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「貧困」とは何か

【問い】「貧困」とは何か

【答え】貧困とは「教育、仕事、食料、保健医療、飲料水、住居、エネルギーなど最も基本的な物・サービスを手に入れられない状態のこと」を指す。

貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」

 貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2種類があり、

「絶対的相対」は「人間としての最低限度の生活・生存を維持するのが困難なほどの貧困状態(基準として1日2ドル未満で生活する人々)」を指す。

 対して「相対的貧困」は「国の生活水準や文化水準と比較して困窮だと判断された状態」を指す。

 その水準の目安となるのが「貧困ライン」で、日本の場合、122万円程度になる(国民生活基礎調査)。月額にすると10万円(単身世帯の場合)である。

【参考】UMDP「貧困とは」

【参考】gooddo「日本の貧困層の定義とは?所得格差の拡大が深刻」

【世界の貧困率および貧困層の数】

・貧困率 1990年:36% 2015年:10%
・貧困層の数 1990年:18億9500万人 2015年:7億3600万人

(*2011年の購買力平価に基づき、国際貧困ラインを1日1.90ドルで計算

【出所】世界銀行「世界の貧困に関するデータ」

https://www.worldbank.org/ja/news/feature/2014/01/08/open-data-poverty

世界銀行「Regional aggregation using 2011 PPP and $1.9/day poverty line」

http://iresearch.worldbank.org/PovcalNet/index.htm?1

※世界銀行は、2015年10月、国際貧困ラインを2011年の購買力平価(PPP)に基づき、1日1.90ドルと設定している。

※2015年10月以前は、1日1.25ドル

【解説】

 日本の「貧しさ」は可視化しにくい。

 日本の相対的貧困率はG7(先進7カ国)でワースト2位である。

 ひとり親世帯に限るとOECD(経済協力開発機構)加盟国35カ国中ワースト1位。

 日本の母子家庭の母親の就業率は84.5%と先進国の中で最も高いにも拘わらず、貧困率が高く、アメリカ36%、フランス12%、英国7%に対して、日本は58%と半数を超えている。

【出所】OECD「Japan Economic Snapshot」

【参考】日経ビジネス「新型コロナが追い打ち「月収10万円」貧しさの現実」

 貧困の問題は「そういう人はなぜ、生活保護を受ければ済む話ではないか」「シングルマザーの貧困は養育費をちゃんと貰えれば解決できるのでは」という、「貧しい人を救うのは国の責任」という考え方で、保護を受けない個人の責任にすり替えられがちだ。

 友人に18歳の大学生と15歳の中学生の子供がいるシングルマザーがいる。

 彼女はもうすぐ50歳になるが、育児と仕事の両立で物凄く大変そうである。

 後悔していることがある。彼女に対して「自治体に申請をして国から補助金を受けているのか」と先ほど述べた質問をしたことがある。

 彼女は勿論「(国から補助金を)受けている」、と言い、加えて「いずれ国に依存しないようにしたい」と言った。自分は「別に頼っても良いのではないか」と言った。

 まあ、難しい。補助金を頂いていることは引け目を感じることもある。

5世帯に1世帯が貧困ライン以下の日本

 例えば、経済格差が拡大し始めた1995~2001年の厚生労働省の「所得再分配調査」から所得の中央値と貧困線、貧困率を推定すると、中間層の所得水準は、1995年の284万円台から01年は262万円台に落ち込み、貧困ラインは142万から131万円と10万円低下した。

 相対的貧困率は、15.2%から17%に上昇していたことが分かった。

 そこで95年の貧困ラインを基準にして相対的貧困率を推定したところ、2001年の貧困率は20%。5世帯に1世帯が貧困ライン以下という、かなり衝撃的な状況になってしまったのだ。

男女と正規雇用と非正規雇用の差

 日本では貧困層の約9割が働いているので、ワーキングプアの割合を年齢階級と性別に見ると、

 男性のワーキングプア率は20代後半から減少し、50代になると増加に転じ70歳で急増する。一方、女性は25~29歳では低下するがそれ以外は一貫して男性より高く、70代になるとさらに差は広がっていく。

【出所】阿部彩(2018)「日本の相対的貧困率の動態:2012から2015年」科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(基礎研究(B))「貧困学のフロンティアを構築する研究」報告書)より筆者作成

 別の調査からは、この30年間で働き盛り世代の非正規化の問題も指摘されている。男性の25歳~34歳では4%から14.4%に増加している。

 このような年齢別、性別格差をもたらしているのは、第1に、正規雇用と非正規雇用の賃金格差。

 第2に、男性と女性の雇用格差による賃金格差だ。

 非正規社員男性の生涯賃金は約6,200万円、これは正社員の約4分の1である。(正社員男性=約2億3,200万円である。)

 非正規の年収では、男性229万円に対し女性はわずか150万円になってしまうのだ。

【参考】橘木俊詔・浦川邦夫 (2007). 日本の貧困と労働に関する実証分析 日本労働研究雑誌

自分が生活している分だけあれば良いではないか

 「年収90万円で東京ハッピーライフ」(著:大原扁理)という本がある。 年収90万円で、誰よりもハッピーに暮らす方法(しかも東京で)を纏めた本である。

 「相対的貧困層」とされるのは、等価可処分所得が年間122万円(名目値/「平成25年 国民生活基礎調査の概況」より)未満の世帯であるが、90万はそれ以下だ。

 本では『今まで夢や目標、人生設計の類いって、あんまり持ったことがないんです。で、持ってなくてもフツーに楽しく生きてます。』 と常にこの調子。

『自分の気持ちや環境って、常に変わっていくのに、5年前の目標にしがみついて、帳尻あわせるためによくわかんなくなってる人をちらほら見かけます。特にやる気のある真面目な人に多いような。』

個人として出来ることって、結局毎日をただシンプルに、きちんと生きていくしかない

 そうだよね。

『将来を考えたときに、個人として出来ることって、結局毎日をただシンプルに、きちんと生きていくしかないんじゃないかなあ。』

 そうだよね。コロナウイルスで計画なんて難しくなったし、都度好きな事をやれば良いのだ。

『人と違うと思ったら、それはとても健康的なことですから、隠さなくて良し! むしろ、小出しにアピールしといて、自分も周囲もそれに慣らしといたほうがいいです。』

『「あー、あの人ちょっとヘンだもんね」と言われるようになれば、何したって許されるからこっちのもんです。でもどうしても世間の目が気になって苦しいという方がいたら、別に人と違うことを無理やりしなくていいんですよ。』

【引用】大原扁理.年収90万円で東京ハッピーライフ(Kindleの位置No.1560-1563).株式会社太田出版.Kindle版.

 貧困が何だ、最低限生きていれば良いではないか。で、たまたま好きな事や人に巡り合ったら超ラッキーなのである。

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