インストラクショナルデザイナーのひとり言『休み方を、学ぼっ♪』その5
パーフェクトな寝落ちに欠かせないもの
アカデミー賞にノミネートされた役所広司主演の映画『PERFECT DAYS』には、清掃員である主人公が、静かな部屋で本のページを繰りながら、深い眠りにつく、パーフェクトな寝落ちのシーンがあります。
どうしたらこんなに安らかな眠りが手に入るのでしょうか。
トロント大学のレイモンド・マー教授は、映像と本の違いについてこう述べています。
人は映画や TV 番組を見はじめると、少々飽きてしまっても興味が失せても、最後まで見続ける傾向が強いのです。
それは一人ではなく誰かと一緒に見ることが多いこと、見るスピードや見方をコントロールされているので、いつのまにか受け身になってしまうことが要因です。
一方、本は違います。
自分ひとりで、自分のペースで、好きなところは何度も繰り返して、読むことができます。
つまり、自分の感情や気分を、自分でコントロールできるのです。
この自分主体の読書体験が、自然と脳をリラックスさせ、質の高い休みへと誘うのです。
また、読書は能動的な労力を必要とする少々めんどうなものですが、それでも質の高い休息感が得られるのは、脳の中に、自分だけの世界を創造し、没頭することができるからなのです。
素敵な休暇の引き金となる「休息ボックス」
アメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイ氏は、この読書がもたらす我を忘れて夢中になる状態を「フロー」と呼びました。
現実の世界のほかに、空想の世界とい うひとり時間の居場所をつくることで、日ごろのストレスを発散し、自分らしさを取り戻すことができるというのです。
このように本は、手軽に手に入る、上質な休息をつくるための、非常に効果的なツールといってよいでしょう。
充実した休暇と生産性向上が密接に結びつくことは誰もが認める時代で、仕事をしていない時間が、いい仕事を創造すると言われます。
だからこそ、自分で自分を上手に癒すことができる「セルフケア」のスキルがますます重要になるのです。
ちなみに前出のハモンド教授は心地よい休息へのきっかけを作るセルフケアグッズを集めて、自分だけの「休息ボックス」を作ることを勧めています。
たとえば、好きな絵本、ヨガ用の靴下、リラックスできるBGMリスト、ストレッチのマニュアル……。
私なら日帰り温泉の回数券と、最近集め始めた御朱印帳、桜貝の貝殻がつまった瓶も追加しようと思うのですが、さて、あなたは何を入れますか?
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