「ヒコロヒーさんの小説がとても良い」と誰かがどこかで言っていたので
どこかで誰かが「ヒコロヒーさんの小説がとても良い」と言っていた。
どこで誰が言っていたのか思い出せないけど、その言葉は私の頭の隅に残っていて、ある日本屋でヒコロヒーさんの「黙って喋って」を見たときに、「あ、そうだ、読んでみたかったんだ」と手にとった。
読み始めてすぐ、「うわぁ」と思った。「うわぁ、おもしろい」「なんか文章、すごくうまいなぁ」と唸った。
今までにあまり読んだ経験のない、印象的な文体だった。主人公の心情ひとつひとつを丁寧に掬い取り、言葉を紡ぐ。そのために、一文が読点(、)で繋げられ、なかなか句点(。)に辿り着かなかったり。なのに、とても読みやすい。
「一文は短く区切ると分かりやすくなる」とよくいわれてるけど、それは一理あっても、すべてではないのだな、と思う。
どこかで経験したようなノスタルジーを感じるのに新鮮で、共感できるのに突き放したくなるようなもどかしさを覚える小説だった。
帯にあるとおり「短編恋愛小説集」で、二つとない各々のいろんな恋や愛に触れさせてもらった感じがする。
ちなみに、私の中で特にグッときたのは…
「あと十分だけ」「覚えてないならいいんだよ」「大野」
です!
今度は長編小説もぜひ読んでみたい。
ヒコロヒーさんって、最近TVで見ること増えたな~程度に思っていた芸人さんだったんですが、この本を読んでだいぶ印象が変わりました。「気になる人」になったというか。
あとがきも、ユーモアあふれる内容でクスッと笑えて、すごく良くて。あとがきの締め方なんかが、もう本当に好きだった。