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【法改正対応】企業年金の他制度掛金、わかりやすく解説します

YouTubeチャンネル退職金・企業年金コンサルティングチャンネルを運営しております大森祥弘です。

さて、2024年12月から企業年金の法改正がいくつか施行、仕組みが変わります。

なかでも個人の方に影響があるのが他制度掛金相当額という仕組みの導入です。

企業型DCの掛金がより拠出できるようになったり、iDeCoの掛金上限が12,000円から20,000円になる人がいたり、iDeCoに加入しているのに掛金が拠出できなくなる人が生じます。

先に業界関係者として個人の皆さんや企業の総務、人事担当者の皆さんに謝っておきます。

私がこの企業年金というニッチな、難しい分野に足を踏み入れてからまもなく15年以上経ちますがこんなにわかりづらい&個人に影響する仕組みが導入されたのは初めてです。

私が1日厚生労働大臣を拝命した場合、即刻、元に戻します。

「ついに来たか…2024年12月が…」

そんな気持ちです。
YouTubeコメントが山ほど来るのではないか…

やりましょう、解説。みなさんにわかりやすい解説。
(覚悟を決めています…)

他制度掛金とはなんぞや?

みなさんの勤務している企業が確定給付企業年金を導入している場合、確定給付企業年金の1人あたりの掛金っていくらか知ってますか?

ありません。

えっ!?って思いますよね。

確定給付企業年金って、将来、いくらもらえるか決まっている企業年金制度です。

名前のとおり、確定(決まってる)、給付(いくらもらえるか)です。

この将来もらえる額を計算するにあたり、言い換えればいくら積み立てておけば良いか、どのくらいの期間、どのくらいの利回りで運用したら良いのかといったことを考えるのですが確定拠出年金と違い1人1人それぞれの口座があるわけではありません。

会社で1つの口座といったイメージを持ってください。そうすると、その口座に入金する掛金というのは1人1人の口座にというより、会社の口座に加入者全員分という発想で掛金が拠出されます。

でも、企業型確定拠出年金って確定給付企業年金が実施されている企業の場合、1ヶ月あたりの掛金上限は27,500円って決まっているんですよ。

確定給付企業年金が導入されていなければ、1ヶ月あたりの企業型確定拠出年金の掛金上限は55,000円です。

差し引けば、27,500円は確定給付企業年金の分と言えますよね。でも、これってアバウトなんです。

確定給付企業年金って、会社によっていくらもらえるかは様々です。我々、業界人は給付水準とか言ったりします。

60歳で月1万円もらえる確定給付企業年金もあれば、月10万円もらえる確定給付企業年金法もあります。

でも、名前は同じ確定給付企業年金です。導入されていれば、企業型確定拠出年金の掛金上限は1ヶ月あたり27,500円が限度です。

確定給付企業年金の給付水準が違ってもこの企業型確定拠出年金の掛金上限が27,500円ってなんか変ですよね?というのがきっかけです。

なぜ27,500円なんですかというのは省略しますが、この金額がずっと見直されてこなかったわけです。

それで見直すにあたり、確定給付企業年金を27,500円と一律せずに給付水準により企業型確定拠出年金の掛金上限を変えましょうという仕組みが導入されます。

これにあたり、確定給付企業年金を導入している企業は自社の確定給付企業年金を他制度掛金相当額という仕組みで評価したらいくらになるのか、社員の皆さんにお知らせしなければなりません。
(既に公表されているはずですがみなさん知っていますか?)

例えばですが確定給付企業年金の他制度掛金相当額が1万円だった場合、従前は企業型確定拠出年金の掛金上限27,500円までだったところ2024年12月からは45,000円が上限になります。

総枠は55,000円で変わらずです。

iDeCoは2万円まで引き上げも

iDeCoは従前、確定給付企業年金が導入されていた場合は確定給付企業年金の給付水準に関わらず1ヶ月あたり12,000円が上限でしたが2万円が上限になります。

iDeCoに加入できない場合も

一方、従前はiDeCoに加入できたのに2024年12月以降はiDeCoに加入できない場合も起こります。

確定給付企業年金の他制度掛金相当額が55,000円以上の場合は総枠の55,000円を超えますのでiDeCoに加入しても掛金拠出できる枠がありません。

従前は12,000円と固定でしたがこれができなくなります。企業型確定拠出年金の場合は経過措置が設けられており、2024年12月から掛金が変わるというわけではありません。
(企業型DCの経過措置の話はまた別のnoteで私の頭の整理も兼ねて書こうかなと思っています)。

しかし、iDeCoは経過措置がなく2024年12月時点で勤務先の確定給付企業年金の他制度掛金相当額が55,000円以上と評価されてしまった場合は掛金拠出ができなくなり運用指図者になることになります。

掛金拠出ができていた過去の期間の資産は運用できますが、新たに掛金拠出して毎月商品購入して積み立てていくことができなくなります。

法改正のメリット

他制度掛金相当額の話、ついてこれますか?

この難しい仕組み、メリットがないといけませんよね。ただ難しいだけでは困ります。

メリットは次のとおりです。

・確定給付企業年金の給付水準が低い場合、これまで27,500円と一律評価されていた結果、企業型確定拠出年金の1ヶ月あたりの掛金拠出額は27,500円だったがこれが引き上がる(より多く企業型確定拠出年金の掛金を拠出できる)

・確定給付企業年金の給付水準が低い場合、これまで1ヶ月あたり12,000円がiDeCoの掛金上限だったが20,000円まで引き上がる

法改正のデメリット

デメリットのある法改正ってなんだか変なんですが、デメリットあります。

・確定給付企業年金の給付水準が高い場合、企業型確定拠出年金を導入している企業だとこれまで一律、27,500円と評価されていたが27,500円を超える場合もある。55,000円の総枠に収めるため、企業型確定拠出年金の1ヶ月あたりの掛金上限を27,500円から引き下げないといけなくなる場合がある。
(企業型確定拠出年金の掛金額が減るかもしれない)

・確定給付企業年金の給付水準が高い場合、iDeCoの掛金は一律12,000円を上限とされてきたが確定給付企業年金の他制度掛金相当額を算定したら総枠の55,000円に収めるためにiDeCoの掛金を引き下げる、または拠出できなくなるケースが生じる。
(iDeCoの掛金が減る、またはiDeCoに加入しているのに掛金0円となり加入者から運用指図者にならざるを得ないケースが生じる)。

視聴者さんから寄せられたわかりづらい事例

YouTubeの視聴者さんからつぎのような質問をいただきました。

転職先の企業が確定給付企業年金だけ実施(企業型確定拠出年金なし)で、給付水準が高いケースです。

この場合は転職前の企業型DCの資産がそれなりにある前提になりますが、次の2つのいずれかになります。

①iDeCoに移換
②企業年金連合会に移換

注 その他、転職先の確定給付企業年金に移換という手法も法的にはありますが実務的には滅多にないと思ってください(理由は機会があれば補足します)。

①iDeCoに移換が一義的な選択肢になりますが、加入できません。iDeCoに移換するのに加入できないってどんな話ですか?とツッコまれそうですが、加入者にならず運用指図者になります。

新たに掛金拠出をして積み立てていくことはできませんが、企業型DCの資産を移換して過去に積み立てた分を運用し続けるということはできます。

②企業年金連合会に移換という手法もありますが、選択される方は多くないと思いますので割愛します。

この視聴者さんの事例、私もちょっと混同してしまったのですがiDeCoに加入はできませんが移管して運用指図者にはなれます。 

コールセンターの担当者の方がこの話についてこれるかというと、金融機関の人ではありませんが自信がありません。伝えて理解させられる自信もありません。

なにしろ、ややこしいんですよ。

iDeCoにも経過措置をつけるべきだったと思います。

滅多にないケースですが、iDeCo加入した直後に勤務先の確定給付企業年金の給付水準の事情でiDeCo掛金拠出できないとなったらどうしますか…?

5,000円だけ口座にあって、あとは掛金入れられず運用指図者というとなんのために毎月、手数料払うの?ってなりませんか?

この他制度掛金の仕組み、個人の方は勤務先で加入している企業型DCの掛金額が変わったりして初めて身近に感じる話です。

これは個人の方を混乱させます。よくないです。

もっと混乱させることが1つあります。
視聴者さんの大好きな税金の話です。

運用指図者の期間は退職所得控除の年数に含まれません。

私のYouTubeチャンネルの熱心な視聴者さんなら気づいたと思いますが、文量が多くなってきたのでまた別の機会に解説しようと思います。

もし解説して欲しいテーマがありましたらYouTubeコメントかXのリプライでお寄せください。