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いつも心にトランプを

各地での大雪による災害の話題を耳にするたびに、「みなさん、どうぞご無事で」と祈ると同時に、「除雪の予算を出すのは大変だろうなぁ」と思ってしまう。年度末が迫ったこの時期は、どこの自治体だって財源が手薄になっているはずだ。そこで除雪などにお金を出さなくてはならないなんて、頭を抱えている役所の職員も多いんじゃないだろうか。

……と、こんなことを口にすると、「三浦さんって、どんな話題でも金のことに持ってくよね」と言われてしまう。すみませんね、これは商売人の家に生まれた人間の性みたいなもんですわ。でもね、お金のことを口に出したり考えたりすることから避けていたら、かえってお金から逃げられると思うのですよ。

特に、私のようにフリーランスで働いている人間は、ギャランティの交渉を自分ですることが多いので、自分の仕事の価値といった「お金」に関することを考えなければいけない。そうじゃないと、安い仕事を押し付けられたりして、稼げなくなってしまうので。

「いつも心にトランプを」

これは、私がギャラの交渉のときに必ず唱える呪文のようなものだ。トランプというのは、もちろんアメリカ大統領のトランプさんのこと。いろいろと問題のある人であることは重々承知のうえで言うけれど、私は「商売人」としてのトランプ大統領を「すげぇな」と思っている。

トランプ大統領は、何かの交渉をする場合、必ずとんでもない要求を突きつける。相手が「何言ってんの?」「できるわけねーじゃん」「こいつバカじゃねーの」と思ってしまうようなことを。そして相手が文句を言ったり、「できない」と拒絶してきたら、「お前ができないってんならしょうがねーな。少し要求を下げてやるよ」と、最初の要求より数段落としたところで渋々決着をつける。

パッと見では、「トランプ大統領がわがままを言って相手を困らせ、相手が文句をつけてきたら、怯んで要求のレベルを下げた」って感じだけれど、トランプ大統領は、この「要求のレベルを下げた」ことを織り込んで交渉している。つまり、最初から「要求のレベルを下げた」ところでの決着をしようと考えて、そのうえで初っ端に無理難題を吹っかけてるんだと思う。これって、商売人の金の交渉の仕方そのものだ。

私もクライアントとのギャランティの交渉の際には、トランプ大統領ほどではないけれど、要求するギャラをなるべく「盛って」伝えるようにしている。相手がそれでOKしてくれれば万々歳。もし「もう少し安くなりませんか?」と言われたら、のび太にひみつ道具を出すドラえもんのように「しょうがないなぁ」と口を尖らせて言いながら、金額ダウンの交渉に応じる。

最初に高いギャラを提示するのは、結構ドキドキするものだ。「これで仕事がなくなったらどうしよう」なんて考えることもある。だけど、私の心の中にいるトランプ大統領が、「『アメリカファースト』じゃなく『自分ファースト』で行け! Make you great again!」 と言ってくるので、堂々と高いギャラを要求できるのだ。

……というのは言い過ぎかもしれないけれど、ギャラの交渉が苦手なフリーランサーには、心にトランプ大統領を飼うことをおすすめします。特に「クライアントに負けてしまう」「なかなかお金のことを口に出せない」といった、シャイなフリーランサーは、心にトランプ大統領を3~4人住まわせるぐらいがちょうどいいと思う。

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