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スティーブ・ジョブズは「ヨブ」からの名前

前回の旧約聖書に登場した名前の続きです。今回はソロモン、ダニエル、ヨブについてです。


ソロモン

 「ソロモンSolomon」は、イスラエル王国に最盛期をもたらした王で、エルサレム神殿を築きました。彼の死後、イスラエル王国はユダ王国と分裂し、衰退へと向かいます。
 ソロモンはヘブライ語の「シェローモーŠelōmōh」に由来しており、シャロームやサロメと同じく「平和」を意味します。アラビア語ではスレイマンです。
 また、ソロモンには賢人の意味もあり、スチュアート朝の祖であるジェームズ1世はthe English Solomonと称されます。かつて存在したソロモン・ブラザーズという投資銀行やテレビ番組名「ソロモン流」、宮部みゆきの小説「ソロモンの偽証」など、誰だかは知らなくとも名前だけ何となく聞き知っているかと思います。
 第二次大戦でガダルカナル島の戦いがあったソロモン諸島は、このソロモンにちなんでつけられた名前です。
 「エルサレムJerusalem」という都市は「平和の礎」という意味であり、サレムの部分が「平和」のことでソロモンと同語源です。

ダニエル

 「ダニエルDaniel」は、ヘブライ語の「ダーニーエールDānīʿēl」に由来し、「神は私の裁き人」という意味です。バビロン捕囚の時代の預言者であり、難解な夢の意味を解き明かしたことでバビロン王に重用されました。夢の意味解き明かし→出世、というパターンはエジプトの宰相になったヨセフのようですね。
 英語名にはダニエルの他、Dannel、Dennellという形もあります。アメリカ合衆国の酒造メーカーの「ジャックダニエルJack Daniel’s」や、ホノルルの空港ダニエル・K・イノウエ空港などで知られる名前です。また、ハリー・ポッターを演じたダニエル・ラドクリフもよく知られており、彼は母がユダヤ系であることを明かしているため、定義上ユダヤ人ということになります。

 行動経済学の専門家でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンもユダヤ人であることを公言しています。ダニエルという名前はユダヤ人に好まれる名前ですので、ダニエルという名の人物を調べるとユダヤ系であるケースが多いです。
 ダニエルの愛称には、「ダンDan」や「ダニーDanny」があります。ダニエルから姓になったものにダニエルズ、ダニエルソン、ダニエルセンなどがあります。

ヨブ

 「ヨブJob」は、ヘブライ語の「イーヨーブIyyōbh」に由来し、「迫害された」という意味です。ヨブは旧約聖書の本筋のストーリーからは独立した「ヨブ記」に出てくる人物です。
 ヨブは子宝と財産(家畜)に恵まれた、信仰心の厚い人物でした。サタンからヨブの信仰心に疑義を呈された神は、サタンがヨブに試練を与えることを許可します。子供と財産を失ったうえ、重い皮膚病に冒されるという理不尽な不幸に見舞われます。しかし、ヨブは神への信仰を捨てなかったことで、神は彼を祝福し、失った財産を上回る家畜と子宝が与えられ、幸せに暮らしました。
 いや、それは「めでたし、めでたし」という話なのか?という疑問は残りますが…。
 ヨブの英語名は「ジョブJob」で、これが姓に転化したのが「ジョブズJobs」です。Apple社の創業者スティーブ・ジョブズで知られていますね。

 次回は女性名を取り扱います。

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