繧繝縁
夕方、東博「大覚寺」展へ。3回目。私のお目当ては、「嵯峨天皇像」と、「後宇田天皇像」と、再現された「正寝殿 御冠の間」のそれぞれの繧繝縁(うんげんべり)を見るため。じつは私は「繧繝縁」推し、あるいは「繧繝縁」フリーク。
「繧繝縁」とは畳の縁(へり)の中でも最も格式高く、天皇、三宮、上皇が使う畳に用いられた縁で、朱、青、緑、紫等の鮮やかな色に菱形や花菱等でかたどられた伝統的な文様があしらわれているもの。
これが、親王、摂関家、大臣などになると白や黒の色で雲や菊があしらわれる高麗縁となり、四位五位となると紫縁、六位以下は黄縁となる。
お雛様には繧繝縁が使われていることが多い。
かるた学の権威の江橋崇先生はそのご著書『百人一首』に崇徳院や祐子内親王家紀伊などの図像に描かれた繧繝縁の変遷や違いが書かれていて興味が尽きない。
しかし、いずれにせよ、繧繝縁は天皇などが用いる寝殿で用いる上畳に使われる縁であり、茶室の床間に用いられたりするが、それはもともと天皇家のみが使うものである。
それなのに、それなのに、後年になると時の権利者、家康などが繧繝縁の上畳に座っている像が散見する。
そういうのを見る都度に、「不届きものー!」と私は心の中で叫ぶ。
海外の美術館に行くと、日本の茶室風のが作られていてお手前をする釜の前に繧繝縁風の畳が置かれていたりする。これ、二重に間違い!!!
侘び寂びを大事にする茶道なのに、鮮やかな繧繝縁の上畳。まあ、今はネットで簡単に買えるから無理もないのだが。
それに比べて、「大覚寺」展に展示された、後宇田天皇像に描かれた繧繝縁のすばらしさ。14世紀のものなので、だいぶ褪色はしているが、後宇田天皇の高貴なお顔と合わさってなんとも優美。
古い天皇像などに描かれた繧繝縁の前で、よだれが出そうになってうっとり見ているのがいたらそれはきっと私です。