「心経和讃」三律上げ
2019年の秋に 地元での御詠歌の舞台の動画が届いた。
「心経和讃」という御詠歌だった。
お唱えされているお坊様お二人は お世話になっている方々で お二人のお唱えのされ方がぴったりで お声の波形も素晴らしく一致していて感心した。
その2年前の2017年に京都のロームシアターでご一緒させていただく機会があった。その時に演奏された「修証義御和讃」を初めて聴いた時に感じたのと同じような心動く旋律があり それは日本独特の雅さと躍動感のある旋律で この作品をピアノで弾いてみたいと思った。
そして 年末に お坊様方とお会いする機会があり正直にお伝えしたところ許可と編曲についてのご希望をいただいた。
ご希望は
・お檀家さんが合わせてお唱えできるように原調より高く
・3番の歌詞までのフルコーラスで
・可能ならば合唱まで
というものだった。
まずは 旋律と歌詞から私が感じるイメージに
素直に響きをつけて ピアノで単独で弾いてみることにした。
渡 慈秀さんのつくられた旋律は 同じ音がトントンと続く。それは優しく語りかけるようで 静かに身体に入って来る。
素直に自然に安心させてくれる旋律だと感じた。
大橋 覚阿さんによる歌詞は 一番 二番 三番のそれぞれに伝えたい大切な言葉があると思った。
迷いに深き 人の世は
四苦をさだめと 思えども
悟れば真如の 相(すがた)にて
水の流るる 風情あり
自在菩薩は理(ことわり)を
苦行の跡に 示しつつ
色(しき)は即ち 空(くう)なりと
天地(このよ)の道を 述べ給う
あな尊しや み光の
真理(まこと)を綴る みずぐきの
二百六十二(ふた)文字を
生かせ生命(いのち)と仰ぐべし
そのことから
あたたかく優しく語る
静かに輝きをもって 大切な教えを
世界の広がりを 包みこむように
ということをイメージして響きをつけた。
そこに20200114お坊様が主旋律をお唱えしてみてくださり 感激した。
次にご希望に向かうことにした。
「心経和讃」は檀家さん用に(女性の方が自然に出せる音域で)原調よりも短3度高い形での伴奏編曲とし 女性の方々が合唱できるように イメージの中で埋まるであろう音は避けて ピアノ編曲することにし1月21日に一応完成した。
一応というのは 「相互供養和讃」の編曲をさせていただいた時も 初めは檀家さん用の伴奏のご依頼だったから。
短3度高いのも主旋律を弾いているのもそのためで そこから思いがけず 二部に三部にと話が膨らみ 原調も欲しいとなった時に その改編の段階で 私の中では調性が変わると色合いが変わるため さらにあれこれと変更をお願いしたり‥自分が弾くものが変わるなら有りだけれど お唱えしていただく方々を混乱させたくはなかった。
なかったけれども 想定していない流れとなったため 他に道はなかったし 結果 本当に申し訳なかったから。
このことを学びとして 色違いで原調でも編曲したいと思っていた。
原調ができあがるまでは まだ手直しがあるかもしれないので 一応の完成ということ。
この3日前に ある記事を読んだ。
お嬢さんがインフルエンザ脳症になってしまわれたお父様が書かれたものでした。
また お父様が動画でお気持ちをまっすぐにお伝えになっていて 涙が止まらず ただただ祈った。
祈れば祈るほどに 空を見て
また その歌詞には彼女のお名前を思わずにはいられない言葉があり
この編曲がこもりうたのような響きであることも手伝って
ただただ 毎日 祈りをこめて弾いた。
どうか 奇跡が起こって欲しいと。
その気持ちがいっぱいのまま弾いた。
弾き続けながら 原調での編曲に向かうことにした。
原調の合唱は 低音パートをつけることにし ピアノ伴奏の配置を変えていった。
その調性その調性できれいに響く配置は異なるため 少しずつ少しずつ澄ませていく作業を重ねた。
そして 原調の完成の目処がついた20200128に 檀家さん用のピアノ伴奏つき三部合唱を完成にし イメージ音源として歌をキーボードで弾いて録音した。
この後 色違いで作成したことに意味があったと思う出来事が起こった。
以前に編曲させていただいた「追弔和讃」とのご縁を強く感じる出来事だった。
原調の「心経和讃」のその後については 回を改める。