iDeCo VS 企業型確定拠出年金(選択制DC)!社会保険料削減&税金節税実質リターン徹底解説(コメント回答解説)
退職金・企業年金コンサルティングチャンネルを運営しております大森祥弘です。今回はYouTubeの視聴者さんから頂いた質問について、深掘り解説していきます。
視聴者さんから「企業型DC(選択制DC)のほうがiDeCoより得では?」
視聴者さんからの質問は次のとおりです(そのまま掲載)。
ちなみに質問のきっかけになった動画は次の動画です。
今回の質問に関して、次のコメント回答・解説動画で解説しております。
このnoteの解説とあわせてぜひご覧ください。
YouTube動画はこちらからご覧頂けます
iDeCo VS 企業型確定拠出年金(選択制DC)!社会保険料削減&税金節税実質リターン徹底解説(コメント回答解説)
今回の動画まとめ
・視聴者さんからの質問をわかりやすく説明
・私と視聴者さんの認識相違ポイント(過去分と将来分)
・選択制DCとは?(色々ある企業型DC)
・iDeCoと選択制DCの仕組みの整理→過去動画紹介
・iDeCo vs 選択制DC
・選択制DCは社会保障の給付が減るリスクが気になる
・選択制DCがある場合の最善策(間を取るが吉)
視聴者さんからの質問を補足説明します
質問してくれた視聴者さんは結構お詳しい方で、iDeCoで信託報酬が低いファンドを購入するより、企業型DCのうち選択制DCという仕組みであれば厚生年金保険料や健康保険料といった社会保険料、所得税や住民税が軽減できるだろうからその軽減できた分を確定拠出年金の積立投資のリターンに上乗せすれば、iDeCoは年率8~9%位のリターンを得ることができなければ企業型DCのほうがパフォーマンスが良いと言えるのではないか?といったことを言いたいのだと思います。
「企業型DCのうち選択制DC」というのがポイントなのですが、文章で伝えるのが難しいのでぜひ今回の配信動画の解説や以前、選択制DCを取り扱った過去動画がありますのでそちらをあわせてご覧ください。
【企業型確定拠出年金】選択制DCとマッチング拠出の違いを少々解説します(コメント回答・解説)
【誰も言わない】企業型確定拠出年金で実は損するケースを解説します(企業型DC・選択制DC)
私と視聴者さんの認識相違ポイント(過去分と将来分)
ここまで、選択制DCの説明をしました。これで、視聴者さんの質問の趣旨を理解頂いたとしまして次に、私と視聴者さんで認識が違う(多分、誤解されている)点を解説します。
ズバリ、私は転職する前の勤務先での企業型DCの資産を移換するのはiDeCo一択と考えていますがこれは転職前の分です(私のような業界人だと”過去分”と言います)。
転職する前の資産(移換する資産)は選択制の仕組みは関係ありませんので、安い信託報酬のファンドが購入できるiDeCoを自分で開設するのが無難で、転職の都度、自分のiDeCo口座に企業型DCから移換することで長期投資の投資期間における手数料を最低水準に抑える(その分実質リターンが増加する)ことができると考えています。
ただ、転職した後に企業型DCに加入する場合には選択制DCの仕組みであれば、選択制の仕組みを利用して会社の掛金に上乗せして自分で企業型DCの掛金を上乗せするか、月2万円まで(DB導入企業の場合は2024年12月までは12,000円)iDeCoを開設し企業型DCと同時加入する形で掛金拠出しiDeCoで積立投資をするかというのはどちらが良いというのはケースによるかなと考えています。
*この転職した後の企業型DCは”将来分”と言ったりします。
(後述しますが、選択制DCがiDeCoに勝るには企業型DCであってもある程度の割安な信託報酬ファンドであることが必要になります)。
また、特に引っかかるのが選択制DCのデメリットを解説した過去動画でも取り上げていますが社会保険料が減るということは給付が減ります。
シンプルに、払っている保険料が安ければ、保険金も少ないですよね。皆さんが加入している生命保険と同じです。
今回の動画では全て解説しきれなかったのですが、選択制DCの仕組みを利用して浮いた分と育休の際に支給申請する育児休業給付金の支給総額の減額を比較すると育児休業を始め、失業時の雇用保険、育休その他の介護休業給付、病気休職の際に利用する傷病手当金、当然ですが将来の厚生年金保険の年金額と社会保険料を減らすことによる影響が大きいのでその辺りとの損得をどう考えるかというのが私は気になります。
ただ、まとめると視聴者さんとの違いは私は”過去分”を念頭に動画解説したのですが、視聴者さんは”将来分”を念頭に意見を寄せていただいたのかなと思われます。
この点、このnoteでも触れておきます。
iDeCo vs 選択制DCを具体的に試算
転職した後、企業型DCに選択制DCの仕組みで掛金を自分で上乗せするのと、iDeCoに自分で加入して運用するのと実際にどう損得が出てくるか試算してみましょう。
試算の前提条件
iDeCoだったらどうなるか、試算の前提
2022年の10月から企業型DCが導入されていても、iDeCoには自分で加入できます(同時加入制限の緩和がされています)。
そのため、現時点では企業型DCが導入されている企業でも事例のケース(企業型DCのみ導入されている会社員)の場合、月2万円まで拠出することができます。言い換えると、2万円までしか拠出できないのです。
iDeCoを利用しない場合の所得税、住民税の額を計算
まず、iDeCoの利用効果のビフォーアフターを比較するためにiDeCoを利用しない場合の所得税額、住民税の額を算出します。
給与収入は収入の大小によって税率が変わる仕組みです。
ステップとして、まず、収入金額600万円を給与所得控除の表に当てはめます。
(参考)下のリンクの給与所得の計算の項目を参照してください。
年収は600万円なので、収入金額×20%+440,000円=給与所得控除の額の行を参照します。計算すると164万4千円になります(これを給与所得控除の額と言います)。
これを収入金額の600万円から引くと、給与所得は4,356,000円になります。
次のステップとして、先ほどのリンクの所得税額の計算を参照し所得税額は所得税の税額表から、4,356,000円×20%-427,500円=443,700円
となります。
また、住民税(市町村民税と道府県民税の合計)は先ほどの課税所得4,356,000円に10%を乗じた額が所得割となるので、435,600円。
均等割5,000円を加えて440,600円が住民税の年額になります。
iDeCoに月額2万円拠出する場合の所得税、住民税の額を計算する
先ほどの給与所得4,356,000円はiDeCoの掛金支払いによる小規模企業共済等掛金控除を考慮していません。
次のステップとして、iDeCo掛金分を給与所得からマイナスします。
月2万円の掛金を拠出したとして年で24万円になります。
この全額が所得控除になるので、4,116,000円が課税所得金額になります。
これに税率20%を当てはめて、控除427,500円を差し引き、395,700円が年間で支払う所得税になります。
住民税(市町村民税と道府県民税の合計)は先ほどの課税所得4,116,000円に10%を乗じた額が所得割となるので、411,600円。
均等割5,000円を加えて416,000円が住民税の年額になります。
まとめると、年収600万円の人がiDeCoに月額2万円拠出した場合には
所得税は443,700円−395,700円=48,000円
住民税は440,600円−411,600円=29,000円
結果、税金は77,000円浮きます。
選択制DCを利用しない場合の社会保険料を算出
iDeCoについて、試算してみましたので次に選択制DCを利用した場合を考えてみます。
こちらもiDeCo同様、ビフォーアフターの比較のために選択制DCを利用しなかったら社会保険料、税金がどうなるのか計算しておきます。
ここで、1つ前提を追加します。選択制DCの具体的な計算を進めていく前提として年収600万円の内訳を考える必要があるので月給40万円、賞与は夏冬トータル年3ヶ月(120万円)としましょう。
ここまでが選択制DCを利用しない場合の厚生年金保険料、健康保険料の額になります。
↓参考 標準報酬月額等級表(ここに当てはめます)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r5/ippan/r50213tokyo.pdf
次に所得税、住民税も計算しておきますが先ほどのiDeCoを利用しない場合の所得税、住民税の額と同じですので次のようになります。
所得税額は443,700円、住民税は440,600円となります。
iDeCoと揃えて月額2万円、選択制DCを利用し積み立て
では、ここからは選択制DCの利用により社会保険料、税金が具体的にどうなるか計算してみます。
今回の例では42,000円まで自分で掛金を拠出できます(収入を減らせます)。
ただ、今回は比較ということで掛金はiDeCoと同じく2万円にします。
選択制DCに月20,000円を拠出する場合は毎月の収入が40万円−20,000円=380,000円になります。
この380,000円から保険料を算出すると27等級から26等級になります。
したがって、厚生年金保険料は34,770円、健康保険料は19,000円になります。つまり、差し引き
厚生年金保険料は37,515円−34,770円=2,745円
健康保険料は20,500円−19,000円=1,500円
選択制DCに月20,000円拠出すると社会保険料は月4,245円削減できたことになります。
次に所得税と住民税額を求めます。
所得税はiDeCoの説明と考え方は同じなのですが、所得控除ではなく収入金額が減少します。
本来の収入金額である600万円から選択制DCの掛金を選択した(収入を減らした)ので、600万円から月2万円の12ヶ月分、つまり24万を差し引いた576万円が収入金額になります。
あとは粛々と所得税を計算しますが、iDeCoと違い小規模企業共済等掛金控除の該当にはなりません。
なお、住民税は先ほどの課税所得4,168,000円に10%を乗じた額が所得割となるので、416,800円。均等割5,000円を加えて421,800円が住民税の年額になります。
選択制DCの利用により、どのくらい所得税と住民税が減少したかといったことを考えるのであれば、
所得税額は443,700円−406,100円=37,600円
住民税は440,600円−421,800円=18,800円
合計で、56,400円税金が浮きました。
選択制DCにより社会保険料、税金が浮いた分を利回りに含めると?
社会保険料の減少分、税金の減少分をiDeCo、選択制DCそれぞれのリターンにオンして実際、今回のケースではiDeCoと企業型DC(選択制DC)のどちらが損得か見てみましょう。
Chat GPT-4でシミュレーションしたプロンプトは次のとおりです。
出力された回答は次のとおりです。
Chat GPT-4による計算では、投資期間を20年と仮定した場合に497,253円企業型DC(のうち、選択制DC)のほうが得ということがわかりました。
*この試算では転職前の企業型DCを移換したらまでは考慮に入れていませんのでご注意ください(これはこれで、時間があれば今度やってみようかな、、)。
おわりに 〜間を取るが吉〜
ということで、今回のnoteも有料級な雰囲気で動画の準備に結構時間を要したのですがいかがだったでしょうか?
便利な世の中になり、生成AIを利用してシミュレーションした感想として
・選択制DCの仕組みは社会保険料の減少に伴う社会保障給付の減少について全部織り込み済みだ!という場合は選択制DCも良いと思うのですが企業型DCの運用商品の信託報酬がiDeCoと比べ高いと選択制で浮いた分より長期の投資期間で控除される信託報酬の大小次第では選択制DCを利用しなくても実はiDeCoのほうがリターンが大きいといったケースがある気がしました。
*YouTubeでこの辺り分析して、どのくらい視聴ニーズがあるのかわかりませんが時間ができたら(いつできるのか・・)、損益分岐点など計算してみると面白そうだなと思いました。
・私だったら間を取ることを提案したいと思います。具体的には月2万円はiDeCo、残りは選択制DCといった具合にまずは信託報酬の低いインデックスファンドの購入機会を優先するべきなのかなと思います。
そして、給与が増加して選択制DCを利用してさらに上乗せする余裕ができたら上乗せするといった具合が良いのかなと思います。社会保険料の削減に伴う社会保障給付の減少を最小限にできますので。
ということで、今回は以上にしたいと思います。
最後までご覧頂きありがとうございました。
*もし、このnoteで紹介している動画や過去動画の内容でわからないことがありましたら他の方の参考にもなりますので勇気を持ってYouTubeにて動画のコメント質問をお寄せ頂けますと嬉しいです。