが、実はメインボードのスペル構成はほぼ変わっていない。
じゃぱお67位でしょにぽんしょんぼり pic.twitter.com/jl6LcqiVyz
— Toshiki Okai (@lip_dm) August 10, 2024
『ブルームバロウ』期以降、一部愛好家が細々と使い続けていた印象だが、MO上などで見かけていたリストとは相違点も大きい。
軽量ながら強力なプレッシャーをかけられる《内なる空の管理人》、《威厳あるバニコーン》の2種と状況によってパーマネント展開と追加の脅威を使い分けられる《マネドリ》は共通であることが多い。
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このリストの最大の特徴は相手に干渉するための、いわば妨害枠にあたるところに採用された《薄暮薔薇の聖遺》、《喝破》の2種。どちらも追加コストが必要だったり、構える必要があるものの、広範囲の脅威に対処可能。
構築当初からこれらのカードを上手く活用すべく、1-2枚程度採用されていることもあったものの一線級のカードには到底見えない《泥棒隼の事件》をビジュアル先行で4枚採用。これが想定していたアーティファクト・トークンやインスタントタイミングの展開手段確保に加え、意外と3マナ以降の脅威の枠としても優秀であり好感触。
結果として、構築画面上で1マナ域に6種24枚が並ぶスタイリッシュな見映えを気に入りこの構成を愛用。
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デッキの性質としては、
カードプール全体で、軽い脅威への有効な対処手段が乏しいカラーリングなため、低マナ域で攻勢を仕掛けてくるデッキには《威厳あるバニコーン》頼りになってしまう
黒系のデッキに対しては、速度で勝りつつ標準装備である《喉首狙い》に耐性があるため、こちらだけ要所を弾いて攻め込んでいける展開が狙いやすい
アーティファクト・トークンもろとも吹き飛ばしてくる《一時的封鎖》で壊滅してしまうが、《太陽降下》にはカウンターする余裕や継続した攻め方をする余地があるため比較的耐性がある
となっており、具体的にはディミーア・ミッドレンジやゴルガリ・ミッドレンジ、白単&ドメイン系には五分以上に戦え、赤単/グルールアグロはやや不利、ジェスカイ招集は全体除去の採用が難しいためサイド後含めて対処不能に近い。
環境上の立ち位置としては、神挑戦者決定戦時点においてはTOP16入賞の黒系のミッドレンジデッキ(ディミーア・ミッドレンジ3、ゴルガリ・ミッドレンジ1)で《喉首狙い》の採用がMAXの16、《一時的封鎖》はアゾリウス眼魔(1名)のサイドボードのみで、白単コントロール(1名)には不採用と、赤単/グルールアグロが最多勢力ではあるものの全体を見渡すと悪くないといったフィールド。
一方、ジェスカイ招集が再復興すると、直接対決が厳しい上に《一時的封鎖》が再評価される流れとなり向かい風。
マナベース
現スタンダードにおいて、友好2色カラーはダスクモーンの境界ランドによる強固なマナベースを武器に、1マナからスムーズにプレッシャーをかけられる点で秀でている。
アゾリウスカラーは、環境筆頭のグルールアグロ、ディミーア・ミッドレンジ同様の境界土地《フラッドファームの境界》に加え、それらのデッキのバリューランドに見劣りしない《不穏な投錨地》も存在するマナベース優等生。
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2ランドでの白と青のカード連打によるダブルアクション、3ランドの状態での1マナプレイ+喝破構えといった凄まじいシンボル要求を支えるため追加のバリューランドとしては《ミレックス》を採用し、白17・青16+アクティブ時の境界ランド・ミレックス2のほぼ均等2色の構成。
《不穏な投錨地》の確定タップインや《ミレックス》による2ランドキープのしにくさはどちらもリスクではあるものの、これら計6枚のバリューランドはアーティファクト・トークンを生成しつつ攻勢を維持できるため非常に高相性。特に、《泥棒隼の事件》の達成や《薄暮薔薇の聖遺》の追加コスト工面など、手掛かりや地図の能力起動していくタイミングでは非常に心強い。
また、細かい点だが、境界土地周りのバランス(《フラッドファームの境界》4枚目<《平地》2枚目の採用)については関心が高い人がいるので意図についても補足。
《島》+《フラッドファームの境界》のパターンによる境界土地アクティブの貢献は、1-2t目にかけての青1マナ3連アクションができるようになるなど、それほど高くないため、《平地》+《フラッドファームの境界》のパターンを最大化すべく平地2、境界土地3のバランスを採用。
カード単体で見ると《フラッドファームの境界》は《平地》の上位互換だが、平地が1枚しか入ってないデッキの《フラッドファームの境界》より2枚入っているデッキの《フラッドファームの境界》の方が強くなる。どちらがベターかはデッキ内の要求アクション次第。
サイドボード
幽霊による庇護4、邪悪を打ち砕く4
メインボードの妨害枠2種に比べ汎用性に欠くものの、デッキの弱点である赤単/グルールアグロへの攻守逆転や《一時的封鎖》からの復帰が狙える。役割を考えるとメインボードと妨害枠とそのまま入れ替えてしまうことが多々なので、どちらも最大枠を確保。
《邪悪を打ち砕く》に寄せ切っているのは、アゾリウス眼魔が一定数存在し、サイド《一時的封鎖》が一般的だったころの名残。《一時的封鎖》だけ見るなら《第三の道のロラン》も追放対象外かつ、《マネドリ》を重ねられるのでおススメだが、そもそも75枚に不採用なこともあるため、クリーチャー除去を兼ねられるこちらを優先している。
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謎めいた外套2
やや悠長であるものの、対処が難しい追加のプレッシャーであり、主に黒系の除去一辺倒なプランを崩すのに強力なカード。《内なる空の管理人》や《泥棒隼の事件》のカウント確保にも一役買い、多角化した攻めを展開できる。
ただし、ディミーア・ミッドレンジで《逃げ場なし》の採用が拡大すると少し信頼度低下。
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ガラスの棺2
主に赤単/グルールアグロと黒系ミッドレンジへの追加の除去。なのだが、ディミーア・ミッドレンジから《大洞窟のコウモリ》が抜けていき、対処が必要なターゲットはほぼ《分派の説教者》一点狙いで、《邪悪を打ち砕く》とどっちもどっちな微妙な枠に。
不採用にするにも、赤単/グルールアグロへの枚数が合わないのと、ゴルガリ・ミッドレンジの《グリッサ・サンスレイヤー》があまりにもクリティカルなので、サイドボード枠全体の見直しが必要。
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救済の波濤2
赤単/グルールアグロへのプランを検討していく中で、《幽霊による庇護》へ寄せていくために採用。本来、引き合わせが必要なため、オーラの付与先を準備する方を優先したいが、《威厳あるバニコーン》以上の適任はいないため引けているときのバリューを最大化する方向へ。《叫ぶ宿敵》や《多様な鼠》絡みのコンバット、エンチャント除去モードの《脚当ての陣形》に対してなど特定のシチュエーションで唯一無二の働きする。
予選ラウンドではシミックテラーに《生命ある象形》を減らしたくて入れ替えるなど、意外と呪禁付与スペルとして汎用的で好感触。
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除霊用掃除機1
墓地対策枠として1枠採用。アーティファクトカウントを稼ぐのでデッキとも合っているが、アゾリウス眼魔に対しては《邪悪を打ち砕く》で入れ替え枠を確保していたため墓地対策が薄め。
なお、墓地利用デッキとして台頭しつつある、シミックテラーに対してはそこまでクリティカルではないが、《安らかなる眠り》が《生命ある象形》とアンチシナジーだったりで、他の墓地対策カードや追加の枠をとるかは悩ましい。
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プレイのポイント&Tips
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アーティファクト・トークンだけでなく、除去に使用した《薄暮薔薇の聖遺》や《ガラスの棺》もアーティファクトなので能力起動のコストにできる。1tの間に複数回起動する場合は、タップ状態にし終わったカードを生け贄にしてアンタップ状態の《薄暮薔薇の聖遺》が着地させられるなど、パーマネント数管理に注意。
展開ターンを1tにするか、2tにするかは状況次第。他の1マナアクションの組み合わせ次第では2t目からパワー2で殴ることができるものの、相手の1マナ除去を能力起動前に撃たれてしまうと、占術すらできないリスクがある。また、相手がタップアウトしていれば赤の1マナ2点火力はそもそも範囲外となるし、《切り崩し》も更に1t与えてしまうと範囲外となってしまうため、相手が他の2-3マナのアクションを滞らせて撃たざる得なくなるケースがあるなど、後出しする意味も存在。
当然だが、地図トークンによる+1カウンターでも、3個以上乗せられれば飛行・警戒を得ることができる。シビアなレースの状況では狙うこともあるので、アーティファクトをクリーチャー化させるカードがないからといって、手なりで地図トークンからタップして能力を起動しないよう注意。
《マネドリ》
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キャスト時には対象を取らず、戦場に出るに際し払ったマナ総量以下のカードを選んでコピーとして場に出す。コピー先になるクリーチャーを複数展開してから唱えれば、キャスト時の除去が問題なくなるので出す順番には注意。
1マナのカードをコピーするにはX=0で唱えればよい。2t目からのダブルアクションの再現性を高めつつ、X=1で空飛ぶ《威厳あるバニコーン》になる動きが強力。
クリーチャー化したカードをコピー先に選ぶことも可能。ただし、クリーチャー化したという情報はコピーされない。物理的なカードそのものに飛行と書き加えたカードとして戦場に出るイメージ。頻出ケースは《生命ある象形》や《泥棒隼の事件》によるクリーチャー化した《薄暮薔薇の聖遺》のコピーで、X=0唱えたときは《マネドリ》なので追加コスト不要で、戦場に出たときの追放能力が誘発させられる。クリーチャーではないため、アリーナだと右下の方でぷかぷか浮いてておもろい。
《生命ある象形》の発見能力でヒットした場合は、マナを支払っていないので1マナのカードすら選べない。つまり、基本的にはハズレ。他にトークン・クリーチャーなどいなければ、手札に加えるか1/1飛行として戦場に送り込むかを状況次第で選択することとなる。
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アーティファクトをクリーチャー化させる挙動で一部共通点もあるためまとめて記載。
手掛かりトークンか地図トークンの2択は、ある程度先の展開が見こせないときは手掛かりトークンをクリーチャー化させておく。手掛かりは起動にタップも必要なく、インスタントタイミングで行えるため、除去に対応して起動することでアドバンテージを稼げる。そのため相手視点ではタップアウトしているタイミングで除去する必要があり、《生命ある象形》の発見で出てきたカードがすぐに戦闘に参加できるようになる。リソースが切れてきて、次のターンには手掛かりを起動してリソースを探しにいく必要がありそうな場合には、手掛かりを温存したい。
《薄暮薔薇の聖遺》は護法②がついているためクリーチャー化すれば軽い除去耐性として機能する。追放したクリーチャーを取り返されるリスクが増すものの、前述の《マネドリ》とのコンボや除去を構えている相手に対する詰め筋として狙うパターンも多い。
《生命ある象形》の発見能力は占術や地図トークンで操作可能。除去されたり相打ちする可能性が高いときは1マナのクリーチャーや《マネドリ》を下に送り、よりハイバリューなカードを探すことも検討できる。手掛かりトークンのドロー能力を起動した場合は、ドローの解決前に発見能力が誘発するため、相手のキャスト時対応にトップに積んでおいた《喝破》で打ち消すおしゃれプレイも。
《泥棒隼の事件》は+1カウンターを乗せて、飛行を付与する能力なので、《生命ある象形》を後から重ね掛けすることで9/8飛行で殴り掛かることができる。《泥棒隼の事件》はアーティファクト・クリーチャーを対象に取れないため順番に注意。
マッチアップ&サイドボードガイド
1.赤単/グルールアグロ
OUT
-4 《泥棒隼の事件》
-4 《喝破》
(後手)
-1 《地底のスクーナー船》
IN
+4 《幽霊による庇護》
+2 《ガラスの棺》
+2 《救済の波濤》
(後手)
《泥棒隼の事件》or《謎めいた外套》から1枚
デッキリストのところで書いた通り、《威厳あるバニコーン》が重要なマッチアップ。
計4マナとマナ効率の悪い《泥棒隼の事件》と攻めているとケアが容易な《喝破》を抜いて、《幽霊による庇護》による巻き返しを図る。
《地底のスクーナー船》は先手時は1マナクリーチャーから2t目に展開できると、《僧院の速槍》+《巨怪の怒り》くらいでしかこじ開けられないため、意外と悪くない。後述の黒系ミッドレンジの3マナ域に対してもそうだが、かなり先後で強さが変わるカードなので、入れ替え時に枠を合わせ切るのが難しい。
後手のときに残すカードは、《幽霊による庇護》の付け先の追加で、《脚当ての陣形》の有無から適宜判断すればよい。赤単の構成であれば無色の4/4飛行を作ればそこそこ信頼できるため《泥棒隼の事件》、《カープルーザンの森》や《不穏な尾根》が確認できた場合は《謎めいた外套》がまだマシだろう。
2.ディミーア・ミッドレンジ
OUT
-1~4 《威厳あるバニコーン》
(後手)
-1 《地底のスクーナー船》
IN
+2 《謎めいた外套》
+0~2 《邪悪を打ち砕く》 or 《救済の波濤》
直近では《大洞窟のコウモリ》が不採用となり、《ガラスの棺》を入れるほどでもなくなったため枚数が合わない。《威厳あるバニコーン》を残し、《喉首狙い》の撃ち先となってしまっても2マナ同士の交換で大きく敗着には繋がらないので、この構成なら無理に入れ替える必要もない。
神への挑戦時は相手のリストに《分派の説教者》が4、《黙示録、シェオルドレッド》が3と厚めに取られており、こちらが後手で迎えたGAME3でも《喉首狙い》を確認したのでGAME4で《邪悪を打ち砕く》へ入れ替え切った。
抜き切りたいなら何かしら枠を取った方が良い。《忠義の徳目》とかちょろっと入れるのがいいかも。
3.ゴルガリ・ミッドレンジ
OUT
-4 《威厳あるバニコーン》
-1 《地底のスクーナー船》
-X 《喝破》
IN
+2 《謎めいた外套》
+2 《ガラスの棺》
+1~ 《邪悪を打ち砕く》
《邪悪を打ち砕く》は《不浄な別室/祭儀室》に強いが、《グリッサ・サンスレイヤー》が《分派の説教者》よりかなり厳しく、《威厳あるバニコーン》や《生命ある象形》が相打つことすら叶わないため、対処できる可能性のあるカードを優先。ただし、《強迫》もあるので、相手の構成次第で《喝破》ともう少し散らした方が自然か。
先手時は《地底のスクーナー船》も最速着地させて動かせると強いが、《羅利骨灰》もありやや通りが悪いため、ある程度長期戦を見越して入れ替えてしまってよい。
4.ティムール・カワウソ
妨害枠はキーカードの《永劫の活力》や《この町は狭すぎる》を追放できる可能性があるメイン2種がベストなため、あまり入れ替え不要。《この町は狭すぎる》を構えているところに突っ込みにくい《生命ある象形》を減らす。
ティムール・カワウソに対しては、とにかく攻めてチャンプブロックを強要させる局面へ持ち込み、頭数を維持させないことが重要なので、受け札に寄せすぎない方がよい。相手が受け回していくに際し、護法が効果的なので、《謎めいた外套》だけでなく《泥棒隼の事件》による《薄暮薔薇の聖遺》のクリーチャー化もGood。それも狙って、《薄暮薔薇の聖遺》はカワウソ・トークン相手に1枚積極的に使ってしまってもよい。一番追放したいのは《永劫の活力》だが、ある程度相手の手札が整ってくると、どうせ《塔の点火》等で逃げられてしまうので、先んじて使えるマナを減らしておくのが有効。
5.白単&ドメイン系
相手の構成次第だが、直近ではメインから《一時的封鎖》の採用は少なく、《太陽降下》の方をガッツリ取っているパターンが多い。《泥棒隼の事件》を解決状態で取っておいて、《生命ある象形》や《不穏な投錨地》といった耐性のあるカードでライフを詰めていく動きが有効。
各種大主や《永劫の無垢》に対しても、《一時的封鎖》さえされなければメイン戦の《薄暮薔薇の聖遺》がある程度有効に働くので、攻めるも守るもそこ次第。
《永遠の策謀家、ズアー》型に対しては、上手く回られて《魂の洞窟》経由で動かれると負けてしまうので、《ティシャーナの潮縛り》や《フェアリーの黒幕》のような強く構えて動けるカードを追加すると良い。