山に興味のない人にこそ読んでほしい
今cakesで「小屋ガール通信」という山小屋エッセイを連載している。
この連載をするうえで担当さんと話していたのは、「山に興味がない人に向けて書きましょう」ということ。
だから、山に興味のない人が読んでも面白いと思えるように、下界(山小屋用語で街のこと)の人も共感できるような普遍的なテーマを選んでいる。
恋愛、友情、人間関係、偏見との戦い、仕事のモチベーション……そういうテーマが多い。
今回は恋愛。
もはや山小屋の描写がかなり少ないので、それはそれで反省している。
なんで山に興味のない人に向けて書いているかというと、私が伝えたいことは「山の魅力」ではないからだ。
いや、山は魅力的なんですよ。
だけど、それってもう多くの人が知ってるから、今さら私が啓蒙することじゃない。
私が伝えていきたいのはそこじゃなくて、「山小屋従業員という生き方や働き方」だ。
山小屋って、あまり知られていない業界だけに偏見を持たれることが多い。イメージだけで語られるというか。
だから「山小屋の人ってこういう感じですよー」というのを広めたい。
別に「山小屋への偏見をなくそう!」みたいな志があるわけではなく、もっと単純に、面白いから知ってほしいのだ。
そのために、小屋ガールを書いている。
◇
だから、フォロワーさんからたまに
「吉玉さんのnoteは好きだけど、山には興味がないから小屋ガールは読んでないです」
と言われるのだけど、そのたびに
「山に興味のないあなたにこそ! 読んでほしいんです!! ほぼほぼ生きづらさの話しだし、4回に1回は恋愛の話ですから!!」
という謎のレコメンドをしてしまう(山小屋エッセイなのに4回に1回恋愛ネタって逆にどうなんだ。ちゃんと仕事してないと思われないか?)
いや、ホント、山に興味のない人にこそ読んでほしいんです。
なので、「山に興味ないけどこの記事面白かったよ!」と思ってくださった方がいれば、その旨をシェアしていただけると幸いです。
◇
だから、
「今まで山にぜんぜん興味なかったんですけど、小屋ガール通信読んで山に行ってみたくなりました」
と言われると、とてもとても嬉しい。
ありがたいことに、そう言っていただけることが増えてきた。私のモチベーションは「山小屋や山に興味を持ってもらうこと」なので、これはもはや目的達成だ。
だけど、「あ、ちょっとヤバイな」と感じることもある。
それは、「初心者が知識なしで北アルプス行っちゃったらどうしよう」という心配。
小屋ガール通信は「山小屋の人」にスポットをあててきたので、登山の描写がほとんどない。山に興味のない読者が読めるように、登山の知識もあえて書いていない。
だけど、登山って基礎知識がないとけっこう危ない。
そのため、小屋ガールきっかけで北アルプスに興味を持った人が実際に登山をするとなると、自力で下調べをする必要がある。そこをすっとばして軽い気持ちで北アルプスに行かれてしまっては、かなり危険だ。
そんな人いない前提で書いてたけど、世の中広いからわからないぞ……。
そう思い、めずらしく「登山は危険」という啓発も書いてみた。
すると、小屋ガール通信にしてはめちゃくちゃ読まれて、一瞬だけcakes内で2位になったらしい。たぶん爆速で抜かされたとは思うけど、一瞬でも2位になれたことはとても嬉しい。
山岳事故のエピソードはどうしても重い話になるから、書くのも辛い。
それに、「書いても、山に興味ない人は読んでくれないかも……」と弱気になる。
だから、なるべく多くの人に読んでもらえるよう、「他人のために怒れる人は実は優しいのでは?」という切り口を用意した。
その結果、たくさんの人に読んでもらえたようで、安心した。
というわけで、小屋ガール通信の最新話は本日まで無料です。
もう、タイトルがすべてだよ……。