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息子の聴覚過敏とトマティスメソッド①

新元号の発表にエイプリルフールに入社式と、あれやこれやでてんこ盛りだった今年の4月1日。その日に、約1年にわたる息子の聴覚トレーニングが終わった。

息子は聴覚過敏の傾向があり、いろんな音が「聞こえすぎる」状態だった。「たくさん聞こえるっていいことじゃない? 聖徳太子っぽい!」なんて言う方もいるかもしれないが、当の本人にとっては大変なことなのだ。

たとえば授業中。先生の声とおしゃべりするクラスメイトの声、外で体育をする生徒の声などなどが、すべて同じボリュームで聞こえたりする。つまり、知覚過敏の人にとってこの世は「うるさすぎる」のだ。しかも、本当に聞かなくてはいけない先生の声を聞き取れず、授業についていけない……なんてことも起こる(というか、息子には起こっていた)。

息子にとってしんどかったのは、中三のときのクラスだった。パリピなクラスメイトが多く、常にザワザワしている教室は「ゲーセンにいるみたいだった」という。そのせいで毎日ヘトヘトになって帰ってくる息子を見て、「高校に入る前になんとかしないと」と思い立ったのが、昨年の1月頃だった。

臨床心理士であり、腕っききのエステティシャンであり、障害児のケアもこなし、バンギャでもあるという、情報量多めな私の知人に相談したところ、「トマティスメソッド」を紹介してくれた。

トマティス? なんじゃそりゃ。怪しい民間療法か何かか? みたいな私の疑いの気持ちを読み取ってか、知人は「怪しくないからね。ちゃんと実績のある聴覚ケアのシステムだから」とくわしく教えてくれた。

簡単にいうと、トマティスメソッドは「聴覚の特性を探って心身の問題点を明らかにし、理想的な聴感覚を取り戻すケア」だ。くわしくはこちらを読んでいただければわかるが、発達障害の子どもにはてきめんに効果があるメソッドだという。

私と息子がお世話になったのは、「日本一のケアを提供する」(知人談)というN先生だった。N先生にお会いして、まずは息子の現在の聴覚をチェックしていただいた。すると……。

「叱られたり怒鳴られたりして、とても傷ついた経験があるんじゃないかしら」

いきなりそんなご指摘が。……ああ、そのとおりです。息子はADHDの特性で非常にトロいせいで、学校の先生や剣道の道場の先生から怒鳴られることが多かったんですね。それですね。

「叱ったり怒鳴る声の周波数のところで、非常に強い拒否反応みたいなのがあるんです」
「つまり……その部分は聞こえてないってことですか?」
「正確には『聞こえないようにしてる』ですね。防御反応に近いです。たとえ自分が怒られているわけじゃなくても、その周波数の音が聞こえた瞬間に身構えていると思うので、かなり疲れているんじゃないかしら」

息子がヘトヘトになって帰ってくるのは、そういう原因があったのか……。思い当たる節があり過ぎて、私は何度も頷きまくった。

「理想は、息子さんが本当に聞きたいことを聞き、それ以外の情報は聞き流せるようになることですね。それができれば、日常生活はもちろん、学力や剣道にも大きな変化が現れますよ」

N先生はそうおっしゃったあとで、「多くの発達障害のお子さんをサポートした実績もあるので、安心してね」と続けた。私がまだ怪しんでいることに気づいていたようだ。

さて、聴覚チェックが終わると、いざ聴覚トレーニングの開始になる。トレーニング方法は、メソッド独自の音響機材を使って音楽を聞くだけ。それだけ。

この機材の中でもヘッドホンが独特で、耳で聞く部分と骨伝導で聞く部分の両方が備わっている。また、聞く音楽も一般的なクラッシックなんだけど、時折音が変化する。それを聞くことで、「聞くべき音」「聞かなくていい音」を無意識で判別できるようにトレーニングするらしい。

試しに、私もヘッドフォンをつけて音楽を聞いてみた。これがすごかった。なんというか……すごく集中できるのだ(これは仕事に使えるぞ、と思いました)。

あと、音楽を聞いているうちに顔全体の力が抜けていくのがわかる。前述の知人にフェイシャルエステをやってもらうたびに、「食いしばりがすごいよ」と言われてもピンとこなかったんだけど、すごーーーく食いしばってたことがわかるぐらい、顎の関節に力が入らなくなった。

まずはこのトレーニングを、2週間ぐらいずつやっては休み……をくり返すことになった。そして息子の変化は、いきなり現れたのだった。
(続きます)

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