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論文の「はじめに(序論)」の書き方を「作者の事例」と共に紹介
卒論で意外と書くのが難しいのが「はじめに」です。
「はじめに」は、研究の背景や目的、研究方法、期待される効果、各章の概要などをわかりやすく書く必要があります。そのため、卒論全体の構想ができていないと、なかなか書くことができません。
卒論 はじめに の目的と押さえておくべきポイント
卒論の「はじめに(序論)」は、卒論全体の概要を端的に説明することが目的です。
以下の6つが「はじめに」に含まれます。
1 背景、きっかけ
2 問題提起、先行研究の批判
3 研究目的
4 研究方法と仮説
5 研究意義、期待される効果
6 論文の概要
初めには、卒論の読者が一番最初に書く部分です。そのため、はじめにがつまらないと、内容がどれほどよくてもその先を読んでもらえないかもしれません。
また、はじめにで的確に論文の意図が伝わらないと、同じ分野の人に読んでもらえないかもしれません。
背景で書くべきことと書き方
背景とは「先行研究において明らかにされてきたこと」「現在の社会において課題とされていること」など、研究を行ううえで押さえてくべきバックグラウンドを指します。
・現代社会においては、~~~が課題とされている。
・先行研究によれば〜ということが明らかにされている。
・従来の研究では、○○について~~~とされている。
【作者の場合】
背景と目的
フィリピンは労働送出国世界第 3 位の国で、総人口の 10%が海外にいる。2007年12月末で870万人のフィリピン人が海外におり、そのうち410万人が臨時雇い用者、90万人が正式書類のない、または非正規雇用の状態にあり、残りが永住者、または移民である。
海外フィリピン人は世界約193の国と地域に住み、働いている。毎日、3,000人近くの男女が出国し、出稼ぎ労働者となっている(National Statistics Office,2008,p.3)。
非正規フィリピン人海外労働者には海外労働庁(POEA)からの労働認可が下りていないため、人権が保障されず、渡航先で様々なトラブルに巻き込まれていると言われている(青木,2009)。
【中略】
フィリピン人出稼ぎ労働者が渡航前に自身が渡航先でトラブルに巻き込
まれない為に事前にどのような対策をしているのか、またどのような行動が安全な出稼ぎ労働に対して効果的なのかという事についての研究は殆ど見られない。
本研究はこうした背景のもと、マニラ首都圏にあるナボタスサント・サントニーニョ村という海外に出稼ぎに行く人が多い貧困地区を対象に、過去に出稼ぎに行った事がある人の「渡航前の行動及び労働者の個人属性」及び「コミュニティ内のネットワーク」と、実際渡航先におけるトラブルの有無の関連性を分析した上で、出稼ぎ労働者はどのような対策を講じれば、トラブルの無い海外就労を行うことが出来るのかを明らかにすることを目的としたものである。
論文の構成
ここでは本文がどのような流れで何について説明しよう。
【作者の例】
次に、本稿の流れを説明する。
第 2 章ではフィリピン人出稼ぎ労働者に関する主な研究を紹介する。フィリピンの労働力移動はどのくらいの規模なのか、そして何故多くのフィリピン人が海外に向かうのか、さらに、フィリピン人海外労働者はどのようにして職を得て、どのような環境下で働くのか、その一連の流れ、の各点についてを既往研究はどこまで明らかにしており、また明らかにしていないのか説明する。
第 3 章ではナボタス町サント・ニーニョ村出身で、過去に出稼ぎに行った事があるフィリピン人を対象としたインタビュー調査の記述から、既に出稼ぎに行った事があるフィリピン人海外労働者がどのような手段を経て海外就労を得たのかを説明する。
さらにフィリピン人海外労働者の個人属性、渡航者が所属するネットワーク、出稼ぎに関するメディアを通じた情報収集、及び渡航形態の選択渡航先が、トラブルのない出稼ぎ労働にどのように繋がっていたのかを明らかにしていく。
【中略】
まとめ
以下の6つが「はじめに(序章)」に含まれます。
1 背景、きっかけ
2 問題提起、先行研究の批判
3 研究目的
4 研究方法と仮説
5 研究意義、期待される効果
6 論文の概要
皆様のお役に立てれば幸いです!
次節では研究手法(統計ソフト、KH-coder、Pajek)を承知いたします!
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