ドミニカ共和国 | 豊かな自然と経済発展で注目を集めるカリブの島国【気になる世界の国々#5】
ドミニカ共和国の基本プロフィール
ドミニカ共和国はカリブ海に位置する島国で、ハイチと共にイスパニョーラ島を分け合っています。面積は約48,670平方キロメートル、人口は約1,100万人(2024年推定)。首都はサントドミンゴで、ラテンアメリカでも最も歴史のある都市の一つです。この国は美しいビーチ、多様な自然、豊かな文化、そして経済成長が注目される新興国の一つとして知られています。
なお、時差については、日本(東京)はドミニカ共和国(サントドミンゴ)より13時間進んでいます。例えば、日本が午後7時の時、ドミニカ共和国では同じ日の午前6時です。
カリブ海の交差点としての地理的重要性
ドミニカ共和国はカリブ海と大西洋に面し、カリブ地域における地理的要衝として、地域内の物流や観光において重要な役割を果たしています。
また、国内には豊富な自然資源があり、ニッケルや金の鉱業が主要な輸出産業を支えています。カリブ海沿岸は世界的な観光地として有名であり、特にプンタカナは美しいビーチと高級リゾートで多くの観光客を魅了しています。
スペインの影響とカリブの多文化共生
ドミニカ共和国が位置するイスパニョーラ島は、1492年にクリストファー・コロンブスが新大陸で最初に到達した島の一つとして知られ、スペイン植民地時代の影響を強く受けています。公用語はスペイン語であり、国民の多くがカトリックを信仰しています。一方で、アフリカや先住民であるタイノ族(アラワク族の一部)の文化も融合し、独自のアイデンティティを形成しています。特に音楽の分野では、メレンゲやバチャータといったリズムが国際的に評価されており、メレンゲは2016年にユネスコの無形文化遺産に登録され、国民の誇りとなっています。
経済の現状と主要産業
為替
ドミニカ共和国の通貨はドミニカ・ペソ(DOP)であり、2024年12月時点での為替レートは1米ドル(USD)=約60ドミニカ・ペソとなっています。
GDP
ドミニカ共和国はカリブ海地域で最も大きな経済を持つ国の一つで、GDPは約1,200億ドル(2024年推定)。GDP成長率は5.1%。世界に占める名目GDPの割合は約0.12%、購買力平価GDPでは約0.16%と非常に小さいことが分かります。
なお、2025年~2029年のGDP成長率は、5.0%, 5.0%, 5.0%, 5.0%, 5.0%となっています。画像はGDP成長率の推移です。
インフレ率と失業率
2024年11月のインフレ率は3.18%。
直近の失業率は5.3%。
人口動態
2024年時点の人口ピラミッドによると、ドミニカ共和国は典型的な発展途上国型の構造を示しており、若年層の割合が高いことが特徴です。特に、15歳から64歳までの労働年齢層が全人口の約65%を占めており、経済成長の推進力となっています。この層の豊富な労働力は、観光業や農業、サービス業などドミニカ共和国の主要産業において大きな強みとなっています。
また、0〜14歳の若年層が全人口の約25%を占めており、将来的にも十分な労働力を維持できる可能性が高いと考えられます。
一方で、65歳以上の高齢層の割合はまだ少なく、全人口の約7.7%程度に留まっていますが、今後の経済成長に向けた準備として、教育や医療体制のさらなる整備が求められるでしょう。
この人口動態は、ドミニカ共和国が「人口ボーナス期」のような状況にあることを示しており、適切な教育政策や雇用機会の創出を通じて、この優位性を最大限に活用できれば持続的な経済発展が期待されます。一方で、高齢化社会に備えた社会保障制度の強化も長期的な課題として浮上してくる可能性があります。
全体像はこちら。
主な輸出産業・品目
図はドミニカ共和国の経済活動および輸出品目を示したものです。
読み取れる内容をざっくりまとめていきます。
観光業と輸送関連
ドミニカ共和国の最大の外貨獲得分野は観光業で、輸出全体の約36.85%を占めています。特に、プンタカナなどのリゾート地は、北米やヨーロッパからの観光客を中心に人気が高く、カリブ海地域の観光の中核を担っています。輸送関連サービスも3.93%と一定の比率を占めており、観光産業と連動した成長を見せています。金(ゴールド)
金(Gold)は輸出全体の約5.92%を占めており、鉱業の重要な輸出産業となっています。金鉱の開発は国際市場において高い需要を持ち、外貨獲得の重要な手段となっています。農産物(バナナなど)
農業分野ではバナナや関連製品が農産物輸出の一部を構成しています。ちなみに、バナナ(Bananas and plantains)の輸出シェアは約1.02%です。
ドミニカ共和国の輸出は観光業が圧倒的に強く、農業や鉱業といった自然資源を基盤としながらも、医療機器や繊維産業といった製造業が成長を見せています。このバランスの取れた輸出構造は、観光を含むサービス産業が中心でありつつも、その他の産業が多様性を加えています。
汚職と法の支配
・Corruption Perceptions Index(腐敗指数)
Rank 108/180
・Rule of Law Index(法の支配指数)
Rank 86/142
ドミニカ共和国は、腐敗指数で180カ国中108位にランクインしており、汚職が依然として重大な課題となっています。特に、政治家や公務員の汚職が指摘されており、これが国民の政府に対する信頼を損なう原因となっています。
一方で、法の支配指数では142カ国中86位に位置しており、中程度の評価を受けています。司法制度は安定しているものの、法執行の公平性や効率性に課題が残っており、司法腐敗も依然として懸念されています。
イノベーションと平和度
・Global Innovation Index(グローバルイノベーション指数)
Rank 97/125
・Global Peace Index(世界平和度指数)
Rank 97/163
ドミニカ共和国は、グローバルイノベーション指数で125カ国中97位にランクインしており、イノベーション分野では遅れが見られます。この順位は、研究開発(R&D)への投資が低いことや、ICT(情報通信技術)インフラの整備が不十分であることが主な要因とされています。
世界平和度指数では、ドミニカ共和国は163カ国中97位と中程度の順位に位置しています。この順位は、ラテンアメリカ地域全体の治安状況や社会的安定度を反映しており、同地域内では比較的安定した国と評価されています。
一方、世界の殺人発生率の国別ランキング(2022年版)ではドミニカ共和国は人口10万人あたりに12.37人、ランキングは29位となっており、場所によっては深刻な治安問題を抱えているとも判断できそうです。
アメリカとのつながりでは…?
先ほども書いたように、ドミニカ共和国のGDP成長率は非常に高く、近年の成長率は平均5〜6%とラテンアメリカ全体の平均を大きく上回り、観光業や鉱業、建設業がその原動力となっています。しかし、同時にアメリカ依存型の経済構造が潜在的なリスクとして浮かび上がっています。
アメリカが占める割合の大きさとその影響
ドミニカ共和国の経済は、アメリカとの密接な関係に大きく支えられています。具体的には以下の通りです。
貿易:
輸出の約50%がアメリカ向けで、主要品目には医療機器、衣料品、バナナやカカオなどの農産物が含まれます。
輸入の約40%もアメリカからで、主な品目には機械類、燃料、化学製品が挙げられます。
観光業:
ドミニカ共和国への訪問客の約60%がアメリカ人であり、観光業収益の柱となっています。
外国直接投資(FDI)と送金:
外国直接投資の多くはアメリカ企業からのもので、自由貿易ゾーンや観光インフラ開発に流れ込んでいます。
アメリカ在住のドミニカ系住民からの送金が全体の**80%**を占めており、国内経済の重要な収入源です。
こうした背景から、アメリカの貿易政策や経済状況の変化は、ドミニカ共和国に直接的かつ広範な影響を与える可能性があります。
トランプ政権の政策がもたらすリスク
トランプ前大統領が再び大統領に就任した後、もし関税政策を強化する場合、以下のようなリスクが想定されます。
輸出品への関税:
アメリカ市場に依存する医療機器や衣料品が関税の対象となった場合、価格競争力が低下し、輸出産業が打撃を受ける可能性があります。ただし、過去のトランプ政権ではドミニカ共和国に特化した関税強化の事例は確認されていません。観光需要の低下:
アメリカ経済が保護主義政策の影響で減速した場合、アメリカ人観光客の数や消費額が減少し、観光業に悪影響を及ぼす可能性があります。ドミニカ共和国の観光業はアメリカ人観光客に大きく依存しており、この分野での影響は無視できません。投資環境の変化:
貿易政策が不透明さを増した場合、アメリカ企業からの投資が停滞するリスクがあります。自由貿易ゾーンや観光インフラ開発への投資が鈍化すれば、経済成長が減速する可能性があります。ただし、過去のトランプ政権の政策がドミニカ共和国の投資環境に直接的な悪影響を及ぼしたという証拠は限定的です。
終わりに
ドミニカ共和国は観光業や鉱業を中心に高い経済成長を遂げつつも、アメリカ依存型の経済構造にリスクを抱えています。アメリカの政策変更が与える影響は無視できませんが、貿易の多角化や国内産業の強化を進めることで、持続可能な成長が期待されます。カリブ海地域の要として、ドミニカ共和国の今後の動向に注目です。