見出し画像

ジョーダンの意味は「死海に下る川」

前回の続きです。シモンのほか、新約聖書由来のよく知られる名前ジョーダン、シャロン、ガスパール及びハルマゲドンについて解説します。

シモン

 「シモンSimon」または「シメオンSimeon」は、ヘブライ語のshāmá「彼は聞いた」から生まれた「シモーンShimʿōn」という名前に由来します。
 「熱心党のシモン」の他、ペテロの元の名前がシモンですので、十二使徒のうち2人がシモンという名前であることになり、よくある名前だったことがわかります。シモンと同じ語源を持つ名前にイシュマエルがあり、shāmáの要素が入っています。
 シモンは、英語で「サイモンSimon」です。サイモン&ガーファンクルのシンガー・ソングライターであるポール・サイモンで知られた名前です。
 イタリア語では「シモーネSimone」です。元イタリア代表のサッカー選手だったシモーネ・インザーギが知られているでしょうか。ドイツ語、ポルトガル語の女性名も同じくシモーネです。
 シメオンは、キリシタン大名である黒田孝高の洗礼名ドン・シメオンが知られています。
 シモンから姓に転化したものとして「シンプソンSimpson」「シムソンSimson」があります。シンプソンは、アメリカ合衆国で放送されているアニメ「ザ・シンプソンズ」のシンプソン一家が、過去に日本のCMでも使われたためよく知られています。

ヨルダン

 使徒とは関係ないですが、新約聖書のストーリーと関連する名前を見ていきましょう。
 「ヨルダンJordan」という名前はもともとテンプル騎士団の子どもたちにつけられた名前です。イエスがヨルダン川で洗礼を受けたことにちなんで、聖地巡礼の際にヨルダン川の水をフラスコに入れて持ち帰り、子どもたちの洗礼に使用した慣習に由来します。ヨルダンの意味は、ヘブライ語yardan「(死海に)下る(川)」です。
 また、ヨルダン王国はヨルダン川にちなんで名付けられており、アラビア語では「ウルドゥン」といいます。
 英語名は「ジョーダンJordan」です。元プロバスケットボール選手のマイケル・ジョーダンが有名です。ジョーダンは姓にも個人名にも用いられます。
 フランス語名は「ジョルダン」です。

シャロン

 イスラエルのテルアビブTel Aviv「春の遺丘」からカルメル山にいたる肥沃な平原は「シャロンSharon」と呼ばれます。その原義はヘブライ語で「」であり、かつてこの地には森がありました。
 シャロンには花が咲き乱れる理想郷のイメージがあり、そこから人名としても使われるようになりました。女優のシャロン・ストーンやイスラエルのアリエル・シャロン首相で知られる名前です。

ガスパール

 東方三博士の名前は聖書では明らかではないものの、キリスト教の伝承によりメルキオール、バルタザール、カスパールとされています。
 このうちカスパールは「キャスパーCasper」「ガスパーGasper」「ジャスパーJasper」「カスパーKaspar」などの人名になっています。
 カスパールはアラム語のgizbarに由来し、「財務官、会計係」という意味です。フランスの絵本「リサとガスパール」や戦国時代に日本にやってきたイエズス会宣教師ガスパール・コエリョが知られています。

ハルマゲドン

 人名ではありませんが、ハルマゲドンという言葉はご存知でしょうか。ハルマゲドンは、「ヨハネの黙示録」に描かれた世界の最後の日に善悪の勢力が決戦する場所とされるヘブライ語har megiddo「メギドの丘」のことです。

イスラエル

 ギリシャ語の「ハルマゲドーンHarmagedōn」、あるいは英語の「アルマゲドンArmageddon」は、日本語では「最終戦争」と訳され、日本ではアニメ映画「幻魔大戦」のキャッチコピーがきっかけで知られるようになりました。またハリウッド映画の「アルマゲドン」でもよく知られています。

 いかがだったでしょうか。福音書は旧約聖書とは異なってイエスひとりの言行録であり、ヤハウェも姿を表すことはありません。旧約聖書はイスラエルの民(ユダヤ人)のための聖書でしたが、新約聖書は福音を世界中に宣べ伝えよとしています。イスカリオテのユダに代わって加えられたマッテヤ(本来マタイと同じ名前)を含む十二使徒は、迫害を受けながら布教を行い、多くが殉教していきました。

いいなと思ったら応援しよう!