聖路加は医者の守護聖人ルカに由来する
ローマ神話の主神ユーピテルに引き続き、配偶神である女神ユーノーに由来する人名について解説します。
豊穣の女神ユーノー
ユーピテルの妻は「ユーノーJūnō」です。ユーノーは初耳かもしれませんが、実はよく知られた名称の元となっています。
6月を意味するJuneはユーノーのことです。ジューン・ブライドはユーノーの月である6月に結婚することで、結婚生活の守護神ユーノーのご加護を得ようとする慣習です。ちなみに、女性誌「ジュノンJunon」はユーノーのフランス語名です。
ユーノーには複数の添え名があり、例えばユーノー・モネータ、ユーノー・ルキーナ、ユーノー・ナターリスなどがあります。
ルキーナとルチア
ユーノーの添え名であるルキーナは、単独で出産を司る女神ルキーナでもあります。
名前に含まれているラテン語のlūc-やlūx-の要素は「輝く」を意味し、現代にも照度の単位ルクスやラテン語の「ルーメンlūmen」から派生したフランス語「ルミネアLuminaire」、ルミネアを要素に持つ「イルミネーションillumination」などにその形が残っています。
いずれも光るものに関する言葉という点で共通しています。ゲルマン系の言葉から入ってきた英単語のlightも、印欧祖語まで遡ると*leuk-であり、Lūc-と同語源の言葉です。
この名にちなんだ架空の人物としてよく知られているのが、「サンタ・ルチアSanta Lucia」です。殉教したシラクサの聖ルチアを讃える「聖ルチア聖人祭」で歌われる、ナポリ民謡「サンタ・ルチア」は聞いたことがあるのではないでしょうか。
ルキーナに対応する男性名は、「ルキウスLucius」です。テルマエ・ロマエの主人公ルシウスがこの名前です。ルキウスから変化したイタリア語の男性名は「ルカLuca」です。「ルカによる福音書」の著者であり、医者の守護聖人とされています。彼にあやかって名付けられた病院が聖路加(せいるか=聖ルカ)国際病院です。ちなみに字音どおりに読んだ「せいろか」は正しくありません。英語名はSt. Luke's International Hospitalです。
ルカの英語名は「ルークLuke」です。スター・ウォーズのルーク・スカイウォーカーでよく知られた名前です。
また、「ルーシーLucy」はルークの女性形で、「赤毛のアン」の著者であるルーシー・モード・モンゴメリーで知られています。
以上は、ユーノーに関連する名前といえます。