生まれたからには生きてやる。胸に刺さった歌詞そのままに生きてきた。古橋岳也
撮影 山口裕朗 foto finito
18年前、高校生だった古橋岳也(川崎新田)はある歌に救われた。
「役立たずと罵られて 最低と人に言われて──」
ザ・ブルーハーツの「ロクデナシ」を初めて聞いたとき、これは俺だ、と思った。
ものごとが人並みにできない。バイト先で歌詞そのままに面罵されることもあった。
俺は誰にも必要とされない人間。
長く自己否定しか出来ずにいた古橋は、だからこの歌を聞いたとき、初めて誰かに自分の存在を受け入れてもらえたように思えた。
歌はこう続いた。
「ありのままでいいじゃないか」
「生まれたからには生きてやる」
自分の内側で、何かが動き出した気がした。
その後「はじめの一歩」と出逢ってボクサーになった。
だがパンチをあてないマスボクシングにさえ怯え、一発のパンチも出せぬままリングから下ろされるような練習生。ボクサーには不向きだと誰もが思うような少年は、だがアマチュアを経てプロになり、14年をかけて今年1月、日本のてっぺんに立った。
ガウンを着るのは日本王者になってからと決めていた。
その日が明日、やっと来る。
「ガウンは僕がプレゼントするよ」
遠い昔にそう申し出てくれた人がいた。8年前、縁あって出逢ったその人は、古橋が2度、日本王座挑戦に失敗したあとも変わらず応援し続けてくれていた。
そのガウンの贈り主は、元ザ・ブルーハーツ、現ザ・クロマニヨンズのギタリスト・真島昌利氏。「ロクデナシ」を作詞作曲したその人である。
日本スーパー・バンタム級タイトルマッチは明日。
王者・古橋岳也(川崎新田)VS挑戦者・花森成吾(JBスポーツ)
計量後会見
「挑戦者は(キャリアは浅いが)連勝から挑戦のチャンスを掴んだ。あの勢いは怖い。それから彼のストレート。だがそれ以外はすべて自分が上。王者として、歴代の偉大な王者たちに恥じない戦いをする」(古橋)
「(計量で対面したとき)特にオーラは感じなかった。この人を倒せばチャンピオンになるんだ、とより気持ちが高まった。後半戦に持ち込めば自分の勝機は出てくるはず。明日は噛みつく」(花森)
古橋:36戦27勝(15KO)8敗1分 34歳
花森:10戦7勝(5KO)3敗 23歳
追記
ガウンを纏った古橋は、やはり王者になってからと決めていた「ナンバーワン野郎!」(ザ・クロマニヨンズ)で入場。フェイクレザーのライダースにふんだんにフリンジをあしらったガウンは、真島氏旧知のデザイナー氏による作品。
撮影 山口裕朗 foto finito
試合は古橋が初回、花森の右にあわせた右ストレートでダウンを奪う。花森はショートレンジのコンビネーションで対抗し、残り時間をしのいだ。続く2回、ダメージを感じさせながらも花森は挑戦者らしく左右のアッパー、左ボディブローを懸命に繰り出すも、主導権を握った王者の独壇場。3回、古橋は右ストレートと左ボディブローでぐらつかせると、ロープを背負った挑戦者に連打を浴びせかける。棒立ちになった花森は立ったまま失神しているように見えた。山田武士トレーナーが駆け寄るのと同時にレフェリーが試合を止めた。
古橋は3回1分12秒TKO勝ちで初防衛に成功。
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