Kamui - Demo***** 解説 誰も知らないワードプレイと変わらない日々
日本語ラップの解説をこれまでやったことないんですけど、やらなきゃかなと思ったのでやりますね。
Kamui氏とは去年くらいからPodcastやってたり個人的な付き合いがあるのでそんな人が解説なんか出したら手の内をバラすようで良くない気がしてます。でもやりたいんでやります。
本人も解説とか出すことに関してはすごい躊躇ってたので、もちろん黙って書いてます。でもこうして書いたことでKamuiとしての才能が、さらには日本語ラップの時代がさらに進むのでは、と勝手に期待している自分もいてこうなってるわけです。
Demo*****に関してはそれだけのパワーがある曲で、これを読んだ後に他の曲も考察しながら聞いてもらいたいなと思います。多分みんなが思ってるよりKamuiというアーティストは深く鋭く歌詞を書いていると気づけるかなと。
本当Kamui氏は人間としてはもうどうしようもない人なんですけど、それでも自分が、みんなが、彼に対して希望を持って信じているのは、それらが全て音楽に対する愛から来ているからとわかるはずです。
もし自信のある方で、先に曲聴いて俺が全部ワードプレイ暴いてやんよって方がいれば上のリンクから聴いてみてください。概要欄に歌詞あります。
背景から説明すると今年のKamuiはすべて世間の流れに沿って自身のアンサーとしてラップをしています。「Fuk Kamui」はralphとのビーフを受けて今のKamuiに対して、「late flower」はFuk Kamuiに対する世間の声を受けて過去の自分に対して、「Critical」はその言葉を受け継ぎ未来のKamuiについての内容になっています。なんとなく三部作のように完結していた作品の後に、ラップスタアの応募動画がアップロードされます。
そしてこの応募動画が落選されたことに対してのアンサーがこの「Demo*****」になるというわけです。
実際これ以降の下の歌詞を読んだとしても全然理解できる内容にはなっています。ただ本当の意味で心が熱くなるような感覚をするためには上記の曲を聴いてくることを強くオススメします。
まずはタイトルから。楽曲自体短く殴り書いたデモテープのような印象も受ける。裏テーマとしては、Democracy(民主主義)が伏せられているということ。(伏せ字の部分を数えるとピタリです)民衆の声が閉ざされて意思決定がされるということについては、彼を追っていた人ならわかるはず。
しがらみなどから連想されるロープやテープ。そうした物質的繋がりを作りつつ、縛られずインディペンデントで今走っている自分と掛け合わせている。売れるためにあれこれやるのではなく、あくまでそれはKamuiのまま。
Qちゃんはシドニーオリンピック金メダリストの高橋尚子選手のこと。ゴールテープからの連想になる。またニプシーハッスルの亡くなった年齢が当時のKamuiの年齢でもあり、そこからの「マラソン」というワードにも繋がっている。
村上隆によりデザインされた、ゆめらいおん。それよりも夢を見ているKamui。そして未来も見ているということでFutureともかけている。
Qちゃんは藤子F不二雄のおばけのQ太郎からとっている言葉であり、日本から世界に活躍した人物と現行のHipHopシーンのアーティストを意図的に並べているとも取れる。
ニプシーハッスルのマラソンについては翔さんの記事を読んでくだされ↓
Criticalの歌詞にて「金なくて遠い席で見たKanye West 目に焼き付けた」とあるが、10年以上前のKanye Westのライブが今も自分の原動力になっている。
そしてここでタイトル回収。音楽と民衆のデモ。どちらも封殺されているKamuiの現状を静かに怒りを込めてラップしている。
ラップスタアに落ちたことを減点という言葉を使って揶揄している。なぜ「両方」というワードを使ったかというと、一つはラップスタアそのものに対して、もう一つは「壇上」に対して。壇上の「だ」から減点をすると「た」になる。
ラップスタアは今年から誕生という言葉を無くしており、時代は進んでいるが番組自体は時代が逆戻りしているのではないかと提唱している。
シラフは当然注目を浴びながら落選したアーティストに対しての言葉。両者ともラップスタア後の動きで話題を獲得したアーティストではあるが、それは今からメンテナンスをして準備をしていたから。なぜメンテナンスという車を連想させるワードなのかは、この曲の一番最後の一行に答え合わせがある。
「ULTRA C(feat. ODETRASH)」というKamuiの言葉もあるが、彼が好んでよく使う言葉。もともと体操からの派生の言葉で、最高難易度Cを超える技であったことからULTRA Cは最高難易度、奥の手といった意味として用いられる。
インディペンデントのアーティストだからこそ、最も難しい道を進み、人々が思いつかない方法で駆け上がっていくKamuiの意思が伝わる。
今曲で最も練られているバースと言ってもいいライン。ここは丁寧に解説していく。
上図の作品覚えているだろうか。オークションで出品され落札が決まった直後にシュレッダーで切り刻まれたバンクシーの作品。バンクシーのように誰にも気づかれず作品を作り続け、シュレッダーに切り刻まれるような思いをしたとしても、この作品のように「膨らむ赤いハートとみんなの期待」だけは消えていないという意味。
ラップスタア応募動画にて「ドブネズミが歌うリンダリンダ」とあるが、そこからとってバンクシーのネズミと自分を掛け合わせたと思われる。(おそらく)夜中に描いたであろうバンクシーと直向きに制作している自分をかけている。
またラップスタアの応募動画を見ると後ろにバンクシーの作品「Laugh Now」の掛軸が飾れれている。
「今は笑っていろ、いつか我々が支配する時が来るから」
という内容の看板を猿が首から下げている構図です。これは政治的な支配層への批判ともとれ、Demo*****と強く紐づいた内容になっています。
『Salvage(feat. Tohji)』にて「俺シコる猿みてえ」と自分を猿に形容することもあるKamuiでもあり、3つのバンクシーの絵を用いることでやっとすべての意味が理解できる内容になっている。
今回ラップを書くということに強い思いを持っていることがわかる。後半にもラップをスタバで書くという描写もあるが、何があっても曲だけは作り続けてここまできたKamuiを強調した。
KOHHと同い年と話していたり、同世代のラッパーは売れたか辞めたかをしている現状。そうしたことに対して逆に強いプライドを持っていることを表している。
野球部や、猫ミームといった中高生を連想させる言葉。そうした頃の初期衝動が消えていないことはカニエへの言及など一貫している。
ただ一聴すると街中で歌詞を書いているKamuiが、曲を書き終わり家に帰ってきた描写に見える。ただ言いたい部分はそこではない。
太字にした部分は歴代のラップスタア優勝者シーズン1から順番に並べている。ラルフの部分では彼が客演で参加したOzWorldの「Gear 5」をShowyVICTORのラインでは「GENZAI」「REVENGE」と、楽曲への言及も行っている。
「バイブスで冷めた飯」高いバイブスは逆に温めるのではないか、と思うところだが、自分が熱くなって夢中になるほど、世間からは見放されていった気持ちを表現している。そしてそれを温めるのもまた自分自身。
最後の「いつも通り右に回すKey」は当たり前な日常をラップしている。世間に無視され続けるのも、ハードワークで年齢関わらず曲をリリースし続けることも、ワードプレイをこれだけ入れるのも、変わらないこと。
幸運とは準備とタイミングが合わさった時だと言われるが、彼は変わらずメンテをしていつでも進める準備ができている。
10月11日金曜日自分も見にいくんですけど、楽しみですね。
口軽い自分でも流石にいっちゃいけないのはわかってるんですけど、言いたい。フライヤーの右下の真っ黒は何を意味しているのか、言いたい。
行った人は多分すごい絵が撮れるんじゃないかな。
もしこの記事がちょっとでも回ったら他の曲も解説やりましょうかね。。。拡散してくれたら嬉しいです。(Kamui氏に消せと言われる可能性も50%くらいありますが笑)
written by yoshi