【2022年版第5回】確定給付企業年金の損しない受け取り方、税金を考える
退職金・企業年金コンサルティングチャンネルの講師をしております大森祥弘です。
今回は企業年金の損しない受け取り方の5回目ということで、確定給付企業年金にフォーカスしての損しない受け取り方を解説してまいります。
前回の確定拠出年金編が結構、好評頂きましたのでまだご覧になっていない方はこちらもあわせてご覧ください。
YouTube動画はこちらからご覧頂けます!
【2022年版第5回】確定給付企業年金の損しない受け取り方を解説します(繰下げ、NISA活用)
前回の確定拠出年金の損しない受け取り方はこちら!
確定給付企業年金は年金受け取りだと受け取り総額が増える
確定拠出年金との対比で考えると分かりやすいのですが、確定拠出年金の年金支払いとは60歳に達した若しくは自分が受け取ると決めた時期にたまっている一時金原資(運用している運用商品を現金化した現金)を10年ですとか15年ですとか決まった年数にわたって単に分割支給するものです(だいぶ簡略化していますが、一般の方向けということで)。
確定給付企業年金は10年や15年と勤務先の制度設計によって違いますが、全社共通なものは年金給付利率という考え方が採用されている点です。
例えば、定年時に1,000万円を一時金でもらえるとしましょう。
これが年金で受け取る場合、例えば年金給付利率が2.0%の場合は複利で2.0%の利息が付いて年金として支給されることになります。
ですので、金額ベースで考えると一時金と年金とどちらで受け取るのが損しないかというと、年金で受け取るほうが損しないと断言できます(支給額だけの視点に限った話です)。
この年金給付利率の有無、後で解説します繰下利率の有無、有期年金・終身年金の導入有無により支給額ベースで考えると確定給付企業年金は確定拠出年金と比較して年金受け取りの場合、「損しない」と言えるのですがFPの先生や社労士の先生もここまでご存知な方は稀です。
結果、確定拠出年金の知識、考え方で確定給付企業年金の受け取り方の損得を考えてしまっているようでこの2年近くのyoutube運営で頂くコメントから想像するに結構損している方は多いと思えます。
(税金や社会保険料負担は年金受け取りの方が重たいというのはもちろんですので、その点は第6回の動画でも触れたいと思います)。
確定給付企業年金の旨みは繰り下げ
「繰り下げ」流行ってます。
公的年金の繰り下げが75歳までできるようになったためか、繰り下げが流行ってます。よく視聴者の方から繰り下げに関してご質問頂きます。
この確定給付企業年金の繰り下げに関して解説した動画は過去動画ですが、バッチリ解説していますので企業年金の繰り下げを知らない方はぜひ過去動画もご覧ください。
繰り下げのメリットを少し紹介すると、一時金で受け取る場合も受取額が増える点、繰り下げ中に亡くなった場合でも遺族に遺族年金(または遺族一時金)で支給されるという点です。
*ただし、繰り下げは各企業、仕組みが若干違いますので実際に勤務されている企業の企業年金の仕組みを確認してみてください。
公的年金は繰り下げると支給額は増えますが、亡くなるまでの期間が短くなりますので支給額のトータルで考えると悩みどころですが確定給付企業年金の場合は第1回の企業年金の損しない受け取り方で解説しているように終身年金や有期年金でなければあらかじめ生存に限らず、年金を支給する期間が確定していますので損しません。
つまり、終身年金か有期年金が導入されておらず、手元の当面の資金に困っていない場合は70歳以降の確定給付企業年金の支給額を増やすために繰り下げるも手ということです。
ただ、繰り下げない方が良い場合も稀にですがあります。
繰り下げると一時金が退職所得控除からはみ出る場合は繰り下げず、受け取り→つみたてNISA
繰り下げにより、「一時金で受け取る場合も支給額が増える」と解説しました。逆に言いますと、繰り下げることで一時金で受け取る支給額の合計が勤務先の退職金や確定拠出年金の一時金との合計で、退職所得控除の枠をオーバーしてしまう(課税される)場合は受け取ってしまい、つみたてNISAにするというのも手です(どれだけはみ出るかにもよりますが)。
働き続ける収入、公的年金の額、企業年金の額合計するとそれなりの収入→繰り下げず、つみたてNISAか繰り下げて一時金受給
具体例解説は第6回の企業年金の損しない受け取り方にしますが、退職金や企業年金の一時金受け取り以外(要するに年金で受け取る)場合はしっかりと課税されます。
また企業年金の収入以外の収入(再雇用、定年延長、業務委託なんでも良いですが働いて得られる収入)、公的年金の収入と合算のうえ国民年金保険料や住民税は決まります。
ですので、「あれ?積み上げてみたらそれなりの収入になるかも」といった方は当たり前なのですが、それなりの収入になるため課税・社会保険の負担もそれなりになります。
ですので、繰り下げ後に一時金でもらう(ただし、退職所得控除の枠が余っている方)か繰り下げずに受け取り、NISAで安定運用という方法もあります。
確定給付企業年金は繰り下げ→年金or一時金受け取りが最強
このあたりは一人一人色々と違うと思いますが、確定拠出年金を一時金で受給し、確定給付企業年金は繰り下げて、繰り下げ終了時に退職所得控除の枠が余っている場合は一時金で一部を受け取り、残りを年金で受け取るといった受け取り方が一番損しないかもしれません。
(あとは何度も言いますが、有期年金、終身年金の場合は繰下げせずに年金受け取り)
おわりに
今回は確定給付企業年金の受け取り方といった観点で解説しましたがいかがだったでしょうか。所得税や住民税に関しては確定拠出年金と同じですので、確定拠出年金編の前回の動画も併せてご覧頂ければと思います。
最後までご覧頂きありがとうございました!