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ジャマイカは「湧き水」、キューバは「中心地」

それでは、前回の続き、カリブ海の島の地名について解説します。

カリブ海の島々

カリブ海の島の名前

 カリブ海の島々はアンティル諸島とも呼ばれ、元はカナリア諸島とアジアの間にあるとされた空想上の列島の名前でした。アンティル諸島はさらに2つの地域に分けられ、プエルト・リコ以西にある比較的大きな島の多い地域が大アンティル諸島で、南東にある小さな島の続く地域が小アンティル諸島です。
 コロンブスが発見した順に準じて見ていきましょう。
 「サン・サルバドールSan Salvadol」はスペイン語で「聖なる救世主」という意味です。コロンブス一行は、インドと思われるこの島にたどり着けた神の加護に感謝して命名しました。同じく、エル・サルバドールは「救世主」という意味です。
 「キューバCuba」は先住民タイノ族の言葉「クバナカンCubanacan」の短縮形で、「中心地」という意味です。
 「カリブCarib」は先住民カリブ族に由来し、「勇敢な人」という意味です。カリブ族は人を喰うと恐れられたことから、人喰い人種を意味する「カニバルCannibal」という単語が派生しています。なお、音は似ていますが謝肉祭を意味するカーニバルは別語源です。

 「ドミニカDominica」は、コロンブスの上陸日である1493年11月3日が日曜日(ドミンゴ)であったことから名付けられました。なお、イスパニョーラ島東部にある「ドミニカ共和国República Dominicana」は、植民都市サント・ドミンゴが1496年8月4日、すなわち説教者修道会ドミニコ会の創設者である聖ドミンゴの日に建設されたことよるので、語源は同じですが由来は異なっています。

 また、イスパニョーラ島西部にある「ハイチ(アイティ)Haiti」は、タイノ族の言葉で「山がちな土地」という意味です。フランスからの独立に際して、サント・ドミンゴのフランス語名「サン・ドマング」から改名しました。
 グアドループに属する「マリー・ガラントMary Galante」島は、コロンブスの船団名「サンタ・マリア・ラ・ガランテ」、つまり「勇敢な聖母マリア」にちなんだ名前です。
 「グアドループGuadeloupe」島はフランスの海外県であり、レコンキスタ後にスペインのグアダルーペで発見された聖母像に由来するサンタ・マリア・デ・グアダルーペ修道院にちなんだ名前です。
 イギリス領の「モンセラートMontserrat」島もバルセロナ近郊のサンタ・マリア・モンセラート修道院にちなんで名付けられ、「のこぎり山」という意味です。モンセラートはマリアの添え名として、スペインの女性名にもなっています。現在は英国の海外県であり、「モントセラト」と呼ばれています。
 「セント・クリストファー」島またはクリストファーの愛称形の「セント・キッツKitts」島は、コロンブス自身の名前の由来になった聖クリストフォロスから名付けたサン・クリストバルの英語名です。

 英語名の「ネーヴィスNevis」島は、スペイン語でを意味する「ニエベnieve」が語源であり、ネービス山にかかる雲が雪のように見えたことに由来しています。この2つの島でセント・クリストファー・ネイヴィス連邦という国を形成します。
 「アンティグアAntigua」島は英語antiqueと同じ語源を持つ単語で「古代の」という意味です。セビージャの聖マリア古教会「サンタ・マリア・ラ・アンティグア」にちなんで名付けられました。現在はアンティグア・バーブーダという国です。
 「サン・マルタン(サン・マルティン)San Martin」島は、コロンブスが発見した日が1493年の11月11日、トゥールの聖マルティヌスの日であったことにちなんで名付けられています。現在、北部はフランスの海外準県で、南部は「シント・マールティン」というオランダの自治領です。
 「セント・クロイ」島は、フランス領時代にフランス語で「サン・クロワSaint Croix」と呼ばれた島が、やがてアメリカ領になったことで英語読みになったものです。元はスペイン語で「サンタ・クルス」と名付けられ、「聖なる十字架」という意味です。
 「ヴァージンVirgin」諸島は、現在イギリス領とアメリカ合衆国領に分かれています。コロンブスが発見した際に名付けたサンタ・ウルスラ・イ・ラス・オンスミル・ビルヘネス「聖ウルスラと1万1千人の乙女」の「ビルヘネスVirgenes」に由来して名付けられました。
 聖ウルスラは「小さな熊」という意味であり、4世紀のブリタニアの女性で女子教育の守護聖人とされています。日本にもウルスラを冠した学校が存在しています。「ウルスラ、アーシュラ、アースラ、ウルズラUrsula」「ウルシュラUrszula」は、女性名として使われています。
 アメリカ合衆国の自治連邦区「プエルト・リコPuerto Rico」は、Puerto「港」+Rico「豊かな」で豊かな港という意味です。プエルト・リコは当初「サン・フアン」と名付けられ、使徒ヨハネのことでした。「サン・フアンは」首都の名前として現在でも残っています。
 「ジャマイカJamaica」はアラワク族の言葉でザイマカxaymaca「湧き水」に由来しています。
 「トリニダードTrinidad」島は、スペイン語で「三位一体」を意味します。島にある3つの山に「トリニダード丘陵」と名付けたことに由来します。三位一体とは、父なる神と神の子イエスと聖霊は一体であるとするキリスト教の正統教義で、英語では「トリニティTrinity」です。
 「トバゴTobago」島はタバコに由来し、島の形がタイノ族の吸う太い葉巻に似ていることから名付けられました。
 フランスの海外県「マルティニークMartinique」島は、「花の島」を意味するカリブ族の言葉「マディニーナMadinina」がフランス語に転訛したものです。
 タックスヘイブンとしてよく知られるイギリス領「ケイマンCayman」諸島は、アラワク族の言葉「カイマンcaiman」に由来し、ワニを意味します。

 以上、コロンブスの航海と発見した土地についてでした。次回からはマゼランの航海についてです。


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