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ヒーロー不在の世界 『ヒマチの嬢王』と『星屑の王子様』を読み比べて思うこと


ビビとキリカの話で深い深いダメージを負った僕。未だにダメージが残っている。コンビニでアイス買って食べる度に思い出して、なんとなく空を見上げてみたり。要するに全然立ち直っていない。
そんな僕もついにこの漫画の最新話まで追いついてしまった。更新が待ちきれねえぜ。
並行して読み始めた『ヒマチの嬢王』はアプリで一気読み出来ないので1日1〜2話のスローペースで読み続けており、オキちゃんの話がひと段落したところまで来ました。

この2つの漫画を読み比べて思うことがいくつかあった。
一つは、『ヒマチ』の方が大衆向けというか、より幅広い読者を獲得できる構成になっていることだ。メインはキャバクラの運営についての話であるものの、実在の市を舞台にする事で地域活性化・町おこしにも結びつけられるし、アヤネの口から度々仕事論、経営論的な言葉が出てくるのはビジネスパーソンにもリーチしうるように感じる。東洋経済オンラインとかプレジデント・オンラインとかに掲載されてそう。あのへん社会派漫画みたいなやつは何でも取り上げてるイメージがあるので。『のあ先輩はともだち。』も東洋経済オンラインで読みましたからね僕。あれ全然ラブコメでしかないのに。

話が逸れましたが、『ヒマチ』がこのように話のメインであるキャバクラ以外にもいくつかフックになりうる要素があるのに対して、『星屑』は徹頭徹尾ホスクラの話一本である。「職業もの」としてはむしろ正しいのかもしれないが、平気で人道を損なっている連中が多いのも相まって『ヒマチ』より読者をふるいにかけているような印象である。

話の展開とか結末も、僕が読んでる範囲だと『ヒマチ』の方が救いがあってマイルドですよね。対照的に『星屑』は結構救いの無いままに終わる話も多く、暗い読後感になる事もしばしば。世界観を同一とするこの2作品なのに、何故読感にこうも差が出るのか。


僕が思うにそれは一条アヤネの存在の有無、これだけだと思う。もっと平たくいえば『星屑』には一条アヤネのようなスーパーヒーローが存在しない。

一条アヤネは『ヒマチ』の主人公であり、機転と努力でいかなるピンチも覆すパワーを持ったスーパーウーマンである。また人道を重んじそれを犯す者を許さない。その人柄や能力、情熱は人を惹きつけ、かつて敵だった者も取り込みどんどん人が集まっていく。


上記のような人間は漫画の主人公であればあまり珍しくない。逆境や劣勢を覆せなければ物語にカタルシスが生まれないからである。

では『星屑の王子様』はどうか。
そもそもこの漫画は色々なキャラの視点で話が進むオムニバス的形式である。幅広いキャラが主人公を担当する機会がある訳だが、その中にアヤネのように1人で状況を180℃変えられるようなキャラは1人もいない。主役のリキヤとレイも含めみんな自分の事でいっぱいいっぱいである。この作品に漫画のような都合のいいスーパーヒーローはいないのだ。
強いて言えば、ギンジさんが人身掌握に長け金も余裕もあって顔も広くて喧嘩も強いという漫画的スーパーマンなんですけど、彼は他人を引き摺り込むだけ引き摺り込んで引き上げるという事をしてくれないからダメだ。
だから、この漫画の結末は結構悲劇的になるんじゃないかと思っている。みんなジリジリと擦り減って追い詰められて、普通の人間だからその状況を打開することもできずそのまま飲み込まれていくような。
でも現実ってそんなもんですよね。都合よく全てを解決してくれるスーパーヒーローなんて現れない。だから自分で何とかするしかないんですよね。

どうやらもうすぐ『ヒマチ』の方にリキヤやギンジが登場するようです。そこで彼らがどんな結末を迎えるのか、また『星屑』の方ではどうなっていくのか。あんまり見たくない気もするけど、しっかり見てこようと思います。


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