#26琉球舞踊家・新里 春加(しんざと はるか)さん
南城市佐敷出身の琉球舞踊家・新里 春加(しんざと はるか)さん。地元に琉球舞踊道場を構え、伝統芸能の継承と後継者の育成に力を注いでいます。沖縄県内外や海外での公演を通じ、琉球芸能の魅力を広く発信。また、斎場御嶽での聞得大君の行幸を再現した南城市のイベントでは聞得大君役を務めるなど、沖縄の伝統文化を次世代へと繋ぐ活動に尽力しています。 新里さんの後半です。
歴史と文化の重要性
ーーこの南城なんですけど、新里さんのお立場としてどんなまちになっていたいと お考えですか?
「このまちの将来ですか」
ーー10年後
「10年後、そうですね、正直あまり大きく変わってほしくないっていうのがあって、さっきも言いましたけど、やっぱり歴史とか文化があるっていうのは本当に素晴らしいことで、どこでもあることではなくて、南城市だからある歴史・文化・自然、それって本当に自然がないと継続できないと思うんですよ。歴史は続きますけど、自然って壊すの簡単じゃないですか。だけどそれを復活させるのって本当に時間もかかることだし、また外来種のものが入ってきたりとか沖縄らしさっていうのは、そういうのが作っているので、できるだけ壊さないでそのままあってほしい。その中で便利さだけを求めるんではなくて、快適さとか求めてしまうとやっぱり何かしらの建物を建てたりとかそういった人間の手が入ってしまうので、そうじゃなくて南城らしさっていうものをちゃんと自覚してやってほしいなって。他のところは建てるのって求められるし、お金も動くし、いろいろな理由があって建てていくと思うんです。でもそこを触らずにいることが、よそとの差別化になると思うんですね、いつか。それが10年20年じゃなくて 何十年100年とか、そういくとそこに残っていることがもっと、何ていうのかな、価値がある、よそとの差別化できる南城になるんじゃないかなと思います。」
ーーまさに実はその通りなんですけど。南城市さんは幸運にもと言っちゃあれですけど、本当に奇跡的に残ってますよね。
「そうですね。まだ残ってるぐらいで、たくさんいろいろ変わってはいるなとは感じますけどね。」
南城市の独特な空気感
ーー僕、月に1回大体4、5日 南城市にお邪魔してるんですよ。空港から向かってくると、南城に入ると空気感が変わるんです。
「そうですか。」
ーーそれ感じませんか。
「中にいると分かんないです、空気感は。」
ーーもう完全に変わりますね。南城に来たんだなって分かります。それは自然の要素もあるんでしょうけど、なんでしょうね、空気が変わりますね、っていうのは本当に感じていて、沖縄の北部はあまり伺ったことないんですけど、やっぱり南部の中では特別なエリアのような気がするんですけど。住んでる方としてはどうですか。
「ちょっとそこまでは、空気感とかまでは分からないです。」
ーーそうですか。これが日常だから、そうですね毎日泳いでるしね。
「そうですね。」 ーーなるほど、ありがとうございます。
伝統芸能の継承と自然の関係
ーーご自身の立場として、それを自然を残すためにやりたいこととかできることって何ですか。
「そうですね。やっぱり伝統芸能なので、昔のものを引き継いでいるっていう立場からすると、本当に昔と変わらないっていうことが大事なのと、やっぱり自然の中でいることがすごくマッチするんですね。沖縄らしさとか、もちろんそういう着物だったり道具だったり大道具だったり劇場のような箱とかももちろん必要ではあるんですけど、そこに自然がどれだけ残っていて、さっき言ったみたいにね、雰囲気が作ると思うんですよ。この南城らしさの雰囲気がある中で芸能をすることは本当に私たちにとっては最高の場所だなと思います。やっぱり伝統芸能をやっていると昔のものに触れたり昔の記憶の歴史に思いを馳せたり想像したりこういう考える機会がすごく増えてくるので、昔のものをとても大切に思うんですよ。昔の人たちはどう思ってたのかなとか、どういう思いでつなげたのかなとか、これってどうやってできたのかなとか。昔の時代背景とかいろいろ考えていくのでとても大切に思うので私は生徒を育てているので今この踊り、曲、衣装、道具とかそういったものができたことを伝えることが私たちはつながっているんだよって、ずっと昔過去からつながって、今自分があって先に未来につながるんだよっていうことを伝えられるので、その中で芸能を伝えられたらいいですね。自然のことも関わりながら」
自然保護活動とビーチクリーン
ーー意識的に自然を残すみたいなことは活動としてやっていらっしゃいますか。
「海がすごいきれいな砂浜だったのに、ゴミがすごい打ち上げられているんですよ。だから打ち上げられていなかった海にあったのかなとか思っても悲しいですし、そうするとビーチクリーンしたくて、ボランティア登録して南城市の、ゴミ拾いしているんです、散歩がてら。ねうちの道場のビーチパーティーも最近したので、最近全員でゴミ拾いから始めて。登録していたらそこに置いていたらゴミも持って帰ってくださるので。そういうのも活用しながらやっぱりきれいにしておきたいなという」
ゴミ拾いと環境保護
ーー大事ですよ。
「そう思っています。」
ーー結構打ち上げられてくる。
「打ち上げられますね。」
ーーぺットボトル。
「そうそう、本当にビニールの端っことか紐の端っことかマイクロプラスチックですか、そういう細かいものもですし、すごい大きいゴミも出てきます。」
ーー一番近くのビーチって何ビーチになるんですか。
「天(ティン)の浜」
ーー天(ティン)の浜。天の浜ビーチ、それをやられてらっしゃるんですか。そこで。
「はい、近いですね。」
ーーこのゴミ拾う活動って実は地味なんですけど、すごく大事ですよね。
「そうですね、本当に嫌なんですよ、見てても嫌になりますね。私も散歩をするようになってからだとか、もともとそういうボランティア精神があったかというと普通だったと思います。ただやっぱり自然に触れてたりとかすごいやっぱり大事だなって実感してるんですよ、すごく自分の中で。この自然がなくなってしまったらどうなるんだろうって考えると、守っていかないと一って考えると一番最初に手始めにできることがゴミ拾いだったってだけですね。」
ーーなるほど。
「散歩のついでです、ついでに。例えば今日はゴミの日なのでボランティアの袋の大きなものではなくて買い物袋の1人1個ずつ持って旦那と、いっぱいなる分だけゴミ拾うねとか。今日は缶だけね、とか、瓶だけね、とか決めて拾うんです。だからついでだけです。そんな仰々しくはできていないです。」
ーーそれを定期的にお散歩でやられてらっしゃる。
「そんなにたくさんやってないです。いっぱいずっとやってきたわけじゃないですけど、つい最近からやっぱり本当にこの自然とか大事だなって本当に思っているので。」
ーーいいですね。
「そうですかね。」
ーーご主人とやられるなんていいじゃないですか。
「そうですね。唯一の朝の会話時間なんですよ。」
ーーそれが。
「私夜いないので、お稽古とかでそういうことか。」
ーー大事、大事。そうですか、ありがとうございます。
観光地域づくり法人DMOについて
ーーさて、現在南城市はですね、観光地域づくり法人DMOというのを検討している段階でございました。10月の2日にも新里さんに出ていただいて講演会などをやらせていただきました、けれども、観光で地域をつくっていくという組織は必要なのか必要じゃないのかを聞いておりまして。
「もうどっちかといえば必要だと思っています。」
ーーどっちかといえば必要。
琉球舞踊と文化交流
「はい。というのはやっぱり芸能も”うとぅいむち”おもてなしの諸外国の方々をお迎えするために確立した舞踊ですので、琉球舞踊も、それを外の方と交流することで生まれたものなんですね。沖縄の人たちは琉球の人たちは、よそのものの良さをもらいながら自分たちのオリジナルにするのがすごく上手なので、そこは交易があったからだと思っているんです。だからよその人たちを本当にいつでも歓迎する気持ちではいたいんですよ。なのでそれは本当にあっていいと思っています。ただ外の人たちに意識が向きすぎて、なんていうのかな、自分たちらしさを見失わないようにしてほしいっていうことと、私たちのありのままを見に来たい、ここに触れたい関わりたいっていう人たちだけとか、そういう人たちの観光の皆さんそういう思いの皆さんが来てもらえる観光だったらいいなって思っています。」
ーーなるほどね。
旅行者のニーズ
ーーあんまり作られた観光地みたいなものじゃなくて、私たちの自然の状態を、日常ですね。」
ーー今コロナというものがありまして、観光の流れっていうのは世界的にも変わっていますと。その中で僕はそういうことをやる専門家なんですけど、一つのテーマがありのままですね。旅人の方たち、特に外国からいらっしゃるインバウンドの方たちはありのままを見せてくれって言うんですよ。作らなくていいとありのままを見たいんだと。ありのままを体験する旅っていうのが求められていますね。
「私も逆の立場だったらそういうのがいいなって思っています。たくさんあちこち行かせてもらっているので、特に国内で日本であれば本当に夜一人で出かけたりするんです。そういう時に本当に地元の人たちが普通にしているところにおしゃべりしたりとか地域の人たちの会話から自分の違いを見つけるとかっていうのがあるので自然体でいてほしいと思うんです。逆も同じだろうなと思って。」
ーーそうですよね、なるほど。DMOは必要だ。
「そうですね、たださっき言ったように南城らしさを大事にしたっていうのが前提ですね。この市民の声とかで違う方向に行っていたら止められる環境であってほしいですからね、独占とかじゃなくて、どういうものかDMOかは分かっていないんですけど。そういうふうにいい方向に行ってほしいです。 」
ーー自分たちのありのままを感じてもらう観光。
「ただでも市民も本当に南城を楽しんでないと面白くないと思うんですよ。ありのままが何と言うのかな、南城に気持ちが向いてなければ面白くない場所なので、南城を楽しむ南城市民であればいいかなって思います。」
子供へのメッセージと地域の魅力
ーー住んでいらっしゃる方が楽しみイコール幸せを感じるってことだと思うんですけど。そうですね。先輩としてまさにピュア南城を生きてきた新里さんとして、子どもたちにメッセージがありましたらお願いしたいんですが。
「そうですね、子どもたち皆さんが住んでいる南城が本当に素晴らしいっていうことを知ってほしいって思っていて。私が中学生の時とかによく言ってたのは、都会に憧れる同級生多かったんですよ、田舎だから嫌だとか内地がいいとかっていうのあるんですけど、一度外に出て良さを知ってほしいというか、たくさんいろんな経験をして、だけど日常の中で自分が南城市というか自然とか行事とかいろんなものを触れる機会を増やして、よそも見て南城市の良さも見てほしいなって思います。」
ーー一回外に出て
「外に出てない私がいうのもおかしいんですけど。」
ーー素晴らしさを気づいてまた帰っておいで、と。
「そうですね。いろんな経験して選択の中に南城市があると嬉しいですね。」
ーー ありがとうございます。
地元の魅力と地元の人々との交流
ーー言い残したことないですか、これだけは実は前々から言っておきたかったんだ。
「派手じゃないじゃないですか、南城市って。田舎だし、バーンっていう観光地があるとかそうではないんですけど、本当に好きな人は好きだから、その南城ファンが増えてくれたら嬉しいですね。」
ーー南城ファンが。
「はい、リピーター。」
ーーリピーターになれる人がいたとしたら、新里さんは何が一番推しですか。うちは南城はこれよみたいな。南城はこれよ、みたいな。
ーー朝日と。これよ、そうですね、ガンガラーの谷も大好きなんですけど。でもそこら辺に歩いているおじいたちとも喋りたいですし、おばあたちもパワフルなので、おじいおばあたちがいるところにパッて入ってちょっとお話とかいっても面白いですし、意外と地元の人と飲む機会も簡単だと思いますので居酒屋に行って
ーー居酒屋に行って
「居酒屋に行って一緒に飲めるんじゃないですかね、分からないですけど。私はよく一人でカウンターに座って飲んでたりとかしますけど、知らない人いたらお喋りとかして。」
ーー普通に居酒屋に行くとスナック状態になっている。
「どこでもじゃないですけど、そういうお店とかもあちこちあります。」
ーーあるんですか、まだ未開発だな。
「受け入れる地元の人はすごく友好的というか、すぐお友達になってくれると思います。」
ーーというわけでございまして、本日は琉球舞踊家の新里春加さんにお話を伺いました。新里さん、ありがとうございました。
「こちらこそありがとうございました。」