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インドネシア | 多様な文化と経済発展で注目される島国【気になる世界の国々#4】

インドネシアの基本プロフィール

インドネシアは、17,000以上の島々から成る東南アジア最大の島国で、人口は約2億8,000万人(2024年推定)に達し、世界第4位を誇ります。公用語はインドネシア語で、多民族・多文化社会を形成しています。首都はジャカルタですが、新首都「ヌサンタラ」への移転が進行中です。豊富な天然資源、戦略的な地理的位置、急成長する経済により、世界の注目を集めています。

なお、時差については、日本(東京)はインドネシア(ジャカルタ)より2時間進んでいます。例えば、日本が午後7時の時、インドネシアではちょうど午後5時です。


海洋国家がもたらす恩恵と課題

インドネシアは、インド洋と太平洋を結ぶ戦略的な位置にあり、世界貿易の重要なルートであるマラッカ海峡を擁しています。このため、貿易拠点や海洋物流のハブとして機能しており、港湾インフラの発展が経済成長に寄与しています。また、豊富な天然資源、特に石炭、パーム油、天然ガス、ニッケルなどの輸出が主要な外貨獲得源となっています。一方で、地震や津波など自然災害のリスクも高く、防災インフラの整備が課題です。


統一と多様性を象徴する社会

インドネシアは、古代から交易の要衝として栄え、多様な文化と宗教が交錯してきた歴史を持っています。東南アジアの海上交易ルートに位置することで、「香辛料諸島」として知られるモルッカ諸島など、特に香辛料貿易が盛んでした。これにより、インドや中国、アラブ、ヨーロッパ諸国の商人が訪れ、インドネシアの経済と文化に深い影響を与えました。

宗教文化の交錯
交易の中で、ヒンドゥー教や仏教が古代から広まり、8世紀から9世紀にはボロブドゥール寺院やプランバナン寺院といった壮大な宗教建築が建設されました。その後、13世紀以降にはイスラム教が広まり、現在では人口の約87%がムスリムを占めています。一方、バリ島ではヒンドゥー教、東ヌサ・トゥンガラ州ではキリスト教が広まり、多様な宗教が共存する社会を形成しています。

植民地時代とその影響
16世紀以降、ヨーロッパ諸国がインドネシアの香辛料貿易を支配しようと競争を繰り広げました。特に、オランダが1602年に東インド会社を設立し、インドネシアの香辛料産業を独占しました。その後、オランダは植民地支配を強化し、インドネシア全域を統治しました。この時期には、プランテーション農業が発展する一方で、植民地政策による搾取と弾圧が行われ、インドネシアの人々に多大な苦難を与えました。

独立への道
第二次世界大戦中、日本の占領下に置かれたことでオランダの支配が一時的に途絶えました。この期間にインドネシアの民族主義運動が高まり、1945年8月17日にはスカルノとハッタが独立を宣言しました。その後、インドネシアはオランダとの独立戦争を経て、1949年に正式に独立を果たしました。

「バンチャシラ」の理念
独立後、インドネシアは宗教や民族の多様性を調和させるために、「バンチャシラ(五原則)」という国民統一の理念を掲げました。この五原則は、1. 神への信仰、2. 公正で文明的な人道主義、3. インドネシアの統一、4. 民主主義、5. 社会的公正を柱としています。この理念のもとで、多様な文化や宗教が共存しながら国を統一する仕組みが形成されました。

多文化共生の現代社会
現在のインドネシアは300を超える民族と700以上の言語を持つ多文化国家でありながら、インドネシア語を共通語とすることで国民の一体感を育んでいます。また、多様な文化遺産が観光や芸術の分野で注目を集め、経済や国際的な文化交流においても重要な役割を果たしています。

インドネシアの歴史は、多様性を受け入れ、それを統一することで発展してきました。このような背景が、現代インドネシア社会の多文化共生と強い国民意識の基盤となっています。


経済の現状と主要産業

為替

インドネシアの通貨であるインドネシア・ルピア(IDR)は、2024年12月時点で1ドル=約15,500インドネシア・ルピアの為替レートとなっています。

出典:Investing.comより

GDP

インドネシアのGDPは約1.3兆ドル(2024年推定)で、ASEAN諸国の中で最大規模を誇ります。GDP成長率は5.0%。 世界に占める名目GDPの割合は約1.3%、購買力平価GDPでは約2.5%です。

なお、2025年~2029年のGDP成長率は、5.1%,  5.1%,  5.1%,  5.1%, 5.1%となっています。画像はGDP成長率の推移です。

International Monetary Fundのデータ

インフレ率と失業率

2024年11月のインフレ率は1.55%。

出典: Trading Economicsより

直近の失業率は4.91%。

出典: Trading Economicsより

人口動態

出典:PopulationPyramid.net

2024年時点の人口ピラミッドによると、インドネシアは典型的な発展途上国型の構造を示しており、若年層の割合が高いことが特徴です。特に、15歳から64歳までの労働年齢層が全人口の大部分を占めており、経済成長の推進力となっています。この層の豊富な労働力は、製造業や農業、サービス業などの産業において大きな強みとなります。
また、0〜14歳の若年層が全人口の約25%を占めており、インドネシアは将来的にも十分な労働力を維持できる可能性が高いと考えられます。
一方で、65歳以上の高齢層の割合は約6%とまだ少ないものの、緩やかな高齢化が進行していることが見て取れます。

この人口動態は、インドネシアが「人口ボーナス期」にあることを示しており、適切な教育や雇用政策を通じて、この優位性を活用できれば持続的な経済発展が期待されます。一方で、高齢化に備えた社会保障制度の整備も長期的な課題となっています。

全体像はこちら。

出典:PopulationPyramid.net

主な輸出産業・品目

出典: Harvard Growth Lab - Atlas of Economic Complexity

図はインドネシアの経済活動および輸出品目を示したものです。

  • 石炭と天然ガス
    インドネシアの最大の輸出品目は石炭(Coal)で、輸出全体の約14.28%を占めています。また、液化天然ガス(Petroleum gases)は3.19%と、エネルギー関連産業が輸出の中核を成しています。これらのエネルギー資源は、アジア諸国を中心に高い需要があります。

  • パーム油と木材製品
    インドネシアは世界最大のパーム油(Palm oil)生産国であり、輸出全体の11.89%を占める重要な品目です。さらに、パーム由来の製品であるステアリン酸(Stearic acid)やココナッツ製品(Coconut & palm)が続きます。また、木材加工製品である合板(Plywood)や化学パルプ(Chemical woodpulp)も輸出の柱となっています。

  • ニッケルとフェロアロイ
    ニッケル関連製品もインドネシアの輸出の重要な位置を占めています。特にニッケル鉱石(Nickel mattes)やフェロアロイ(Ferroalloys)は、電池やステンレス製品の原料として世界的に需要が高まっています。

  • 自動車および部品
    輸出品目には完成車(Cars)や部品・アクセサリー(Parts and accessories)も含まれており、自動車産業が成長していることを示しています。

インドネシアの輸出は、エネルギー、農業、鉱業、製造業と多様な分野にわたり、国内の資源と労働力を活かしたバランスの取れた輸出構造を持っています。特に石炭やパーム油などの資源に依存する一方で、製造業や加工産業の比率も増加しつつあります。


汚職と法の支配

・Corruption Perceptions Index(腐敗指数)
Rank 115/180
・Rule of Law Index(法の支配指数)

Rank 68/142

インドネシアは、腐敗指数で180カ国中115位にランクインしており、汚職が依然として大きな課題となっています。特に地方政府や行政機関における透明性の欠如が指摘されており、これが国民の政府に対する信頼を損なう一因となっています。政府は腐敗防止機関の強化や電子政府化を通じた透明性向上に取り組んでいますが、まだ道半ばと言えます。

一方で、法の支配指数では142カ国中68位と中位に位置しており、司法制度や法執行の信頼性において一定の評価を得ています。しかしながら、司法腐敗や法執行の公平性の確保にはさらなる改善が求められています。


イノベーションと平和度

Global Innovation Index(グローバルイノベーション指数)
Rank 54/125
Global Peace Index(世界平和度指数)
Rank 48/163

インドネシアは、グローバルイノベーション指数で125カ国中54位にランクインしており、新興国の中でも着実にイノベーション分野で進展を見せています。この順位は、特に急成長するデジタルエコノミーやスタートアップ企業の増加、政府によるICT(情報通信技術)の推進政策が寄与しています。

一方、世界平和度指数で163カ国中48位に位置しており、東南アジア地域内では比較的高い安定性を誇ります。国内では一部の地域で民族や宗教間の緊張が報告されていますが、全体として政治的安定性が確保されており、治安も比較的良好です。


インドネシアのビジョン2045

ビジョン2045の概要

Golden Indonesia 2045とは、インドネシアが独立100周年を迎える2045年に向けて策定された長期的な国家発展ビジョンです。この計画は、持続可能で繁栄し、競争力のある国への成長を目指し、以下の具体的な目標を掲げています。

  • 世界で上位5位の経済大国になることを目指す

  • 一人当たりGDPを約3万ドルに引き上げ、中所得国から高所得国への移行を実現する

  • 持続可能な開発と環境保護を推進する

この計画には幅広い分野にわたる施策が含まれていますが、今回はその中でも「地域間格差」を取り上げます。

インドネシアの地域間格差と経済発展目標

インドネシアでは、地域ごとの経済発展にばらつきがあるため、特にジャワ島以外(Luar Jawa)や東部地域(KTI)の成長を強化し、全体のバランスをとることを目指しています。これにより、経済の安定と持続可能な成長を実現しようとしています。

Golden Indonesia 2045より抜粋

パプア地域は豊富な天然資源を活用しながら農業生産を拡大することで、国の食料安全保障の基盤となることを目指しています。

一方で、マルクやバリ・ヌサトゥンガラ地域は国際観光地としてのポテンシャルをさらに高めるとともに、漁業資源を持続可能な形で利用することで、観光業と漁業の連携による経済基盤の強化を図っています。

スラウェシは食料産業の中心地としての役割を果たし、特に東部地域への物流や貿易の玄関口として重要な拠点となります。農業技術や輸送インフラの強化が進められ、地域の競争力がさらに高まる見込みです。

また、カリマンタンでは製造業とエネルギー供給の拠点としての機能を発展させ、鉱物資源を活用したエネルギー産業が成長の柱となる計画です。

さらに、スマトラ地域は新興産業の育成とともに、アジア地域へのゲートウェイとしての機能を強化することで、国際競争力を高めることを目指しています。

一方で、ジャワ島は既存の都市化された環境を最大限に活用し、商業・サービス産業の中心地として国内外のビジネスのハブをさらに強化していく方針です。

これらの地域ごとの成長戦略は、それぞれの強みを活かしつつ、全国的なバランスの取れた発展を実現するための重要な要素です。このように、インドネシアは地域間の役割分担を明確にしながら、持続可能な経済成長の実現に向けた道筋を描いています。


終わりに

インドネシアは、その地理的優位性、多様な文化、豊富な資源、そして成長を続ける経済によって、東南アジアのみならず世界的にも重要な地位を築いています。若年層の多い人口構造と豊富な労働力は、インドネシアの経済を支える原動力であり、人口ボーナス期を最大限に活用することで、さらなる発展が期待されます。

一方で、汚職や環境問題、インフラ整備の遅れなどの課題も抱えていますが、これらに対応するための取り組みも進行中です。特に、デジタル化や再生可能エネルギーへの移行といったイノベーションの分野では、大きな可能性を秘めています。

多様性を調和させた国民統一の理念「バンチャシラ」のもと、インドネシアは安定した成長と持続可能な未来を目指しています。これからのインドネシアの発展は、東南アジア全体の繁栄に寄与するだけでなく、国際社会においても重要な影響を及ぼすでしょう。インドネシアはその可能性を活かし、未来に向けた持続可能な成長を遂げるべき新興国の一つとして注目されています。


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