何度でも #21
夕暮れの空は赤く染まり、日が沈むまであと少し。私はため息をつきながら、海辺のベンチに座っていた。彼の隣で、またしても失敗したアタックの話をしている。何度目になるか数えるのも面倒になってきた。
「結局、またダメだった…彼に何回言っても、うまくいかない。」
視線を落としながら、私は苦笑いを浮かべた。彼はいつものように優しい表情で私の話を聞いている。そんな彼の態度が、今は少しだけ胸に刺さる。だって、彼はいつもそばにいてくれるのに、私が夢中になっているのは別の男性だから。
「みゆき、そうか。でも…納得できるまでやるんだろ?」
彼の言葉が、まるで背中を押すように響いた。
「うん…でも、何度も振られるとさすがに心が折れそうになるよ。」
笑いながらそう言ったけれど、その裏には正直な気持ちがあった。いくら好きでも、何度も振られると自分を疑ってしまう。恋愛に向かう情熱が冷めてしまうのではないかと、不安にもなる。
「でもさ、みゆきは、納得するまでとことんやるタイプだろ?」
彼の言葉には、少しだけ強さが混じっていた。彼は私の性格をよくわかっている。何事も中途半端に終わらせることはできない。ビジネスでも、恋愛でも、結果が出るまで突き進むのが私のやり方だ。それを彼は、ずっと見守ってくれている。
「そうだね…納得できるまでやるしかないか。」
もう一度ため息をつきながら、私はそう呟いた。彼の言葉には不思議な力があった。彼のそばにいると、何度も失敗しても、もう一度頑張ろうと思えてくる。その度に、私は彼に頼りすぎていることに気づくけれど、どうしようもなかった。
「それにしても、なんでこんなに上手くいかないんだろうね?」
私はふと、彼に質問を投げかけた。いつも的確なアドバイスをくれる彼なら、何か答えがあるかもしれないと思ったからだ。だけど、彼は少しだけ視線を外し、微笑みながら言った。
「上手くいかないときも、焦らないで。そのうち、結果は出るから。」
その言葉の裏に、何か別の意味があるような気がした。でも、それが何なのかはわからない。ただ一つわかるのは、彼が私のことを誰よりも理解してくれているということだ。
「ありがとう、いつも相談に乗ってくれて。あなたのおかげで、また頑張れるよ。」
私はそう言って、笑顔を向けた。彼はいつものように「大丈夫さ」と答えたけれど、その表情の奥に何かが隠れているような気がした。
彼はずっと私を支えてくれている。恋愛に失敗しても、彼は必ずそばにいてくれる。だけど、その彼の本当の気持ちには、私はまだ気づけないでいる。彼がどうしてそんなに優しいのか、その理由を考えることさえ避けてきた。
「納得するまで、とことんやるんだよ、みゆき。お前はそういうやつだろ?」
その言葉が、何度も頭の中で繰り返される。彼の声が、心の奥まで響いてくる。だけど、彼の本当の気持ちは、私の手の届かないところにあるように思えてならなかった。
私はまた、一歩を踏み出すために立ち上がった。彼がそばにいてくれる限り、私は何度でも挑戦できる気がする。でも、その「納得」が私だけのものではなく、彼との関係にも向けられる日が来るのかもしれない。