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アイロニーの刻印(第2話)

女性からのメールの内容です。
『お元気ですか?お久しぶりです。私は何となく忙しく過ごしています。貴方は、私のことは、もう忘れてしまっているでしょう(笑)私も忘れていました(笑)でも、秋になり、呆然と貴方のことを思いだしていました。そして、今、私が貴方に感じていることを正直にお伝えします。傷ついていた私の心を開放してくれたのは、貴方の優しい微笑み。そして、他愛の無いお喋りでした。今、それは、私の生活において、計り知れない原動力となっております。寒い季節がやって来ます。お身体に気をつけて。』
僕の気持ちは、高揚したが、ちょっと物足りない感じがして、しかし、彼女らしい言葉だなぁと想いながら、しばらく女性のメールを見つめていました。
しかし、僕は、何と返信したら良いのだろう。。10分くらい考えた挙げ句、いろいろこの僕の女性への複雑な気持ち、旅していること、本当は素直な自分の女性への複雑な気持ちを伝えたかった。しかし、実生活をつい考えてしまい『そうですか。いろいろあると想いますが、頑張って下さい。』と。。その後あと続く女性からのメールは、しばらく経っても来ることはなかった。
僕は、ずっと忘れることができなかった、平凡以下の女性から逃避してしまいました。
せっかく、巡ってきたチャンスを完全に逃してしまい、虚しい空虚感じつつ、もうこの僕の女性への追憶の愛を完全に封印しよう。そして、この気持ちを夢と追憶を与えてくれた出来事ととして刻印を押して深い心の海に沈めようと。。そして、このような不可能な愛情を持つことを二度としまいと想いました。
それは精神的な意味でも至高の愛へと突き抜けていこうとするエロチシズムの極みは、痛烈なアイロニーへと転換させることでもありました。。
『人間の生活は最初の瞬間から過ぎ去ってしまっている、というのは真理であるに違いないが、しかしまた女性への気持ちを殺してそれを生に変えるだけの生命力がなくてはならぬ。恋の夜の明けそめには、永遠の表現を求めて互いに争い合う、そしてこのような追憶のはたらきはまさしく現在への逆流なのである。』と大学時代に読んだキルゴールの言葉であります。この追憶をさらに鍛えあげ、時間の世界における単なる『繰り返し』ではなく、永遠の世界における『取り戻し』へと転化してたとき、そこには『反復の恋』の持つ『瞬間の至福な確実さ』が、僕たちに保証されるものである。しかし念を押すものではなく、この至福に到達するために人が喪失そのものを意図的にするとき、所与としての喪失を自らの意志に基づくものであるかの如く演戯して見せるとき、僕の志す生活真理に背く行為であり、自らの地位を転落させるリスクが生じる。まさに、恋とか愛というものを欲するには、それ相当の覚悟と勇気の必要性を要する』痛烈な女性に対するアイロニーは、それだけ危険なのである。僕は自分の立場上その様なリスクを乗り越えてまで、愛と称するものを求められない。いくら、女性を求めて精神の力でプラスにしようとしても、僕も現実を凝視する人物があるがゆえ、避けられない運命だったのです。しかしアイロニーの刻印、それは、女性への追憶の永遠の愛の刻印でした。
読者の方々に理解してほしいとは、決して言いません。
しかし、これだけは言えます。
僕は、『アイロニーの刻印』の名のもとに、本当は今でも追憶の女性のことを想い続けております。

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