【有料部分はネタバレあり】米澤穂信『Iの悲劇』
※画像は「田舎」で検索して出てきたものを使ったので作品とは当然全く関係ありません。
最近全然本を読めていなかったのですが、久しぶりに小説を読んだので思ったことをメモします。
そして、この作品に関する感想はかなりネタバレなしではお話しにくいところがあるため、感想部分は有料としてそれでも読むという意思を見せた人のみに届く形にしようかなと思いました。(ふせったーとかで書いてもいいんだろうけどね)
前半部分は話の大筋を、後半部分にネタバレを踏まえた感想を述べようと思います。
ネタバレなしの紹介
作者は言わずと知れた「古典部シリーズ」「インシテミル」「満願」の米澤穂信。2019年に単行本が発行されていたようなのですが、文庫化されたものを読みました。
裏表紙の説明をご覧になればわかる通り、過疎の町の限界集落「蓑石」にIターン受け入れをして集落を復活させよう!!!ということを思いついた偉い人や一癖ある移住者に、真面目な主人公である万願寺が振り回されて奔走する、というのが大筋です。
構成は全体で7章で構成されており、1~6章は短編としても読めるようなおさまりの良さで、真面目な公務員で仕事に奔走する主人公の万願寺と、やる気はあんまりなさそうだが人当たりが良く憎めない後輩の観山のコンビが蓑石の住民たちの間に起こるトラブルを解決(?)していく、みたいな流れで進行します。
ネタバレがないレベルでお話します。
後輩の観山がかわいい
後輩の観山は大学を出たてで「甦り課」に配属され、主人公の万願寺と共にで様々なトラブルに応対します。天真爛漫で仕事へのやる気も十分とは言えないが、たまに鋭い発言で主人公をハッとさせる系の役割も負っています。まさに相棒役。
が、明らかに「かわいい」と思ってほしそうなキャラデザだなあ、と思っていたが、やはりかわいいのでこのあたりはちゃんと狙ってできる米澤先生がすごいなあと思うところです。(わざわざ「髪型がポニーテール」とか、かなり最初の方に描写されます)
いわゆる主要キャラがたくさんいるタイプの小説ではないのであれではあるのですが、魅力的なキャラの登場時間が長いのでとてもよいことです。
田舎の解像度が高い
思うに本作を貫く大きなテーマの一つには「地方のリアル」みたいなのがあるんだろうな、とは思います。
本作で描かれている蓑石が含まれている自治体が「南はかま市」という人口六万人程度の雪国の地方都市です。蓑石はその中の無人集落になった場所で、町の中心からも離れている、という設定です。
この「人口六万人程度の雪国の地方都市」という舞台設定が絶妙で、どことは描かれていないのですが、なんとなく私は信州・北陸・南東北あたりをイメージしました。(本当になんとなくね)
そもそも南はかま市自体が4つの自治体の合併でできた町で、4つの自治体合併して人口6万って結構ギリギリですよね。私の地元も似たオーラありますが、「街中には何とか人がいないこともないが、辺境はマジびっくりするような田舎」みたいな感じです。
いわゆる「田舎」像ってトトロとかで好意的に描かれていたりしますが、それって本当の田舎像じゃないよね、みたいな話は結構世にたくさんありますが、その中でも「村」とかじゃなくて「合併でできた市」を舞台にするの、リアルでいいなあと思うんですよね。
米澤先生が取材をしたのかそのあたりに知見があるのかはわかりませんが、おおよそこういうのあるなあ、とイメージできるのでとてもよかったです。
総じて
すごくおもしろかったです。(語彙力がない)
短編一つ一つがミステリとして成立していて、だれが・なぜ・それをやったのか、を考えさせられますし、一つ一つの短編に出てくるキャラクターもイメージができてこの辺りはさすが米澤穂信という感じ。
ミステリとかお仕事モノとか地方とか、そのあたりに琴線がありそうな方にはおススメできます。
トラブルの具体的な内容とか、それをどのように解決していくのか、とかはお話の本筋に入ってくるのでこのあたりとし、ネタバレありの感想(有料)の方に移りたいと思います。
(最安100円なのでわざわざ100円払って私の感想読みたい人とかいないだろうな、とは思うのですが、テスト的にやってみようと思います。)
ネタバレありの感想
ここから先は
¥ 100
基本無料で公開しております。 気に入っていただけたら「スキ」ボタンを、 すごく気に入っていただけたら「サポート」ボタンから投げ銭をいただけるとより意欲が高まります。 (スキボタンはアカウントなしでも押せます)