Around arctic 2020
高校生の頃、すごく憧れたのです。Pole to pole 2000。世界中から集結した冒険家達が北極から南極までを人力で探検するプロジェクト。参加されていた石川直樹さんの姿に勝手に自分を重ねてワクワクしながら眺めていました。
あれから20年。コロナが広がった春頃、夫がハンモックを買ってきました。「今年は旅には出られないだろうから、森に入ろう」と。家の裏の林で練習に付き合いつつも、あまり乗り気ではなかった私。お付き合いの延長でテント泊に出かけた夏の森で、ぼんやりしていた目をカッと見開くことになりました。
自分に必要なものを自分の力で担いで森に入る。テントを張って、火をおこす。自分に足りる分だけ食料を準備する。湖の水で体を清め、太陽の光に合わせて眠る。
なんてこと!この力がみなぎるような感覚。頼れるのは自分だけ、自分がしっかりしていれば何があっても大丈夫というシンプルな強さ。
私の体をスコーンと抜けていった新感覚は、高校生の頃の気持ちを連れて戻ってきました。夏のテント泊は2ヶ所で1泊ずつ。戻ってすぐに「秋は1週間行こう」と準備を始めました。
秋に森に入るなら、ラップランドでのルスカハイキング一択。ルスカ=紅葉が輝く北の大地は、フィンランドの人々にとって秋の定番なのですね。夫の提案に秒で合意。
森に日帰りはよく行くものの、ハイキング(トレッキングという方が近いのですかね)やテント泊は素人の私。経験がある夫が師匠。とはいえ師匠だけでは心配なので(失礼!)道具を準備する時には、出来るだけ中古品を持ち主から直接買うようにしました。みなさん、その道の先輩達。受け取りに行く時には必ず森での経験を聞いて勉強、勉強。
トライアルは夏の終わりに一泊で近くの森へ。先輩のうちの一人が「軽いのに風に強くて安心だよ」と言っていたテントは確かに風にびくともしない代わりにかなり低い作り。あまりの窮屈さに夜中にパニックになる始末…。苦笑。慌てて師匠の師匠(夫の父)に連絡してスーパーハイクオリティなテントを借りました。ほっ。
怖い、怖いですよ。
もし途中で力尽きたら?荷物が持てなくなったら?怪我したら?地図が飛んで行っちゃったら?電気は持参するモバイルバッテリー1個分。電波は入らないエリアがほとんどらしい。師匠に迷惑はかけられない。自分を信じるしかない。
暖かく明るい部屋から暗い夜の様子を眺めつつ、「なんでこの心地よさを1週間も手放すことにしたんだっけ?」と自問したり、仕事先に迷惑をかけないかと後悔しかけたり。ここ最近は「行きたい」と「大丈夫かな」の間を行ったり来たりでした。
これこそが、私の中のPole to poleなんだろうと思います。あの時憧れたのはこの恐怖とそこに打ち勝つ好奇心だったに違いない。北の大地はどんな景色なのか、1週間ハイキングしながらテント泊をするのはどういう感じなのか。どうしてもやってみたい、見てみたい。北極には行けないけれど、北極圏を歩くのでAround arcticとでも言いましょうか。
高校生の私と、コロナと、夫と。いろいろな力が働いて、念願が叶います。行ってきます。
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