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プロダクトマネージャーとして「普通の施策」を打つことを大切にしている話

TVer アドベントカレンダー 2024 21 日目の記事です。
20 日目の記事は「iOSDC Japan 2024登壇してきました&その後!」 でした。

2024年9月からTVerに入社した、プロダクトマネジメントタスクの松本です
 前職では、決済系サービスの与信に関わるプロダクトマネジメントや経営企画の業務を経験してきました。
今回は転職をきっかけに、これまで自分が取り組んできた施策の中で、うまくいった施策・そうでなかった施策を振り返った話をできればと思います。


「普通度」の高い仮説と打ち手が大事

過去の施策を振り返って気づいたのは「複雑な仮説や打ち手はたいてい失敗していた」ということです。

例えば「A&B&Cの場合にXXが起きるから...」のような複雑な条件やテクニカルな打ち手の施策が失敗するケースが多く見られました。
体感的には、施策企画時に3つ以上の条件分岐や、同じ課題感で他社とは異なる打ち手を考えた瞬間に「この施策は大丈夫か?」と心のアラートを鳴らしたほうが良いと思います。

一方で「シンプルな仮説」「シンプルな打ち手」ほどよりKPIにインパクトを与えていたことが多かったと思います。
特に、施策の仮説を他者に説明した際に「それ当たり前じゃない?」「普通すぎる」と言われるくらい、成功の可能性が高いと感じています。

普通の施策であることのメリットはたくさん

1,対象範囲を広く設定できる、できているケースが多い

複雑な条件を前提とした施策では、仮説の当たり外れ以前に、対象母数が小さくなりがちです。
対象範囲が広い施策ほどインパクトを大きくすることが可能です。
20人が利用している機能のCVを1.5倍(30人)にするより、1000人が利用している機能のCVRを1%向上させる方が、前者は仮説が外れていた場合ほぼ効果が0になるのに対し、後者は多少外していても一定影響を出すことが可能になります。

2,効果測定が楽

シンプルな仮説は具体的なKPIや評価基準を設定しやすく、施策の効果を迅速かつ正確に測定できます。
たとえば「ボタンの色を変更することでクリック率が改善する」といったシンプルな仮説であれば、A/Bテストを実施し、明確なデータで結果を比較できます。
一方で、複雑な仮説では、複数の条件が絡み合い、どの要素が効果に寄与したかを特定するのが難しくなります。
チーム内でも施策の効果測定に関する議論で時間をかけ「もう効果測定の議論よくないか?」「結局これなんだたっけ?」を生み出すのは、前提となる仮説や打ち手がそもそも複雑すぎることが起因しているはずです。
また、効果測定が容易であることは、チーム内での共有や納得感の醸成にも役立ちます。
結果が分かりやすければ、他メンバーやステークホルダーとのコミュニケーションもスムーズになり、施策を改善するための建設的な議論がしやすくなります。

3,運用負荷や負債を生まない

複雑な仕様の施策は、今後の運用やソフトウェアにとって負債になるケースもあります。
特に成果がでないにも関わらず、謎の条件分岐だけ作って、むしろ中長期の負荷を上げてしまうだけ、というアンチパターンを、私も何度もやらかしてしまった記憶があります笑

その場合は思い切って「考えていた施策ですが、複雑で難しい上に意外と効果なさそうです!!ゴメンナサイやめます!」と言えればよかった、と反省しています。

普通の施策を普通にやり切るのが、とても大事

誰も知らない新しい洞察や相関を発見することもプロダクトマネージャーの重要な役割です。
しかし、多くのプロダクトには「言われてみれば当たり前」の事実に基づく施策を実行しきれていない余地がまだ残っています。
意外性のある施策よりも、当たり前のことを当たり前にやり切る施策の方が、結果的に効果が高い場合が多いと感じています。

余談: ホームランは常に狙いたい

今回の話とは少しズレますが、KPIを大きく伸ばす「ホームラン施策」は常に考えたいです。
残念ながら私自身ホームランのような成果を残す施策を打てることは中々ないのですが、最初に大きい枠組みや規模で考えておくと、その後の紆余曲折があったとしても、それなりの規模感や効果で施策を打つことができると思っています。
反対に小さい規模から思考を出発させてしまうと、KPIにヒットするような大きな成果を出す施策になりにくいなと感じることは多いです
私もよくN=1と言われる視点から仮説を立てることが多いので、この罠に陥ることが多いです。
ありがたいことに周りや上司にFB頂き、結果として大きな規模感で議論させていただくことも多々ありますが、自分自身で仮説を大きく捉える思考のクセは付けていきたいと思っています。

話をまとめると..

「誰もが当たり前と思う施策を、簡単な方法でやりきる」
という指針になります。
まさに「当たり前」と思える内容ですが、実際に徹底するのは決して簡単ではありません。
私自身も日々、自分の思考やアウトプットを振り返りながら、この「当たり前」をきちんと実行できるように努めていきたいと思います。


明日は プロダクトマネージャーのマネージャーとして大変お世話になっている、松岡さんの月間4億再生のTVerの進化:開発組織内製化に向けてプロダクトマネージャーがチャレンジしたこと  です! お楽しみに!


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