貫通式というもの
昨年の11月に裏山文庫の企画展
「渥美 稲吉オサム」から穴窯を掘れる場所を
探しているという話からとんとん拍子で進み
先日、穴窯の「貫通式」という普通の人は
見たこともない聞いたことない式典が
豊橋市某所にて開催された。
主催で現場監督を務めるのが
地元の陶芸家、稲吉オサム氏。
復元渥美古窯を目指し仲間と共に
手掘りの穴窯を完成させた。
火を入れるのはまだ先。
ちなみに渥美古窯とは
豊橋市南部〜田原市一帯に掛けて
平安時代末から鎌倉時代初め頃
まで焼かれていた物。
当時は庶民のための雑器とかではなく
貴族などの注文に応えて壺や
碗物が焼かれていた
いわゆる高級な焼き物だ。
で、この穴窯というものは
斜面の下から穴を掘り斜面上まで
掘り進み穴を貫通させるという物。
焼き物の窯としては原始的で現代では
様々なリスクが高い為
あまり使われることはない。
と、とりあえず渥美古窯の簡単なおさらい。
この日、私は祝辞を述べるため
第一礼装の黒紋付羽織袴で参加した。
もちろんホテルのような
ヌクヌクした会場ではなく、
この日に限ってこの冬一番寒く感じ
極寒の北風が吹き荒れガチガチに
震えるなか野外で行われた。
そんな中、差し入れで頂いたのが
やや溶け出したアイスクリームだった。
溶け出したアイスクリーム=今日は暖かいと
脳がバグってきたから不思議だ。ありがたい。
参加者は総勢20名以上。
穴掘りを手伝っている方達や
お世話になっている関係者様、
リアル映画監督さんやら新聞記者さんも。
事細かに儀式の段取りが決められており
まず初めにまさかの国歌斉唱、
君が代のアカペラから始まり
いきなり笑いすぎて腹が痛くなった。
真面目にバカな事をやっているのか
バカな事を真面目にやっているのか
わからないけど、久々に笑った一日だ。
その他にも穴窯の穴から穴へ通過する儀式、
鏡開き、万歳三唱などなど
盛りだくさんで行われた。
最後は17名が穴窯の中から出てきて
外で待ち構えている私と一人一人握手をして
ご苦労様と饅頭を手渡し、労働者を
労うという意味不明な絵を撮った。
(ちなみにここでは手伝いの方を労働者と呼ぶ設定)
それにしても復元渥美古窯として本物の穴窯を
ここまで作った人物は恐らく彼だけでしょう。
崩落の危険もあり、また製品として
焼き上がる保証も一切ない。
激烈ハイリスク、ちょっとだけリターン。
地元の焼物でもあり文化、歴史でもあるから
応援したくなりますよねぇ。