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もっと派手にね!①

【「Miss&Mister Idol」という本を出版致しました! よろしければどうぞ!】

土曜日まではかなり忙しかった。
俺の人生は今週の土曜日にあるようなものだと思った。

天気予報は降水確率は20%だと何度も確認したし、借りるとは言ったけど結局釣り具屋に速攻行き、初心者や子供、女の子にお勧めな釣りでもある
ニジマス釣りの為に結局ファーストテーパー気味ライト系ロッドのメバリングロッド、小型のミノープラグを買ったし、折りたたみの椅子も飲み物を冷やす為に小さいクーラーボックスを買ってタオル、ウェットテッシュ、日焼け止めも準備した。
服はかなり心配だったのでユナイテッドアローズで白パンツと紺のチェックのポロシャツと帽子を買った。白パンツなんて人生で穿いた事がない。
モテそうなマネキンを見て「あれ下さい」と言った。
恥も外聞なんてない。俺はあの子にモテたい。人生それだけで良い。

『自分の釣りを3割。彼女の釣りを7割の割合で見てあげ、教えてあげ、絶対に釣らせましょう。もう自分は釣らなくてもいい位です。
ズバリ!釣りでデートの目的は、自分が釣ることではなく、彼女に釣らせて華やかな雰囲気になる事が大前提!』という文章を15回は声に出して唱えた。

彼女とのLINEも
「うわー楽しみ!」とかかなり良い感触だった。
あれから連絡の殆どがLINEになり、正直LINEで繋がっているのは彼女しかいないので緑のアイコンの通知元は彼女のスタンプとメッセージで埋まっていた。
初対面があれで本当に彼女が楽しかったか些か不安だったが、彼女の言葉を信じる事にした。

川まではバスで行くことにし、バス停前のUNIQLOで待ち合わせする事にした。

「孝宏さーん」

今日は麦藁帽子に上が白、黄色地に花柄のワンピース、下は黒のコンバースだった。可愛い。何着ても可愛い。

「お待たせしましたー」
「いや全然待ってないよ。」
「どうですか、この格好、釣りに適してますか?」
「いやあ、大丈夫。俺いつも半袖短パンだから」
「行こうか」

バスが到着し、後ろの方に丁度2人分の席が空いていた。

近い。接近している。そういや僕はあの時殆ど彼女の顔を見る事が出来なかった。

「本当、今日楽しみで。私BBQとかもやった事がないんです」
「ああ、なら良かったね。今日はニジマスを釣ろうと思っているんだけどこのシーズンは沢山釣れるし、釣った魚を調理出来る所があるし一石二鳥だね。」
「うわー本当にすごい楽しみ」

恥ずかしくて自分の横にある顔が見れない。

「魚捌けるんですか?」
「うん、捌く練習したけどいつもお店の方にお願いしちゃってるかなー」
「それ便利ですよねー」
「釣りはいつからやってるんですか?」
「いやあ、子供の頃親父に連れて行って貰ってそれっきりだったんだけどここに越してから半年かな」
「へえー今もお父さん釣りされているんですか?」
「いや、分からない。9歳の時親が離婚して母が引き取ったから」
「あ、そうなんですか...。今でもお父さんと連絡取ったりするんですか?」
「いや、しないねー」

ちょっと重たかったかな。まあいいや、離婚なんて今更僕にとっては瑣末な事だ。

「魚は...好きなの?」
「あ、はい。でも釣った事はなくて」
「まあそうだよね。俺も女性の釣り師見た事ないかも。」
「釣りのゲームはあるんですけど。64のゼルダの伝説でリンクが釣りするミニゲームがあって。釣れると振動するの」
「あ、あったあった、リンクは全般的にめちゃめちゃ難しいよね。あれ何で釣りするんだっけ?」
「ハートのかけらが貰えるんじゃないでしたっけ。あと珍しいどじょうがいる」
「ふふっよく覚えてるね」
「どうでも良い事は覚えてるんです」

空気が戻って良かった。


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