「あ、この人を好きになるな」と予知できること
気持ち悪いことを言うと、私は全然好きじゃない人に対して
「この人、全然好きじゃないな」「でも、そのうち好きになってしまうんだろうな」
とピンとくることがある。予知能力みたいなものだ。
◇
先日、るみ氏さんが私の記事について書いてくれた。
るみ氏さんの文章は、内省の奥深さもさることながら、言葉のチョイスがかっこいい。
恋を風邪に喩えているのだけど、
「ウイルスを詰め込んだ弾丸で不意に脳天をぶち抜かれないと、私は風邪を引くことができない」
という一文のハードボイルドさにしびれる。おすすめなので是非読んでみてほしい。
さて、るみ氏さんは、私が林伸次さんにインタビューした記事に書いたこのフレーズに共感してくれたようだ。
どんなに気をつけていても、予防対策をしていも、風邪を引いてしまうことがある。恋もそれと同じで、自分の意思でコントロールできるものではないのかもしれない。
以前から「自分の意思で恋をする人」と「風邪を引くように恋に落ちる人」がいると思っていて、自分は後者だ。だから、スッと出てきたフレーズだった。
るみ氏さんも後者だそうで、こんなことを書いている。
後者は、前者のように能動的な行動をせずとも、不意に落とし穴に引っかかったように恋愛のモードに入ってしまう人だ。文字通り、「恋に落ちる」のである。恋の引き金がいつ引かれるか、当人もその瞬間までまったくわからない。だから、予想もつかなかった人を好きになったり、不運にも当人にとって都合の良い相手ではなかったりすることもあるだろう。
わかる……!!
そうなのだ。「恋に落ちる人」の中には、どんな人を好きになるか自分でも予測不可能なタイプがいる。
何を隠そう、私がそのタイプだ。
高校生のとき、バイト先にボタンが全部スカルの形をしているシャツ(!)を着るメタルオタクの大学生がいて、「友達としてはいいけど絶対付き合いたくねぇ」と思っていたのに、友達として遊んでいるうちにコロっと好きになってしまった。
イケメンや優しい人、面白い人がたくさんいるバイト先で、なんでよりによってそいつなんだよ……!
トンチンカンな人選に自分でもギョッとする。でも、好きになってしまうのだ。
そういうことってないだろうか?
私はよくある。はじめは「ないわー」と思っていた人のことを、いつの間にか好きになっている。
だから「人は見た目が9割」とか「第一印象で全部決まる」といった言説にまったく共感できない。
いや、第一印象で決まってたらボタンがスカルのシャツ着てる男に惚れねーよ(どこに売ってるんだよ、そのシャツ)。
◇
若い頃の私は、自分でも「なぜこいつ!?」と思うような人ばかりを好きになっていた。
友達に「どこがいいの?」と聞かれても「知らないよ、私が聞きたいよ」といった感じ。そのくらい、自分の意思とは無関係に、オートマティックに恋に落ちていた。
たとえば、専門学校生のときの彼氏はやたらと「僕の世界観は……」と言う人で、「うわ、厄介」と思っていたのにハマってしまった。
彼はその後、私の言動が気に入らないと「サキちゃんは僕のお姫様なんだからそんなこと言わないでよ」と真顔で言うようになったけど、そのときにはもう惚れ込んでいるのでその発言の怖さに気づかない。
いや、気づいているけどどうにもできないのだ。
その後好きになった人はマリリン・マンソンのコスプレで新宿に現れる人だったし(もちろん諸事情あってのことでふだん着ではない)、その後いい感じになった人は失踪癖があった。
友人には「なぜ毎回ヘンな男に引っかかるんだ! 男を見る目がなさすぎる!」と突っ込まれたけど、違う。
見抜けないわけじゃない。
見抜いてるのに、好きになってしまうのだ。
◇
だけどそのうち、過去の経験から「あ、私はこの人を好きになるな」と直感でわかるようになってきた。
なかなか理解されないのだけど、その直感は「好き」とは違う。
たとえば、私は(ファンの方には申し訳ないけど)セカオワのFukaseくんがあまり好きではない。
だけど、「もしもこの人と会ったら、めちゃくちゃ好きになってしまうんだろうなぁ」と、わかる。
矛盾していると思われるかもしれない。
だけど、本当なのだ。あまり好きじゃないのに、実際に会ったら惚れることはわかっている。ほぼ予知能力みたいな感じ。
そういうことってないだろうか?
(長くなったので続きます)
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小屋ガール、最近は恋愛と人間関係と生き方・働き方の話ばかり。舞台は山小屋だけど、あまり山や登山の話は出てきません(笑)山に興味のない読者さんから好評で嬉しい。
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