新大久保と6年会っていない姪のこと
私は流行りに疎い。
以前、人気ライターのヨッピーさんが動画の中で「ライターは流行に敏感じゃなきゃいけない」というお話をされていたので、それから意識的に情報を追うようにはしているのだけど、どうにも疎い。
今まで、自分が流行に疎いのは、流行というものを意識していないからだと思っていた。
しかし、流行を意識するようになってからも、やっぱり疎いのだ。なんていうか、アンテナが錆びているとしか思えない。
◇
先月、「新大久保が若い女の子でいっぱいな理由を取材しませんか」とネタを振られたとき、お恥ずかしながら私は、新大久保が若い女の子でいっぱいという情報すら初耳だった。
えー、なんだろ? そういえば、チーズタッカルビって流行ってたなぁ。今もまだ流行ってるのかな?
インスタで「#新大久保」と検索すると、ハットグというものが流行っているらしい。はじめて知った。
リアルな若者の情報を求めて、14歳の姪に
「今、新大久保で流行ってるものってハットグ? 他にも何かあるかな? ハットグでおすすめのお店とかある?」
とLINEしてみる。
姪は兄の娘で、関東に住んでいる。だけど、もう6年くらい会っていない。
私が1年のうち半分は山にいたため、兄一家と帰省のタイミングが合わなくてずっと会えていないのだ。
だから中学生になってからの姪のことは知らないのだけど、LINEのアイコンを見る限り、彼女はイケてる部類のJCだと思う。なんていうか、Tiktokの広告動画に出てきそうな子。思いきりイメージだけで言ってるけど、韓国コスメが好きだと思う。
姪から返信が来る。私の睨んだとおり、彼女はすでにハットグを食べていた。しかも、今年の4月に並んで買ったという。
えっ、4月ですでに流行ってたの? 大丈夫? もうブーム終わってない?
しかし姪が言うには、ハットグブームはまだ続いているらしい。今のところ、新大久保でハットグ以上に流行っているものもないので、行列の正体はやっぱりハットグとのこと。
そして、人気のハットグ店の名前と、それ以外で人気のあるお店(タピオカミルクティーの店と韓国コスメの店)を教えてくれた。やっぱり韓国コスメが好きだったか……。
さて、取材当日。実際に新大久保に行くと、姪の言うとおり、行列の正体はハットグ屋だった。
それ以外にも行列のできている店があって、次なるブームの兆しも見えたので、それも記事にした。
姪の情報はネットで調べればすぐに出てくるものだけど、「知っている子のリアルな声」というのは、情報の手ごたえを強く感じられる。まぁ、私の感じ方の問題だけど。
持つべきものはイケてるJCの姪だなぁ。
◇
さて、しれっと姪にLINEしてみた私だけど、実は普段からLINEのやり取りをしているわけではない。
いつもは年に一度、彼女の誕生日にお祝いのメッセージを送るくらいだ。それに対する彼女の返信も当たり障りのないお礼で、やり取りはすぐに途絶える。
最後に会ったとき、姪は小3くらいで、私のことを「サキちゃん」と呼び、ため口で話し、一緒にUNOで遊んだ。
しかし、中学生になったLINE越しの彼女は、私の呼称を避けて呼び(大人に対して「サキちゃん」は失礼だし、かといって叔母さんと呼ぶのも失礼かも……みたいな逡巡を感じる)、敬語を使い、友達と新大久保で遊んでいる。
単純に「長年会っていないから」という理由なのだろうけど、精神的な距離ができてしまった。
そんな彼女が、ハットグに関することはものすごく詳しく教えてくれた。LINEのやり取りは何往復か続き、最後のほうは少しだけ、ため口が混ざっていた。
そのことをとても嬉しく思ってしまうくらいには、私は「叔母さん」なのだ。
来年の姪は受験生なので、会うことはないだろう。
再来年、彼女が高校生になったら。
そのとき流行っているお店に連れて行って欲しいなぁ。それまでには、奢れるようになってるからさ。