【2022年版第1回】企業年金の損しない受け取り方〜一時金か年金か。退職金・企業年金コンサルティングチャンネル講師が解説!
はじめに
退職金・企業年金コンサルティングチャンネルの講師をしております大森祥弘です。
視聴者の皆様には大変お待たせしましたが、【2022年版】企業年金の損しないもらい方を配信します!(今年度は何回かに分けての動画解説、連載ものの予定です)。
この企業年金の損しないもらい方というのは、2020年(本稿を書いている2年前)に配信、企業年金や退職金をまもなく受け取るのが見えてきた60歳近い方、早期退職を検討し始めた50代の方に大変人気の動画となっております。
(退職金・企業年金コンサルティングチャンネルの看板動画と言っても良いです)。
当時は企業年金の受け取り方について、web検索で出てくる記事、情報を見ますと企業年金は一時金で受け取るのがお得といった論調がほとんどでした。
一業界人としては税金のことだけでこの結論に至っていることに疑問を持っていましたので、一石を投じてみました。
YouTubeで業界の人が(業界のことを知っている人)が解説するというのは、業界の方には衝撃的だったと思います。 苦笑
さて、どんどん本題に入っていくとして2022年度版の内容ですが、前半は2年前に配信した動画の内容をおさらいしつつ、中盤〜後半では2022年までの法改正を取り入れ、前回の動画を見て頂いての補足解説といったものを追加していきます。ぜひ視聴頂けますと幸いです。
(YouTubeコメントもぜひお寄せください!)
YouTubeもあわせてご覧ください
【2022年版第1回】企業年金の損しない受け取り方(確定給付企業年金、確定拠出年金)
企業年金の損しないもらい方 ポイント1 企業年金にかかる税金の額だけで判断するのはお勧めしない
退職金・企業年金コンサルティングチャンネル(YouTube)やこのwebページに辿り着いた方はおそらく、企業年金の受け取り方について色々とネットを調べておられて「企業年金は一時金受け取りの方がお得!」といったネット記事を見たことがある方が多いと思います。
「企業年金は一時金で受け取った方がお得!」といったネット記事の注意点は2つあります。
1つ目の注意点は税金の視点しか考慮されていないことです。
企業年金の受け取りというのは税金の額だけでなく、ご自身が加入している企業年金の仕組みについて知り、退職後のご自身の生活設計を考慮して決まるものであって「一時金の方が課税されないから得」という論調を否定するわけではありませんが、よく考えてみてくださいねということです。
2つ目の注意点は「企業年金は一時金で受け取った方がお得!」って誰が言っているの?ということです。
ネット記事に退職金専用の銀行の定期預金プラン等の一時金で受け取った後の広告や宣伝がされていないかということです。皆さんは消費者なのですが、食べ物のように味見ができないのでそれが良い情報なのか判断しづらいと思います。このあたり、知識のありそうな人が書いていることに誘導されてしまいがちなので気をつけてください。
ネットで調べると企業年金の受け取りは一時金といったFPの先生方が大半なんですが、なぜ超少数派の私は「企業年金は一時金で受け取るのが得!」と言わないのでしょうか。“企業年金コンサルタント“という看板を掲げているので年金ありきで考えてしまっているのでしょうか?
答えは簡単で、企業年金を年金で受け取るほうが損をしないと思えるケースを見てきたからです。
少し、細かくなりますが解説していきますね。
企業年金の損しないもらい方 ポイント2 勤務先の確定給付企業年金の支給期間を確認
第1に行ってほしいのは自分が勤務している企業が導入している企業年金の種類の確認です。確認するだけでも簡単なようで簡単ではないのですが、まず、チャレンジしてみてください。
それで確定給付企業年金がある企業に勤務している方は年金の支給期間(受け取れる期間)を確認して、終身年金(生存している場合は何歳になってもずっと支給)、有期年金(生存していることを条件に絶対払う期間(確定期間)に加え、一定期間の間は年金を支給し続ける(有期年金))のどちらかに該当するか確認してください。
確定年金であれば、確定給付企業年金は一時金で受け取ることも選択肢になります。
しかし、有期年金、終身年金であれば確定給付企業年金は全額、年金で受給することを強くお勧めします。
企業年金の関連の何かを仕事にしている方でも知っている方はほとんどいないので、しっかり読んで、YouTubeを見てほしいのですが、簡単な具体例で解説します。
確定年金は退職(定年)から10年といった支給期間が決まっている年金のことです。ほとんどの方が勘違いしていますが、福利厚生で退職金に上積みでもらえるという考えは間違いで、ほとんどの企業の場合、確定年金は退職金の分割払いです。
1,000万円の退職金がもらえるとして、企業が退職金としてそのうちの50%(500万円)を支給、契約している金融機関から企業年金を50%(一時金として受給する場合は500万円)支給といった仕組みといった具合です。
有期年金は退職(定年)から10年といった支給期間が決まっている年金に加えて、年金受給者が生存していることを条件に支給し続ける年金です。
例えば確定年金が10年の場合、10年を超えた期間は上記の例で言えば、退職金の1,000万円を超えて受け取るともいえます。単純な例ですが、支給期間20年(確定年金10年、有期年金10年)の場合、年金で受給すると2,000万円以上の退職金を受給したとも言えます(有期期間は一時金で受給できないので単純に1,000万円加算というわけではありませんが)。
終身年金は有期年金の期間が“無期限”の年金になります。生存していることを条件に亡くなるまで支給され続けます。こちらも単純な例で確定年金が10年で1,000万円だとして、さらに30年生きていたら3,000万円受け取り総額は増えます。
*有期年金の年金額が確定年金と同額という前提です。細かいことを言うと、確定期間を過ぎた後の年金支給の額(有期年金)は確定年金と同額である必要はないので、確定年金と比べて減ることもありますのでちょっと大げさな例だと思ってください。
以上、確定年金、有期年金、終身年金の概要を解説してみました。
もう1度「企業年金は一時金で受け取るのが得!」か考えてみてください。
ほとんどの方がこの情報を知っていれば有期年金や終身年金を受け取れる方であれば、全額年金受給を選択しませんか?
*ここで「税金や社会保険の負担割合を考えれば、全額年金が良いとも言えない」と頭に浮かんだ方は全くその通りです。その辺りの話も2022年度版の動画のどこかでは解説しますね。
2つのシナリオで簡易試算する
ここからは次の条件でご自身の企業年金や退職金の受給額を確認してみてください。
あとはこのシナリオ1、2に退職金の額、確定拠出年金を一時金で受給した場合の金額をそれぞれ足してください(シナリオ1の全額年金の場合は単純に足せないので、別に置いておくイメージです)。
企業年金の損しない受け取り方“シナリオ“の解説
とりあえず、上記2つのシナリオでの金額を計算して退職金・企業年金の受給額の合計を出してみて頂いたところで、なぜこういった前提で計算してみてくださいと私が提言しているのか補足します。
ここまでで紹介したシナリオの1(全額年金)は次に当てはまる方であればしっかりやってみてください。
逆に言えば、上の2つに該当しない方は全額年金で試算せずとも一時金で受け取った方が良いと思えます(逆に年金は課税されやすいので、一時金で受け取った方が良いケースが多いです)。
*企業年金は一時金が得!といった情報はここだけを切り出してしまっている気がします。
次に退職金の受給額の試算について補足します。退職金は年金で支給するというケースは滅多にありません。賃金の後払いなので、労働法の観点では企業が自社年金で年金原資を社内預金できる理屈がないためです。
ですので、退職金は一時金で受給する(分割支給ではない)と考えて頂いて構いません。
それで、退職金がいくらもらえるかというのはいくつか計算方法があり、どの方式を勤務先が採用しているかで違います(専門的な言い方ですが、給与比例、ポイント制、定額制・・など色々とありますが大きく3パターンです)。
このあたり、それぞれどういったものか退職金・企業年金コンサルティングチャンネルで解説していますのであわせてご覧ください。
【退職金の額を調べる】会社辞める前に知りたい退職金の計算方法
*チャンネル開設したての頃に作成した動画で長めの動画ですいませんが、目次もつけていますので必要な部分だけ探してみてください。
最後に確定拠出年金です(企業型確定拠出年金を指します)。
確定拠出年金は確定給付企業年金と異なり、年金支給という形で分割受給することで利息が付くといったものではなく、一時金を分割受給するだけになります。
ですので、年金か一時金かという議論は退職金や確定給付企業年金の一時金と合算して退職所得控除の枠をオーバーしなければ一時金が適切なケースが多いと思えます。
ちなみに、企業型確定拠出年金で終身年金、有期年金といった受け取り方ができるかといった質問を退職金・企業年金コンサルティングチャンネルの視聴者の方から頂く事がありますが、運用していた商品次第です。
これも業界の人でもほとんど知らないのですが、勤務先が契約している企業型確定拠出年金は保険会社のものだという場合、企業型確定拠出年金の商品ラインナップのうち年金保険っぽいものがあります。これは分かりやすく言うと、確定拠出年金の掛金で生命保険会社の年金保険の掛金を払っていると思ってください(こういう確定拠出年金の掛金の使い道もあるんですよ)。
この年金保険は受け取り時に受け取り方を選択できる(確定年金、有期年金、終身年金)ので、終身年金といえば終身年金なんですが商品を選択していた期間が長くないとメリットがありません(この辺りは「企業年金の損しない受け取り方」とそれるので割愛)。
ですので、確定拠出年金の商品でも有期年金、終身年金で受け取れることはあるといえばあるのですが、10年確定年金(60歳で退職したら70歳まで10年間支給)か一時金受給かくらいに考えておくと良いです。
おわりに(第1回)
企業年金の損しない受け取り方(2022年版、第1回)として、ここまでで簡易試算のシナリオの考え方を解説しました。
それでは、みなさん自分がいくらもらえるのかなんとなくイメージできたところで次回は2022年版の補足解説、近年の法改正やこの先の未来予想を織り込みつつ、税額や社会保険料の話も触れていきたいと思います。
(2年前に配信した動画のおさらいみたいになってしまっているかもしれませんが
ご容赦ください)。
*最後に1点だけ。ご自身が企業年金や退職金をいくらもらえるのか退職前に調べて、ピタリ一致するというのは早期退職や希望退職の募集などで勤務先から明確な金額が提示されていない限り、難しいと思ってください。ですので簡易試算のレベルで構いません。ガッツリ、シミュレーションしようとするのはあまり費用対効果が薄いように思えます。それよりは取り組んでみること、税金の額だけでなく、全体を俯瞰的に見ることを試みてください。
*あと、もう1点、勤務先に確定給付企業年金がないといった方は勤務先が支給する退職金、確定拠出年金の一時金の額だけ考えて頂ければ構いません。この記事で「勤務先は確定給付企業年金を導入してないけどどうしたら良いの?」といった方もいると思いますので最後に触れさせていただきます。