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天才の生き方

神童か or 遅咲きか

 神童に生まれキャリアの開始が早ければ、量産の戦略がとれる。クラシック音楽の分野で例をあげれば、モーツァルトは35歳で亡くなったが(作者より早いな)、作品数は600曲を超えます。
 そのなかにはキラ星のように輝く音楽がいっぱいあります(誰がうまいこと言えと)。
 一方でもしベートーベンが35歳で死んでいたら、「運命」も「第9」もいまに残ることはなかったのです。それは大変まずい。

やなせたかしさんのアンパンマンは69歳でブーム

 やなせたかしさんのアンパンマンは69歳の時にテレビアニメの放送が開始され、大ヒットしました
 2023年に94歳で心不全で亡くなりました。
 「超遅咲き大ヒット」の1人です。

何故レナード・バーンスタインはベートーベンくらい有名じゃないのか

 レナード・バーンスタイン は、ユダヤ系アメリカ人の指揮者、作曲家であり、ピアニストとしても知られていますが、びっくりするくらいピアノが上手いのです。
 作る曲も『キャンディード序曲』とか超カッコ良いのですが、一番びっくりするのが1976年指揮・ピアノ:レナード・バーンスタインのラプソディー・イン・ブルー』です。
 何故レナード・バーンスタインはベートーベンくらい有名じゃないのか、いつも忸怩たる思いです。

指揮しながら自分もピアノを弾く

 ニューヨーク・フィルハーモニックを指揮しながら自分もピアノを弾くのです。本当にピアノが本当に上手でびっくりします。

最初に大きな業績を上げる年齢は25歳から30歳の間

 自分の専門分野で最初に大きな業績を上げる年齢は25歳から30歳の間というのが、大多数の示すところであります。
 まあ確かに米津玄師さんもキタニタツヤさんも藤井風さんもKing Gnuさんもofficial 髭男 dismさんもVaundyさんも25歳から30歳の間でブレイクしています。

夭折するか or 長生きするか

 平均の話を続けましょう。
 これもクラシックの作曲家の例だが、最初の傑作、最高傑作、最後の傑作が生まれた平均をとると、それぞれ29歳、40歳、51歳の時でした。

年齢と創造性の関係

 年齢と創造性の関係は、天才の科学における最古の研究テーマであり、かつ最も研究が進んでいる分野であります。

科学者が最後の業績を残すのは50代半ば

 科学者の場合も同様の傾向があり、最初に大きな業績をあげるのは30歳、もっとも優れた業績を残すのは40歳のころ、最後の業績を残すのは50代半ばであります。

平均寿命は作曲家の66歳に対して、科学者は70歳

 平均寿命は作曲家の66歳に対して、科学者は70歳くらいです。
 科学者のほうが、クリエイティビティという面でも生物学的な面でも、いくらか長寿といえる。ふるやさまも長寿だと良いなあ。

数学者の寿命は他の科学者たちより6年短い

 科学者のなかでも面白いのが数学者です。
 真っ先に最初の業績をあげ、最高の業績と最後の業績をあげる年齢も、化学者や物理学者と並んでトップを走ります。
 そして数学者の寿命は他の科学者たちより6年短い。

詩人のほうが小説家よりも早咲き

 ちなみに文学の場合、詩人の方が小説家よりも早咲き(アーリーブルーマー)だ。
 勿論いずれの場合も、多くの例外を含んでいます。
 日本の詩人界隈頑張ってほしいです。
 青松輝さんとか出てきましたけど、まだまだ俵万智さんと枡野浩一さんの一人相撲感があります。
 もっと盛り上がって欲しいです。

孤高の天才か or 仲間と繋がるか

 「孤独な天才」というイメージは「狂気の天才」と同じように、広く天下に流布しています。
 これは創造という営みが、基本的に個人のものだからです。
 アイデアの組み合わせや試行錯誤は、一般的に一人の頭のなかで行われます。
 チームで何かをつくりだすような場合でも、それぞれのアイデアは一人の時間に生まれることが多いです。
 このことから内向的な性格のほうが、天才には都合が良いと言えます。

個人だけだと創造は成立しない

 しかし個人だけだと創造は成立しない。
 数学なら数学の、絵画なら絵画の「領域」があり、そこにはその時代のある特定の考え方、原理、スタイル、手法などが存在します。
 科学者は他の研究者に向けて論文を書くし、小説家には読者が必要であります。

同じ領域の仲間が集まるコミュニティ=「場」が必要


 それはいわば同じ領域の仲間が集まるコミュニティ=「場」です。
 業績や作品はそこで評価されます。
 例えば詩人は「日本現代詩人会」等沢山の「〇〇会」があります。
 ライバルさえ、同じ場に集う仲間です。
 個人、領域、場は相互に作用しながら創造のサイクルを生みだし、それぞれの「時代の精神」を創り出しているのです。

【参考】ディーン・キース・サイモントン・小巻靖子(訳)(2019).『天才とは何か』.大和書房