デザイナーが強く生き残る道
こんにちは、トライブグループという会社でCDOをやっている原田です。
「つよつよなデザイナー」とはよく聞きますが、実力のある強いデザイナーになるには、万人に共通した取るべき戦略があると考えています。
デザイン市場の変化を受けて
Cocoda!やchot.designまたはReDesignerといったサービスが誕生し、初学者デザイナーの学習環境や人材市場は明らかに成熟しました。結果、未経験からでもデザイナーになりやすい環境が整ってきたように思えます。
しかし、デビューは出来るようになったものの、まだまだ現場での振る舞い方に苦労している人が多い印象です。一人目デザイナーとして働いていたり、未経験からフリーランスになったり、大企業からスタートアップに転職したり。市場が開いた分、働き方が多様化したためです。
また言うまでもなく、デザイン市場も新型コロナの影響を受けています。デザイン経営が叫ばれて久しい昨今、デザインへの投資額は明らかに増えました。しかし、今回のような状況下で企業は筋肉質な経営を行うためコスト削減をしなくてはならず、広告費や人件費といったデザインに関わる予算ももちろん例外ではありません。
このタイミングで、採用が難しいとされているデザイン市場の売り手と買い手が逆転することは十分に考えられます。しかし、二極化は世の常で、実力ある強いデザイナーは引く手数多であることは変わりないでしょう。
強く生き残るための戦略
4月を迎えて新しい環境でデザイナーになった方も多くいらっしゃると思います。今回は、以上のようなデザイン市場の変化を受けて、どうしたらより強く、どんな環境でも必要とされるデザイナーになれるのか。
そのための現場で取るべき戦略、主に働く上で頭に入れておきたいマインドセットを書きたいと思います。具体的なスキルアップ方法ではないので悪しからず。
私自身、スタートアップを二社とまだキャリアは浅いですが、デザイナー歴6年の中でその時の変化に応じてキャリアを作ってきました。スタートアップであるが故、比較的力強く生き残ってきた方だと思っています。今回の状況を受け、一人でも多くの人に少しでも内容が刺されば嬉しいです。
(主にサービス作りに関わっているデザイナー向けの内容です。)
生き残り戦略1: 自分のスコープで"デザイン責任者"としての意識を持て
自分が担当しているデザイン領域の最終意思決定者は自分である、という意識を強く持ちましょう。新しく作るUI、最終的なアウトプットのクオリティ、チームに導入するツールなど、デザインに関わる全ての決定です。
デザインマネージャーや一人目デザイナーであれば、会社の見られ方やサービスのクオリティは全てあなたによって決められます。サービス開発においても、あなたがデザインに一番詳しいことを前提に進められているのです。
事業部内のデザイナーであれば、そのデザインにしたる確固たる理由や、それを世に出す覚悟を持ってデザイン出来ていますか?
チーム内でのレビューはもちろん通すべきですが、最後は自分で「このデザインで行くんだ」という決断経験をすることなくして、デザイナーとしての成長はありません。
どんなデザインがユーザーに刺さり、事業を大きくすることに貢献しているのか。これは覚悟のあるデザインをしたものへのフィードバックがあって心に刻まれるものです。全員がデザイン責任者としての意識を持ちましょう。
生き残り戦略2: 社外(社内)に頼れるメンターを持て
各所でデザイン責任者としての意識を持つことは前提として、それでもわからないことはわからないものです。そこで、持つべきものは師です。
「他にもっと正解があるのかもしれない」「もっと良くなると思うが、これ以上どうしていいかわからない」デザインをしていて思うあるあるだと思います。やむを得ず、自分で自分の限界値を規定してしまっているのです。
そこで必要なのが、自分の限界値を引き上げてくれるメンターです。サービス作りの進め方、UIやグラフィックのアウトプットを見てくれる師匠を見つけましょう。既に上長がそうであったり、社内にいれば相当ラッキーです。
いなければ、社外で全力で探しましょう。私も二社の創業期には株主を経由しよく相談にのってもらっていました。
肌感、こういった師匠がいるかどうかで、悩みのレベルが変わっているようです。自分のキャリアの悩みが大半を占めるか、関わっているサービスにの悩みが大半を占めているか、このくらい大きな差があるように思えます。
(もし近くにいなければ、是非私に相談してください)
生き残り戦略3: デザイナーとしての職能を全うして、信用を獲得せよ
デザイナーの職能の大きな一つは、ビジネスと開発の間に立ちプロダクトを前に進めることです。特にサービスの立ち上げ時や、大きな機能の改善を前にした時、密接なコミュニケーションが必須となります。
ここで言いたいのは、出来るだけ働く場所と働く時間を合わせよ、ということです。一人だけ違う場所でリモートで仕事する、とかは相当リモートスキルが高くないと難しいです。サービスの微妙なニュアンスを議論するには、対面でのコミュニケーションの方が圧倒的に進みが良いからです。
チームの人の働き方に極力合わせ、サービス作りの間に立てるような働き方をする、これがチームからの信用を得られる第一歩です。
また、間に立ってサービス作りをしていくには、ビジネスと開発の知見が必須になってきます。関わっている事業のビジネスモデルやマーケの戦略は頭に叩き込み、サービスに使われている技術は自分で実装できるレベルまでに引き上げられれば理想です。
デザイナーとしての領域を自ら超え、越境することで、事業目線と開発目線を持ってコミュニケーションができるようになります。その結果、チーム全員からの信用が厚くなり、仕事がし易くなるでしょう。
ちなみに、デザイナー市場全体はまだまだ成熟していないので、スキルの掛け合わせがあるだけで市場価値の高いデザイナーになれる余地があります。
生き残り戦略4: 事業の言葉、経営の言葉で語れ
私はデザイナーしかわからないそれっぽい言葉で議論をしてくる人が苦手です。覚えたての〇〇理論やUXの〇〇など、話したくなる気持ちはよくわかりますが、それでマウントを取ることはやめましょう。
デザイナーという役職である前に、事業の作り手であることを忘れないように。なので繰り返しになりますが、事業や経営の言葉を理解し、その共通言語を持ってコミュニケーションを取れるようになる努力が必要です。
関わっている事業が目指しているゴールはどこか、中長期の戦略は何か、コスト構造はどうなっているか、月次・年次成長率はどのくらいを目指しているか、直近の優先度の高いイシューは何か、等。
一方で、デザイン側から事業側にデザインの価値を伝えることも重要です。事業側のロジックがわかってくると、その分だけデザインの価値が伝えやすくなります。
つまり「これはデザインが得意とするところだからここに投資すべき」と、工数を確保しやすくなるのです。(デザイン経営の最小単位はこれです。)
経営者、事業責任者、PdMと並走できるデザイナーになりましょう。
生き残り戦略5: デザインの力を証明して、結果を出せ
冒頭にも記述した通り、世の中的にデザインはビジュアルだけでなく、どうやら事業や経営にも良いらしいという認識に少しずつなってきています。
しかしまだ、デザインへの投資、デザイナーの採用に対して半信半疑な企業はたくさんあると思います。なので、まずはデザインで結果を出すことにコミットして、デザインの力を証明しましょう。
例えば、LPの改善でCVRをあげる、効果の高いクリエイティブでCACを下げる等のKPIへのコミット。例えば、プロトタイプでより良いユーザー体験を生み出すための議論の場を積極的に作る。
例えば、法務的に複雑な要件をユーザーが簡単にわかるようなビジュアルに仕上げる。例えば、中長期的な採用計画に効くようなコーポレートブランディングに取り組む。
こういった小さな局地戦で一つずつ結果を出し、「デザインってなんか凄い」という事例を多く作っていくことが大事です。これを機に、デザインが事業や経営に対して明日から何ができるかを考えてみて下さい。
生き残り戦略6: 自分の仕事をクビにして、仕事の抽象度をあげよ
数年担当箇所のデザインをこなしていくと、ある種思考停止状態でもアウトプットを出せるようになる時がきます。無意識に量をこなしていたものが、量質転化し、思考がフレームワーク化し、型化できるようになります。
その時点で、その仕事はもうあなたがするものでは無くなります。その仕事はマニュアルを作り、誰かに引き継いで (いないのあれば採用して)、より難しい難題に取り組みましょう。どんどん自分の仕事をクビにして、自分が持つべき仕事の抽象度をあげるのです。
常に時間当たりの生産性を意識しましょう。今取り組んでいる仕事は、本当に自分にしか取り組めないものなのか。その難しい課題にチャレンジできるのは、社内であなただけかもしれません。
開発全体の優先度を調整する、サービスの仕様設計をする、デザインチームのバリューを作る、人を採用して育成するなど。デザインツールを使ってUIを作ること以外にもデザインの仕事はたくさんあります。
これはいわば、次のデザイナーがいつでもJOINしてきても大丈夫なような環境作りを早いうちに進めておけ、ということでもあります。チームに一人しかデザイナーがいない場所でこそ、意識して取り組むべきです。
まとめ
私が考えるデザイナーが強く生き残るための戦略をまとめてみました。
これまでの私のバックグラウンドがスタートアップがメインである故に、多少の偏りはあるかもしれません。何か一つでも明日から変えられるきっかけになれば嬉しいです。withコロナ時代を強く生き残りましょう。
「こっちの方が大事やろ!」というツッコミもお待ちしております。
デザイナーが強く生き残るための6つの戦略
1. 自分のスコープで"デザイン責任者"としての意識を持て
2. 社外(社内)に頼れるメンターを持て
3. デザイナーとしての職能を全うして、信用を獲得せよ
4. 事業の言葉、経営の言葉で語れ
5. デザインの力を証明して、結果を出せ
6. 自分の仕事をクビにして、仕事の抽象度をあげよ
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