やり抜かせる力〜数学ジュニアオリンピックに挑戦した話
数学ジュニアオリンピックに挑戦した。僕ではなく、生徒が。やり抜いた生徒たちが当たり前のように、来年も挑戦したい!と言い出すまでの話。
やり抜かせるためにした4つの選択
アナウンスするより、スカウトする
「数学ジュニアオリンピック(JJMO)に興味のあるものは申し出ること。」と生徒にアナウンスしても、それだけではほんの数名が集まればいい方だ。本気で経験させたいなら、「数学ジュニアオリンピックに出ようと思うんだけど一緒にやらない?」と個人に対してスカウト活動をした方がいい。原宿の竹下通りでだって、「アイドルやりたい人〜?」と大衆に大声で呼び掛けるより、「ねぇねぇ君、アイドルやってみない?」と個人に声をかけた方が効果が高いだろう。自分が声をかけられた何人目かな?なんて本人は気にしないし、それよりも声をかけられた方は嬉しい。声をかける方も、フラれることをいちいち気にしてはいけない。とにかく徹底した個人攻撃で、自ら動き出せない才能を掘り起こす作業が重要だ。もちろん、誰でも良いわけじゃない。これだけで、動く人数が圧倒的に違う。特にJJMOは申し込み人数によって受検料の割引があるので、人数が集まればお得になるという点も良い。
講義をするより、ゼミ活動をする
数学が得意な生徒たちは、わりと自走ができる集団だと思う。先生がわざわざ時間を割いて頑張って講義をするよりも、彼らだけで知識をぶつけ合ってもらった方が効率が良い。ということで、9月に申し込みを済ませたらまずはゼミの結団式。いや、そもそも知った顔ぶれなんだから必要なくない?なんて思わないで。改めて顔合わせって大切で。
今日から始めるよ!
リーダーが引っ張っていくんだよ!
先生は手助け役ではないよ!
自分で動かなきゃいけないよ!
このメンバーがライバルであり仲間だよ!
お互いの才能に気付いてよ!
集まることで、こんなことが意識付けできる。ゼミ活動のリーダー役となる生徒をその場で何人か決めておいて、それからは活動するごとに彼らがTEAMSで「今日もやってるよ〜。」とアピールすれば、僕はその場にいなくても大体の様子が把握できるし、まだ参加していないゼミ生の間に「参加しなきゃ!」という焦りが生まれる効果もある。そして、呼びかけを続けるうちに、徐々に参加者が増える。先生が申し込みだけして、あとは自分たちの責任で頑張れ〜自己責任だよ〜というのは当然ダメだと思うけど、いちいち出欠の確認をしたり、早く参加するように呼びかけたりしてこちらが気を揉む必要もない。
ひとりで受検するより、みんなで受検する
予選はオンラインで行われるので、それぞれの家でも受けられる。でも、「移動しなくていいからラク」以外にメリットある?そもそも一人だと、ちゃんと受験できるかドキドキするし、難しい問題に途中で心が折れちゃいそう。だからあえて、受検当日(休日)にわざわざ登校してもらって、みんなが同じ空間に居合わせて問題に挑むという空気を作ることにした。受検自体は個人戦だけど、チーム戦の意識を加えてブーストしていく。当日のスケジュールはこうだ。
9時〜 ログインテスト、直前勉強会
12時〜 昼休み(この時間も数学の話ばかり)
13時〜 受検
16時 終了
午前中はさすがに直前ということもあって、ゼミ活動がとても盛んだった。その上で予選は3時間という長丁場だったが、この雰囲気作りが功を奏してか、集中を切らす生徒はいなかったし、終わったあとも元気にみんなで「答え合わせ祭」になっていた。これだけ脳みそフル稼働だったから、帰宅後は相当疲れたんじゃないかな。
上手く行った経験をするより、本気でやった経験をする
翌日は解答発表があった。その情報は僕が伝えるまでもなく、受検した生徒が自分たちで察知し、勝手に集まって答え合わせに盛り上がっていた。本気で臨んだからこそ、本気で一喜一憂しまくっていた。マルかバツか?自分は何問合っていたか?だけではなく、なんでこの解答になるのか?自分は何を間違えたのか?どう考えるべきだったのか?など、とにかくずっとやっていた。努力を努力として感じることなく、とにかく目の前のことをひたすら楽しんでいるだけの最強集団ができあがっていた。さかなクンや大谷翔平選手も、そんな感じなのだろう。
学校って、こういうところだよな
誰が言い出したのか、彼らはもう次回の予選スケジュールを把握していた。いや、まだ結果が出てないんだけど。早くも1年後に向けて、やる気満々だ。そんな前向きで直向きな彼らに対して、僕からなんて言ってあげられることが何もない、とても素晴らしいチームになっていた。学校は、こういう個の熱量が集まることで反応し合って、信じられないパワーが爆発するところが本当に良い。