ヴァイオレット・エヴァーガーデン劇場版感想(ネタバレあり)
公開初日に見て以来あれやこれやと書きたいことが浮かんでしまい、結局4週間経過。
5周目を迎えたところでようやく一息つけた。
原作小説も売り切れ続出で10月26日にようやく増版が出回るとのこと。
これほどの傑作なら納得できる事態だ。
初見。
唐突に夜道が映り、立派な館がアップになり、館内に変わる。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンの時代から未来であることを示す
電気スイッチ、ラジオ、黒電話。
少し現代に近い服の女性が出てきたとき、これがどうヴァイオレットへつながるのか不思議だった。
ここまでだとはっきり言って作品がどう転ぶか不安だった。
絵こそきれいであれ、ヴァイオレット・エヴァーガーデンとは無関係だったり、変な方向へストーリーを進めて駄作になりはしないか。
だが彼女がデイジーというアンの孫であり、これがアンの葬儀後の話であったと知り、にわかに満足度が上がってくる。
アンの手紙からヴァイオレットの新聞切り抜きが出てきたとき、いい方向に進むと思えるようになる。
手紙が舞い、ヴァイオレットの部屋が移り、ヴァイオレットの時代に話が変わる。
海のイベントで動くヴァイオレットを見てこれが傑作になることを確信した。
そこからは140分が短いとさえ思えるような怒涛の展開である。
ヴァイオレットの回想、ディートフリートとの再会、新たな依頼人ユリス、ギルベルトの生存、ユリスの死。
終盤、1度はヴァイオレットとの面会を拒絶したギルベルトがテレビのエンディング「みちしるべ」の曲が流れる中、坂を降り、船で去るヴァイオレットの名を叫び、ヴァイオレットが船から飛び降りて再会するところでアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が到達すべき場面に到達したと感じた。
話はデイジーがギルベルトの暮らしていたエカルテ島から両親へ手紙を出してとどいたところにいたり、冒頭の夜道を歩くヴァイオレットで幕を閉じる。
エンドロール後にはヴァイオレットとギルベルトの姿が映し出される。
これほどまでに映像美というものを感じたアニメも初めてだった。
港に集まる船、雨上がりの草花、夕日のC・H郵便社。
音もまた心を打つ。
人物の声、船の汽笛、心境を移す音楽。
今回初見がグランドシネマサンシャイン池袋のBESTIA、続けて川崎チネチッタのLIVEZOUND、シアタス調布とイオンシネマ幕張新都心のULTIRA、Tジョイ大泉と鑑賞した。
この作品は大スクリーンと充実した音響システムで更に感動させてくるのだ。
ヴァイオレットのリボンが現代のエカルテ島の小学校で手すりにくくりつけられていたり、博物館となったC・H郵便社の案内をする老婆がかつての窓口職員だったり、細かいところへも配慮を怠らない。
かつて最大の激戦で照明弾が聖堂から打ち上げられ、今度は電波塔の完成を祝って花火がライデンの街に打ち上がる。
そうした対比も随所に施されている。
ルーブルやウフィツィなど世界で傑作を揃えた美術館に展示上映するべき作品だと感じた。